新型コロナではっきり分かった「岩盤規制」の罪

新潮社フォーサイトに2月10日に掲載された拙稿です。ぜひご一読ください。オリジナルページ→

https://www.fsight.jp/articles/-/47745?st

 新型コロナウイルス感染症の蔓延で、医療体制が崩壊の危機に瀕している。世界保健機関(WHO)のまとめでは、人口1000人当たりの病床数は日本は13.1床で世界トップ。OECD経済協力開発機構)加盟国37カ国平均の4.7床を大幅に上回る。他の国は、ドイツ8.2床、中国4.2床、イタリア3.6床、英国3.3床、米国3.0床といったところだ。

 ところが、人口1000人当たりの医師数となると様子は一変する。日本は2.29人で何と世界55位、世界平均の1.8人は上回るものの、ドイツの3.68人やイタリアの3.48人、英国の2.74人、米国の2.42人に及ばない。ちなみに看護師は11.49人で世界4位、英国の8.89人を上回る。

 つまり、国ごとの統計で見ると、日本は病床があり、看護師もいるが、医師が足らない、ということになる。前述の医師数の統計は2010年とやや古く、その後、日本の医師数は年率3%ペースで増えているが、それでも2018年の厚生労働省の調べでは2.58人にとどまっている。

医学部「高額授業料」は参入障壁?

 2012年末に第2次内閣をスタートさせた安倍晋三前首相は、就任当初「アベノミクス」を掲げ、声高に規制改革を主張した。「アベノミクスの1丁目1番地は規制改革だ」とし、「岩盤規制」を自らがドリルの刃となって穴を開けると繰り返し述べた。その「岩盤規制」と名指ししたのは、「農業」「雇用制度」と並んで「医療」だった。

 医師を抜本的に増やすには大学の「医学部」を新設するのが手っ取り早い。ところが、日本医師会は医学部の新設に大反対だった。医師会幹部の大半は開業医で医院や病院経営者でもあるから、医師の数が増えれば競争が激化し、お客である患者の数が減って儲からなくなる。高齢者の自己負担を増やすことにも強く反発したが、これも「高齢者の負担が増えれば医療を安心して受けられなくなる」という多くの人が賛成する正論の背後には、高齢者の受診が減れば経営が苦しくなるという事情がある。

 既存の医学部保有大学も医学部の新設に大反対だった。新規参入が増えれば、当然、競争が激化する。猛烈に高い医学部の授業料が、価格競争で守れなくなるからだ。ちなみに高い授業料は既存の医師たちにとって好都合なのだという。医学部の授業料は普通のサラリーマン世帯では、いくら子どものためとはいえ、払うことは難しい。ところが、自分の子どもを医師にして後を継がせたい親にとって、授業料が安くなって受験希望者が激増すれば、自分の子どもが医者になれる可能性が減る。これは歯科医の話だが、奨学金を出して有能な人材を集めるべきだという議論が出た際、圧倒的に反対が多かった。これも、自分の子どもに継がせるのが難しくなるというのが本音だったという。

 2018年に東京医科大学で発覚した不正入試問題をきっかけに多くの医学部で卒業生の子女などを優遇していたことが判明したが、これも医師たちの「既得権」を守る仕組みの一端が露呈したものといえる。

 岩盤規制改革は既得権を持つ人たちの利権に穴を開けることにつながる。安倍内閣は「国家戦略特別区域(特区)」を岩盤突破の道具に使った。特区担当大臣と、特区に指定された地域の首長、そしてそこで規制緩和を求める事業者の3者が規制緩和で一致すれば、規制を所管する大臣はそれを尊重して特例を認めなければならない、という仕組みだ。この特区を使って医療分野にも風穴を開けようとしたのだ。

 特区に指定された千葉県成田市に2017年4月に新設された国際医療福祉大学医学部は、医学部新設としては約40年ぶりだった。同大学自体は1995年の開学以来、数多くの地域病院を買収して傘下に収める一方、長年にわたって医学部の新設を要望していたが認められずに来た。しかし、成田市成田国際空港を多くの外国人が利用する国際拠点という位置づけで特区化された経緯から、国際医療を担う医療人材を育てるという「特例」で医学部設置が認められたのだ。

同医学部では教員の1割に当たる約30人が外国人だ。医師会が折れたのはあくまで「特例」ということからだった。本来、特区は規制改革の実験場という位置づけであり、そこで成功した特例は全国展開されることになっているが、以降、医学部新設の話は出ていない。

