独占!大塚家具・長男の大塚勝之専務が語った「父と姉」骨肉の争いの深層

経営権を巡る対立が激しさを増す大塚家具。会長側で長男の大塚勝之専務の独占インタビューです。一族の問題が上場企業のガバナンス問題に発展している様子が分かります。現代ビジネスに掲載された原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42406


創業者で会長の父と、社長の長女が経営権を巡って激しく対立している大塚家具。3月27日に開かれる株主総会に向けて委任状争奪戦(プロキシ―ファイト)を繰り広げている。

社長の大塚久美子氏が会社側提案として総会に出す取締役候補には会長の大塚勝久氏と長男で専務の勝之氏の名前はなく、逆に、勝久会長が筆頭株主として提案する候補者名簿には、久美子氏や他の兄弟の名前はない。大塚家が真っ二つに割れて「仁義なき戦い」に突入しているのだ。

そうした最中、会長側に付く、長男の勝之専務が単独インタビューに応じ、長期にわたる父娘対立の様子を語った。             (取材・文/磯山友幸

「 いつになったら姉は気づくのか・・・」

  ここまで騒動が大きくなった最大の理由は。

 大塚勝之氏 個人的にはここまで騒動が大きくなるような話ではないと思います。会社の経営方針の違いだけの問題ですから。(久美子社長側の)リークかどうか分かりませんが、雑誌などにいろいろ出てしまって。本来、経営方針は内向きの話で、外に向けて言うことではありません。

  そうは言っても会長が会見を開いたことで、一気に問題が表面化したように見えます。

 勝之氏 会長はいつになったら姉が気づくのかと思っていたのですが、会見を開かざるを得なくなったということです。今後会社をどうしていくのか、会社の中で社員の間に不満がたまっていましたので。

  経営方針の違いということですが、久美子社長の経営はそれほどダメなのでしょうか。

 勝之氏 ダメというよりは業績に表れてしまったので。彼女に代わった2008年以降、それまで700億円以上あった売り上げが500億円台に落ちてしまって。700億円以上あった時の会社の元気さが無くなってしまったのです。

  2008年にはリーマンショックがあって、翌年はかなりの日本企業が赤字に転落しました。

 勝之氏リーマンショックはほとんど関係ありません。ショックの前から久美子さんは顧問として戻っていて、広告宣伝に口を出していましたから。

「久美子社長の経営では結果が出なかった」
  経営方針の最大の違いは広告宣伝ということですか。

 勝之氏 はい。広告宣伝費です。久美子さんは、広告宣伝費を使わなければそのまま利益になると考えているようです。広告宣伝費を減らせば、来店客数が減って、売り上げも落ちていく。私は2008年3月いっぱいで一度取締役を退任しています。その時、戻ってきた久美子さんは、それまで1000万枚のチラシを配っていたものを、一気に5%にまで減らした。その結果、来館件数 受注も売り上げも減った。それが数年続いた結果が今の500億円なのです。

会長は繰り返し、「広告宣伝は無駄にならない、広告宣伝によってお客さんが店に足を運んでもらえれば、必ず買うものが見つかる店なのだから」と言っています。

  昨年7月に久美子社長が取締役会で突然解任されましたが、それも経営方針の違いですか。

勝之氏 3月までは非常によかったんです。消費増税前の駆け込み需要もありましたから。ところが久美子さんは4月以降何の手当てもしなかった。このままではお客が来なくなると現場は危機感を持った。その声を受けて、会長が任命責任を取るということで、社長を解任したんです。

  社長解任後、広告宣伝費を7億円積み増したことで、2014年12月期決算は、営業赤字に転落したのではないのでしょうか。

 勝之氏 それは違います。別勘定をやり繰りして広告宣伝費をねん出しただけで、積み増したのではありません。その効果で1月は受注が大きく増えました。

 問 新聞の記事で、久美子さんが2009年に社長に戻った時に、会長は引退するという約束があったと報じられています。

 勝之氏 まったく違います。交代が前提だったというのはありません。姉と弟が会長の家に来て、早く交代しろとプレッシャーかけていたのは知っています。姉からすれば、長男の私がいなくなったのだから、次は私でしょと思ったのでしょう。姉は自分で作ったコンサルティング会社がうまくいかないので、大塚家具の社長にして欲しいと両親に頼んでいたそうです。