「有事」対応を阻む医師会の既得権

 新型コロナ関連では、他にも様々な「規制」が対応策の前に立ちはだかった。

 典型例がオンライン診療だ。これも安倍内閣の規制改革会議で長年にわたって議論され、2018年6月には「規制改革実施計画」にその解禁が明記され、閣議決定された。直前の2018年4月からオンライン診療が保険適用されることになったが、対象になる疾患が限られていた他、毎月対面診療を行なっている場合の補助的な診療に限られ、3カ月間対面診療がなかった場合にはオンライン診療は保険適用にならないといった具合だった。医師会からすれば、オンラインだけの診療などまかりならず、ましてや初診からオンラインなどとんでもない、という話だった。

 閣議決定に加え、経済同友会が「オンラインによる診療から服薬指導までの一気通貫の実現を」と題する提言を2019年4月にまとめたことなどもあり、厚生労働省は検討に乗り出した。そんな「遅々として進んでいる」(当時規制改革推進会議議長だった大田弘子氏)状況の最中に、新型コロナの蔓延が起きた。

 規制改革推進会議は緊急事態宣言が出された4月7日に、初診から「オンライン診療・電話診療」を活用できるようにすべきという「意見」を決議、政府が同日閣議決定した「緊急経済対策」に盛り込まれた。これで臨時措置としてオンライン診療ができるようになったが、これはあくまで「緊急措置」で、恒久的な措置とすることに、厚労省や医師会の抵抗は続いた。河野太郎行革担当相と田村憲久厚労相が「初診から解禁」で合意したものの、今もまだ検討中だ。

 もっとも、地域の医師会などはオンライン診療の解禁に理解を示すようになった。新型コロナの感染が広がる中で、発熱者から来院相談があった場合、まずは電話やオンラインで診療することの有用性を感じるようになったからだ。突然、発熱者に来られれば、医師も大きなリスクを負うことになる。

 規制が邪魔しているケースはまだある。

 今、新型コロナウイルスに対するワクチンの接種が最大の課題になっているが、実際に接種することになる自治体が頭を抱えている問題がある。接種会場の準備はいいとして、実際に接種する人員を確保できるか、だ。今の日本の法令では、医師以外で予防接種の注射を打てるのは看護師に限られる。前述のように看護師の数は比較的多いので、ここは何とかできるとして、会場に必ず医師がひとり立ち会わなければならない、というのだ。そうでなくても医師が足りないという中で、簡単な処置であるワクチン接種まで医師が必要になるのだ。

 実は、こうした簡単な処置や検査でも医師・看護師だけしかできないという規制に挑んだ会社がある。2007年に創業したベンチャー企業のケアプロが「ワンコイン健診(現セルフ健康チェック)」に乗り出した際、検査希望者が自分自身で採血する簡易検査の法的位置付けは明確ではなかった。これが規制改革によって法的に問題ないということになり、看護師や医師がいなくても血糖値測定など簡単な検査を行えることになった。だが、予防接種など医療行為については規制の壁が立ちはだかっている。2015年になっても巡回検診に医師がいなかったとして問題になったことがある。

 今回、全国民にワクチン接種するという前代未聞のプロジェクトで、医師不足・看護師不足に輪を掛ける「規制」が浮き彫りになっているのだ。

 もちろん、法律を変えればいいではないか、という声もあるだろう。新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)と感染症法の改正法が国会で可決成立し、2月13日から施行されるが、厚労大臣も務めた塩崎恭久衆議院議員は不十分だと語る。「政府は一貫して『平時』モードから抜け切れず、一向に、覚悟を決めた『有事』モードに完全転換し切れていない」というのだ。

例えば、病床の利用方法について都道府県知事や厚生労働大臣が「命令」する権限は規定されておらず、あくまでお願いベースでしか対応できない。あるいは、いくつかの病院に新型コロナ患者を集約し、そのほかの病院を非コロナ患者受け入れ先にするといったことも命令できないのだ。それも既得権を握る医師会との調整を行うという「平時」モードにこだわっているからだ。もちろんその既得権が様々な規制によって守られていることは言うまでもない。

 新型コロナが終息した後の「ポスト・コロナ」時代は、人々の行動も生活スタイルも大きく変わるだろう。そうした中で、古い規制を見直し、既得権に手をつけていくことは不可欠である。

ワクチン接種、日本がここまで「出遅れ」ているのには「意外なワケ」があった…! ITシステムに大問題がある

現代ビジネスに2月11日に掲載された拙稿です。ぜひご一読ください。オリジナルページ→

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/80166

またITに大問題

新型コロナウイルス・ワクチンが多くの国民の最大の関心事になってきた。菅義偉首相は2月2日の記者会見で医療従事者への接種は2月中旬から始めるとし、高齢者に対しても4月から接種を始めると断言した。

菅内閣の支持率が急落する中で、ワクチン接種が「公約」どおり実施できなかった場合には、政権の命取りになりかねないだけに、ワクチン接種を所管する厚労省首相官邸にも大号令がかかっている。

ところが、肝心のワクチン接種を管理するためのITシステムに大問題が存在することが明らかになった。

厚労省は2020年夏からワクチンを届けるためのシステム開発に乗り出し、「ワクチン接種円滑化システム(略称「V-SYS」=ヴイシス)」の準備を進めてきた。ところが、このV-SYS、調達したワクチンを自治体の医療機関や接種会場に公平に配分するためのシステムで、いつ、誰に接種したかを記録することは想定していなかった。

接種は国から自治体への委任事務だから、接種して管理するのは自治体の仕事だ、というのが厚労省の考え方で、住民が接種したかを把握するのは、自治体が従来通り「予防接種台帳」を使って行えば良いとしていた。

つまり、ワクチン接種での国の役割は、自治体に公平に分配するところまでの「調整」だというのだ。菅首相が2月2日の会見で、ワクチン接種になぜ時間がかかっているのか、という質問に、「ワクチンの確保は、日本は早かったと思います。全量を確保することについては早かったと思います」と答えていたが、国の責任は「確保」して「配分」するところまでだ、というのが本音であることが滲み出ていた。

実は自治体任せ⁉

しかも、自治体への説明資料によると、システム上でワクチンの希望数と供給数をマッチングした後、それをメーカーから医療機関などに配送するのは、医薬品卸問屋ということになっている。驚くべきことにインフルエンザ・ワクチンなどと同じ「平時モード」の仕組みになっているのだ。

ファイザーのワクチンの場合、マイナス75度で保管する必要があり、さすがに卸問屋や医療機関も大半はディープ・フリーザーと呼ばれる冷凍装置は保有していない。それを調達して配るのは国の経産省がやる、ということになっている。

羽田空港に着いたワクチンを、冷凍装置を完備した自衛隊のトラックが全国に向けて次々に走り出すような、「有事モード」の対応を想像していた向きも多いと思うが、まったく話は違うのだ。配送も民間任せ、その先の接種は自治体任せなのである。

今、自治体は大混乱に陥っている。確かに予防接種は自治体の責任だが、せいぜい子どもへの接種管理をしてきただけで、全住民に接種するプロジェクトは前代未聞。

しかも、日本では医者以外に注射を打てるのは看護師だけで、その人員確保に追われている。接種会場に看護師を確保できたとしても、必ず医師の立ち合いが必要で、その確保に頭を抱えている。もちろん、医師会の協力が不可欠で、自治体担当者は医師会幹部と接種料金など条件詰めに追われている。

あいかわらずデータ記録はアナログ

さらに問題は、厚労省が主張している「予防接種台帳」だという。自治体ごとに持っており、多くの自治体がデジタル化を進めている。先進的な自治体でここ5年くらい前からデジタル・データを保有しているが、それ以前の紙の時代の保管期限は5年。誰が過去にどんな接種をしたか遡れる自治体は少ないという。

しかも、この予防接種台帳へのデータ記録がまたしても「アナログ」なのだ。接種したその場で、予防接種台帳に入力されるのかと思いきや、まったく異なる。接種した医師が接種したことを記入した「問診票」を月に1度取りまとめて自治体に送る。接種費用などの請求に絡むので、月末締めというわけだ。

自治体はその膨大な問診票をコンピューターに入力する業者に外注する。これまでだと、接種してから予防接種台帳に反映されるまでに2~3カ月かかった。

つまり、当初のV-SYSでは、菅内閣にとって必要な「接種件数」が日々集計できなかったのだ。さすがにこれはまずいと気づいた官邸の指示で、接種件数だけは把握できるシステムに変えたものの、誰にいつ打ったかというデータはV-SYSでは管理できない。

厚労省の中には「予防接種台帳への反映に2~3カ月かかったとして、何が問題なのか」という声もくすぶる。だが、世界で準備が進んでいる「接種証明」などを発行するのに数カ月を要しては、仮に接種証明を持っていないと国際間の移動ができなくなった場合、日本人だけが身動き取れなくなってしまう可能性もある。少なくとも数カ月待たされるのであれば、ビジネスには役立たない。