  すると、2008年から跡継ぎ問題でもめていたということですか。

勝之氏 姉が繰り返し「代わるっていったじゃない」ともめていたのは事実です。母が不思議に思って「お父さん、そんな約束したの」と問いただすと、「そんな事言っていない」と言っていたそうです。

「ききょう企画」をめぐる対立の深層とは
  資産管理会社の「ききょう企画」を巡って会長が訴訟を起こしています。これは相続スキームですね。

 勝之氏 まったく違います。姉の発案で、会長の株の一部をききょう企画に移すことになったのですが、父が株を持ったまま死んでしまった場合、株が散逸しかねないということで、安定化対策だと言っていました。130万株をききょう企画に移し、その代わりに私募債15億円分を発行して、会長が引き受けました。

一昨年の2月に家族が集まった時、会長から、そろそろ社債を一度返してもらおうという話になったのです。4月が償還期限だったので。結局、その後、話し合いがもたれず、期限を過ぎました。

10月にききょう企画の総会があったのですが、姉と弟と妹の4人が、あの社債は継続することが口頭で承諾されていると言い出しました。そして、11月1日に大量保有報告書が出て分かったのですが、株を久美子さんが自分の方に入れちゃったんですよ。慌てて弁護士に駆け込みました。

  大塚家具の株式はすでにききょう企画に売却されていて、その原資を社債で調達しているということですね。久美子氏は別のところから資金調達するためにききょう企画の株式に担保権を設定したと説明しています。

 勝之氏 差し押さえを逃れるためだと言っていました。実は私がいったん会社を辞めたあと、2008年末に会長の自宅に行ったところ、ききょう企画の株式を兄弟姉妹平等に変えてくれと言われました。それまで私が半分持っていましたから。当時は会社を離れていたので、いいよと即答したんです。今は母が10%、兄弟姉妹5人が18%づつを持っています。その際、贈与税が発生したので、母が肩代わりしておカネを貸し、少しづつ返してもらっているはずです。

  ききょう企画の訴訟は、15億円を返金せよという訴訟ですよね。

 勝之氏 ききょう企画の財産はほとんど大塚家具の株式なので、代物弁済するか、ききょう企画を会社ごと会長に持ってもらうしかない、と言っています。

  久美子氏らが資金調達して返金することもあり得ますね。

 勝之氏 ファンドを使って借りようとしている、借り先を見つけている最中だと言っていました。

「姉は会長と私を排除したいだけ」
  おカネの問題は一族のプライベートな問題ですが、それでどちらに大塚家具の株式が帰属するかとなると、上場企業の経営権の問題がからんできます。

 勝之氏 実は1年前の株主総会でも、ききょう企画は会長選任案に棄権しています。会長の選任に棄権するようでは、安定株主ではありません。私たちは、ききょう企画の株は、違法に持っている株だと思っています。会長と私を排除するために使われている。あのスキームは、始めからそういう目的だったのではないか。今になって思えばですが。

  久美子社長は会見で、私が会社に戻るということは、会長が引退するのが前提だった、と言っています。

勝之氏 2005年に久美子さんがいったん役員を辞めたのも、会長とぶつかったからで、母が、これだけ考え方が違うんだから、どちらかが辞めないと仕方がないわねと言ったためです。

  2008年に勝之氏が会社を辞めなければ、久美子さんが社長に戻ることはなかった、と。

 勝之氏 そうでしょうね。私もいなかったので分かりませんが、久美子さんが早く代われと父に言い続けていたのは事実です。久美子さんが戻る時に父がどういう言い方したかは、母も分らないのです。

  勝之さんと久美子さんの2人が会社に残るのは難しいのですか。

 勝之氏 仕事でぶつかっているのではないですからね。姉は、会長と私を排除したいだけですから、とくに会長を排除したいだけです。経営方針は関係ないんです。ぶっちゃけて言ってしまえば。久美子さんは、取締役会の様子をビデオに取っていて、会長が怒鳴ったりするのをパワハラの証拠だとか言っています。

  こうなると、委任状争奪戦で決着を付けるしかないのでしょうか。

 勝之氏 あとは株主の皆さんに判断していただくしかありません。