官邸も自治体も大慌て

どうやら、河野太郎行革担当相が、ワクチン担当相兼務に任命されたのは、首相官邸がこのシステムの問題に気づいたことと、V-SYSの改修に厚労省が抵抗したことがあるようだ。

河野大臣は平井卓也・デジタル改革担当相と共にデジタル庁の新設に向けた準備を担っていたが、デジタル・ガバメントの構築に向けたシステム設計などにも関与していた。河野チームは、V-SYSとは別にワクチン接種情報のシステムを大車輪で作ろうとしているが、時間との勝負になっている。

特に自治体はワクチン接種券の発行や、接種の管理などを行うシステムを独自に作っているケースが多く、その調整が最大の課題になっている。自治体の首長からは「情報が足りない」という苦情が寄せられているが、情報を出そうにも国の対応が追いついていないのだ。

実は、自治体側にもワクチン接種で失敗できない理由があるところが少なくない。今年、首長の選挙を迎えるところでは、首長が「何がなんでも、うちの市だけが接種が遅れるなんて事にするな。そうなれば、間違いなく選挙で落ちる」とハッパをかけているという。

住民が100万人を超すある自治体の担当者は「普通なら接種が終わるのに1年はかかる。これを何とか半年にしようとしているが、本当にきちんとしたタイミングでワクチンが届くのか。何としても定額給付金10万円配布の時のような混乱は招きたくない」と不安を募らせる。

ワクチン接種が遅々として進まなかった場合、批判の矛先は国の菅首相に向かうのか。それとも自治体の首長に向かうことになるのか。

 

「弱小MVNOは壊滅する」月2980円の"公定価格"が招く携帯市場の末路 これでは「大手寡占」に逆戻りだ

プレジデントオンラインに2月8日に掲載された拙稿です。ぜひご一読ください。オリジナルページ→

https://president.jp/articles/-/43043

菅政権最大の看板政策「携帯電話の値下げ」

新型コロナウイルス感染症への対応が後手後手に回って支持率が急落している菅義偉首相の最大の看板政策は「携帯電話の値下げ」といってもいいだろう。官房長官時代の2018年には「今よりも4割程度下げる余地がある」と発言、大手携帯電話会社が多額の利益を上げていることに触れて、「競争が働いていないといわざるを得ない」と断言、大きな話題になった。

首相に就任して初めて臨んだ10月の所信表明演説でもこう述べた。

「携帯電話料金の引き下げなど、これまでにお約束した改革については、できるものからすぐに着手し、結果を出して、成果を実感いただきたいと思います」

値下げを実現させ、その成果を国民に実感してもらうと大見えを切ったのだ。

総務相に任命された武田良太衆議院議員は、さっそく行動に出る。

自ら携帯電話利用者との意見交換会に出席、10月下旬には総務省が「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」をまとめて発表した。プランの柱は「分かりやすく、納得感のある料金・サービスの実現」「事業者間の公正な競争の促進」「事業者間の乗換えの円滑化」の3つだったが、要は目に見える大幅な値下げを求めたのだ。

メインブランドでの値下げを迫った武田総務相

これを受けて、大手携帯電話会社のKDDIソフトバンクは格安プランを打ち出す。

だが、それぞれ「UQモバイル」「ワイモバイル」といった自社が持つ格安ブランドでの料金プランを打ち出しただけだった。これに武田総務相が噛み付いた。12月1日の記者会見の席で、「ユーザーに料金が下がった実感が湧かないと何の意味もない」と不満をぶちまけ、「au」「ソフトバンク」といったメインのブランドで値下げに踏み切るよう迫ったのだ。

その直後の12月3日、NTTドコモが、新プラン「ahamo(アハモ)」を発表する。データ容量20GB(ギガバイト)で月額2980円(税抜き)という価格に、業界には激震が走った。

その翌日の12月4日には武田総務相が会見でこう述べる。

「実に6割強の値下げ、2018年度段階からは70%を超える値下げに踏み切ったわけであって、公正な市場に競争を導く大きなきっかけになることは、我々も期待しているところであります。サブブランドでなくメインブランドに対して、新しく大容量の低廉な料金プランを発表したものですので、これは、同業他社の皆様方も注視しているところであるので、それぞれの経営判断に基づいて、適切に運営していただきたい」

前段で、「この料金プランは、あくまでもそれぞれの法人事業者の経営判断に基づくものだと思っております」とわざわざ述べていたが、業界関係者の多くが菅首相や武田総務相の「値下げ圧力」が、新プランの背景にある「官製値下げ」を意味することは明らかだと感じていた。

20GB2980円は「公定価格」のようなもの

結局、ソフトバンクKDDIもこれに追随する。ソフトバンクは12月22日に「SoftBank on LINE」をブランドコンセプトに月額2980円のプランを発表。KDDIau)も1月13日に新料金プラン「povo(ポヴォ)」を、大手携帯電話会社で「最安値」の20GBで月額2480円(税別)と発表した。

 

だが、これには通話料金が含まれておらず、月500円で5分以内の国内通話無料サービスを追加できる仕組みだった。同じ条件で比べると3社横並びの結果になった。

ちなみに「最安値」とKDDIが発表したことについても武田総務相から「非常に紛らわしい」と文句を付けられている。いわば2980円が公定価格として政府に示されたようなものだった。携帯電話料金値下げという「成果」を何としても国民に示したい菅首相の執念だったと言ってもいいだろう。

総務省統計局の「家計調査結果」を見ると、2人以上の世帯の家計消費支出のうち「通信」の占める割合は4.6%に達し、家計にとって大きな出費であることは間違いない。しかも2011年の月平均の1万1928円から2019年の1万3591円まで8年連続で増え続けているのだ。年間にすれば16万3092円。仮に6割下げることができれば9万7855円浮く計算になる。

楽天モバイルは大手3社の「草刈り場」になる

特に新型コロナウイルスの蔓延で経済活動が凍りつき、雇い止めや失業で収入が減っている人にとっては、必需品の携帯電話の料金負担が減ることは大きい意味を持つ。人気が急落している菅首相にとっても、目に見える「結果」を出せれば支持率挽回の大きな材料になるだろう。それだけに、大手携帯会社に値下げさせることに必死になっていると見ることもできる。

だが、こうした強引な「官製値下げ」は必ずどこかにしわ寄せがいく。

おそらく最も経営体力が弱いところが打撃を受けることになるだろう。大手3社の格安料金プランが2980円の横並びになったことで、大手間のユーザーの大移動が起こる可能性は低くなった。同じ通信会社間でのプランの変更は起きても他に乗り換えるケースは多くないとみられる。新規参入したばかりの楽天モバイルも値下げに踏み切らざるを得なくなった。

楽天モバイルは昨年4月から1年間の無料キャンペーンを行って、220万人余りが利用している。その無料キャンペーンが終わって、本来ならば毎月2980円を課金されるユーザーが増えてくるはずだった。つまり、大手3社の新プランと同額になるのだ。

だが楽天モバイルはまだまだ通信設備の建設途上で、通信品質に差がある。当初、自社エリア内は月額2980円で使い放題というプランだったが、同じ金額ならば通信エリアが整ったNTTドコモのahamoにしようといった利用者が増えることが予想された。楽天モバイルの220万人は大手3社の草刈り場になってしまう。

MVNOに経営破綻や撤退が出る可能性も

1月29日に楽天モバイルが発表した新プランは、データ量が1GB未満の場合ゼロ円で、1~3GBは980円、3~20GBは1980円、20GB以上は2980円という段階制になった。それでも赤字覚悟ではないか、とされるが、利用者を取られないための苦肉の策とも言える。

さらに影響が懸念されるのが、格安スマホ会社だ。MVNOと呼ばれる業態で、大手携帯会社から電波枠を借りてサービスを提供している。昼食時や夕方など利用が立て込む時間帯になると通信が遅くなるなど品質は劣るが、価格が安いことで競争してきた。

それが料金差が一気に縮まることで、品質が圧倒的によい大手3社が有利になるとみられている。すでにMVNO日本通信のように、月20GBで1980円の新料金プランを発表するなど、値下げする動きが出始めている。MVNOは経営体力が弱いところも多く、薄利多売の競争を強いられれば、経営破綻や撤退などが広がる可能性も出てくる。

携帯大手の寡占体制に戻れば、消費者が損をする

もともと総務省の政策は、MVNOに参入を促し、競争を活発化することで、料金を下げていくことにあった。ところが、菅首相が成果を急ぐあまり、大手に強引な値引きをさせたことで、しわ寄せが弱い企業に行く結果になっている。携帯大手の寡占体制に戻ってしまえば、価格競争が起きにくくなり、長期的には消費者にしわ寄せが行くことになる。

NTTはNTTドコモを株式公開買い付け(TOB)によって完全子会社化し、グループ再編を進めている。GAFAと呼ばれる米国の巨大IT企業に対抗するのが狙いと説明しているが、「分割民営化の流れに大きく逆行する」(経済産業省OB)という声もある。

在日米国商工会議所は「市場の自由競争を阻害する」と指摘、「再編問題は両国関係とイノベーションを阻害する問題だと(米政府に)提起をした」と報じられている。NTTドコモが巨大NTTになることで、圧倒的な資本力を持ち、携帯電話市場で有利になるとの見方もある。

総務省OBの中には国がコントロールする巨大電電公社の復活を夢見る向きもある。NTT再編にいち早く賛成する意見を述べる武田総務相をみていると、総務省に圧倒的な影響力を持つ菅首相の頭の中には、総務省の権益拡大しかないのかもしれない。弱小MVNOはその生贄ということだろうか。

菅総理の記者会見、なぜか「最後の質問」だけがいつも面白くなる「ウラ事情」  そのメッセージは国民に届く…のか?

現代ビジネスに2月4日掲載された拙稿です。ぜひご一読ください。オリジナルページ→

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/79921

世界の標準装備

菅義偉首相は、2月2日の記者会見で、初めて「プロンプター」を使った。反対側からは透明に見える板に原稿を投射する装置だ。「手元の原稿ばかり読んでいる」「国民に訴えかけることができない」と散々批判を浴びたためだろう。

世界の政治家や経営者の演説では「標準装備」だし、前任の安倍晋三首相も使っていた。なぜ今まで使わなかったのかが不思議なくらいだが、やはり目線を上げて話した菅首相の印象は大きく違った。

ところがそれも、冒頭発言まで。質疑応答だから、原稿がないので、当然だろうと思われるかもしれないが、逆のことが起きた。質問を答える時に、手元の資料を見て話すことが多かったのだ。不思議だ。質問の答えを書いた紙が手元にあるのか。

内閣記者会の所属記者に聞いてみた。もしかして、質疑はすべて用意されているのか。質問者として指名される記者は始めから決まっているのか。

記者によると、質問を事前検閲したり、質問者を限ったりされているわけではない、という。だが、内閣広報官が一生懸命各社の記者を訪ね、質問事項を聞き出しているという。内閣広報官は山田真貴子さんという女性で、旧郵政省に入り総務審議官で退官後、女性初の内閣広報官として登用された人物だ。

質問はまず記者クラブの幹事社が行うのが慣例だから、冒頭2人の記者の質問は事前に把握しているということだろう。首相が手元の資料を見て答えるのは、そこに模範解答が書いてあるからに違いない。

その後も指名するのも山田氏だから、だいたい質問は想定されているのだろう。まあ、ヤラセとは言わないが、想定問答通りの質疑になっているということだ。

菅会見は最後が面白い

だからかどうかは分からないが、菅首相の会見は、最後の質問が面白い。

緊急事態宣言に7府県を追加した1月13日の記者会見では、ビデオニュース・ドットコムの神保哲生さんが質問に立った。人口当たりの病床数が世界一多い日本で、感染者数が米国の100分の1くらいなのに、それで医療がひっ迫していて、緊急事態を迎えている状況について、

 

「総理の説明が、単に医療の体制が違うんですというので果たしていいのでしょうか。つまり、体制を作っているのは政治なのではないかと。政治が法制度を変えれば、それは変えられるではないですか」と切り出した。その上で、感染症法と医療法を改正するつもりがあるのか、と聞いたのだ。

結果的に感染症法と医療法の改正案はその後、閣議決定され、通常国会に法案として提出された。それが十分な改正かどうかについてはここでは論評しないことにする。

ちなみに首相官邸のホームページには「記者会見」の動画が多数載っているが、ほとんどは、首相が官邸に出入りする際に立ち止まって1-2分話すものがほとんどだ。かつては「ぶら下がり」と言って、記者が取り囲んで無秩序に質問することが多かったが、安倍内閣から、立ち止まってほぼ一方的に話すスタイルに変わった。いわゆる質疑応答を本格的に行う本物の「記者会見」ではない。

この数分の発言も菅内閣になってからホームページに載るようになった。官邸に出入りできない人たちには情報が増えた格好だが、あたかも「記者会見」がたくさん開かれているような印象を与えている。おそらく、「菅首相は記者会見を開かない」と批判されたからだろう。

ズバリ、国民が聞きたい質問に

会見の最後の質問が面白いと言ったが、緊急事態宣言を3月7日まで延長した2月2日の会見もそうだった。

質問に立ったのはジャナーリストの高橋浩祐氏。「イギリスの軍事週刊誌ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーの東京特派員」と名乗った。ワクチンについてこう聞いた。

「総理、2月中旬から接種を開始したいとの意向を示されましたが、世界では既に60ヵ国近くがワクチン接種を開始しております。日本は何でこんなに時間がかかるのでしょうか。G7の中でワクチンの接種を開始していないのは日本だけです。

 

OECD経済協力開発機構)加盟国37か国中、ワクチンをまだ未接種なのは日本やコロンビアなど僅か5か国。そもそもワクチンは、国家安全保障や危機管理ですごく重要な、日本でやるべき生産、開発だと思うのです。なぜこんなに日本はできないのか」

「なおかつ、総理はいつも、日本は科学技術立国と名乗っていますよね。その立国を名乗るならば、なぜメード・イン・ジャパンのワクチンを生産できないのか。こういう状況で、ワクチンも駄目、あと検査も日本は人口比当たり138位です、世界で。

検査不足、ワクチン未接種、この中でオリンピックを強行していいのでしょうか。危機管理でもっとコロナに専念してというのは国民の願いではないでしょうか」

まあ、国民が聞きたいことをズバリ聞いたという質問だろう。

これに対して菅首相はこう答えた。

「ただ、このワクチンの確保は、日本は早かったと思います。全量を確保することについては早かったと思います。ただ、接種までの時間が海外に遅れていることは事実であります。それは日本の手続という問題も一つあると思います。

慎重に慎重に、いろいろな治験なりを行った上で日本が踏み切るわけでありますから、そういう意味で、遅れていることは現実であるというふうに思います。ただ、こうしてようやくこのワクチン接種の体制ができて、これから始めるようにしたいと思っていまして、始まったら世界と比較をして、日本の組織力で、多くの方に接種できるような形にしていきたい、このように思っております」

この回答の際は、目線は記者を向いているように見えた。ただ、なぜか、発言の途中で手元の資料を1回めくっていた。手元の資料がプロンプターに映る仕組みなのか。

いずれにせよ、菅首相の国民に対するメッセージ力が高まっていくことを願うばかりだ。

コロナ禍で企業は「内部留保」をどう使うのか

CFO協会のWEBマガジン「CFO FORUM」に定期的に連載している『COMPASS』に1月20日に掲載された拙稿です。オリジナルページ→

http://forum.cfo.jp/cfoforum/?p=17378/

 新型コロナウイルスの蔓延で経済活動が停滞を余儀なくされる中で、企業経営は厳しさを増している。財務省の法人企業統計調査によると、2020年4-6月期の売上高(金融・保険業を除く全産業)は前年同期比17.7%減、7-9月期はやや持ち直したものの、11.5%減った。営業利益は4-6月期が64.8%減、7-9月期は39.0%も落ち込んだ。業種や企業によってバラつきはあるものの、総じて減収減益となっている。

 コロナ禍前には、景気の減速感が出始めていたとはいえ、まさか経済活動がここまで止まり、収益が激減することになろうとは、2020年の年の初めにはまったく想像できないことだった。企業経営者にとっては「想定外の事態」と言ってもよいだろう。

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コロナ危機で現実味「増税」「ハイパーインフレ」から財産を守る「方法」

新潮社フォーサイトに1月28日に掲載された拙稿です。ぜひご一読ください。オリジナルページ→

https://www.fsight.jp/articles/-/47716

 ドイツのちょっとした旧家では「ケラー」と呼ばれる地下倉庫に、「ナポレオン金貨」などの金貨が代々保管されている。いざという時に、その金貨を持って逃げるというのだ。何度も戦場となった経験のあるドイツなど欧州の人たちは、「どうやって財産を守るか」を真剣に考える“遺伝子”を持っている。

 インフレに対する「恐怖心」も代々受け継がれている。1920年代のドイツでは、猛烈なハイパー・インフレーションに見舞われた。第1次世界大戦の敗戦で賠償金を課されたことなどから財政が破綻、金本位制から離脱してペーパーマネーを刷り続けた。1923年6月までにマネーサプライ(通貨供給量)は大戦前の2000倍に増加、物価は2万5000倍以上になった。パン1個が1兆マルクになり、乳母車いっぱいの紙幣を支払いのために運ぶ姿を古写真で見たことがあるだろう。

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意見封殺、フェイク--何でもありの農水省・内閣府連合の改革潰し 「政官業」鉄のトライアングル復活か

現代ビジネスに1月28日に掲載された拙稿です。ぜひご一読ください。オリジナルページ→

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/79687

企業の農地取得は頓挫へ

1月7日付の本欄でも取り上げた「企業の農地取得の全国展開」は、農水省内閣府による「何でもあり」の連携プレーの前に頓挫する可能性が強まった。

国家戦略特別区域(特区)に指定されている兵庫県養父市で特例として認められている「一般企業による農地取得」について、他の地域でも認める「全国展開」するかどうかが焦点になっているが、1月15日付けで出された特区諮問会議の「決定」は、自民党農林水産族の意向を受けた農林水産省の主張に沿ったものになった。今後、法改正など国会での議論に場を移すが、実現は難しい状況だ。

1月15日の特区諮問会議は異例の展開だった。新型コロナウイルスの蔓延を理由に「持ち回り」で開催されたのだ。自民党の会議など平気で「密」になって開催しているにもかかわらずだ。「全国展開」を主張する八田達夫大阪大学名誉教授ら諮問会議の民間人議員が、議論の場を設けるよう求めたが、事務局の内閣府が頑なで「持ち回り」を譲らなかったという。

おそらく年末に開いた諮問会議に懲りたからだろう。会議の場で河野太郎行政改革担当相が「全国展開」を支持し、特区担当の坂本哲志・地方創生担当相と激突した。これに菅義偉首相が自ら割って入り「預かり」とした。「持ち回り」の会議では自由にモノが言えず、結局は事務局が用意した原案通りに決定した。「決定」にはこう書かれている。

「当該事業に関する特例制度のニーズと問題点の調査を特区区域以外においても来年度中に実施し、その結果に基づき全国への適用拡大について調整し、早期に必要な法案の提出を行う」

また、養父市での特例については、「期限を2年間延長することとし、そのための規定を盛り込んだ国家戦略特区法改正案の早期の国会への提出を行う」としている。

何が何でも「養父市は失敗」に

⼋⽥教授ら民間人議員は、決定文の修正を主張したというが、これも内閣府に押し切られた、という。

年末の会議では、「当事者」である養父市の広瀬栄市長が参席を希望し、内閣府に断られている。養父市の特例は「失敗」だとする話が農水省発で流されていることを強く批判する文書を会議宛に提出したが、内閣府によって「事前検閲」され、内容が書き直された。

 

1月15日の「持ち回り」会議は、開かれることすら養父市長には伝えられず、事後に決定文を内閣府から送りつけられただけだった、という。

国家戦略特区は、それまでの構造改革特区などと違い、特区指定された自治体の首長に大きな権限を与えている。特区を利用する事業者と首長、特区担当相の3者が合意すれば、所管省庁の大臣が反対しても規制改革ができる。

もちろん、特区指定にあたっては特区諮問会議の議決を経なければならず、議長を務める首相のリーダーシップがモノを言う。要は、特区で規制緩和の実験をし、それを全国展開していくには、首相自らが既得権者と闘う覚悟を固める必要があるわけだ。菅首相は口では「改革」と言うものの、実際には既得権者とつながった政治家ではないか、という疑念が強まっている。

全国展開を阻止するためには、何としても「養父市は失敗だった」という話にしなければならない。前述の通り、養父市長は「特例の成果」を強調しており、諮問会議でも繰り返し主張している。

朝日新聞を使って「フェイクニュース」流す

では、どうやって農水省は「失敗だった」という印象操作をしようとしているのか。「禁じ手」とも言える方法を使っているようだ。

諮問会議の翌朝、1月16日付けの朝日新聞は、見事に術中にはまり「フェイクニュース」まがいの記事を掲載した。

朝日の記事には「農水省によると、養父市では特例に基づいて6社が計1.65ヘクタールの農地を取得したが、実際に農業を営んでいる面積はそのうちの7%弱にとどまる」と書かれており、企業が取得した土地は農業に使われていない、と報じた。ところが、事実はまったく違った。

早速、諮問会議の下に置かれ、八田教授が座長を務める「特区ワーキンググループ」の民間人9人の連名で、朝日新聞に抗議文を送った。

そこには、「6社の取得した1.64ヘクタールのうち、実際に農業を営んでいる面積は99.1%」だと書かれている。記事には農水省幹部の話として「特例で地域の農業が活性化したとは言えず、取得した後で農地の転売や耕作放棄をするケースもないとは言えない」というコメントまで載せている。

農家だけの農業を死守

農水省は繰り返し、企業による農地取得を認めれば、勝手に転売されかねない」と発言してきた。せいぜい認められるのは、現在でも農地を保有することができる農業法人の要件を緩和して企業的な経営ができるようにすることが精一杯だ、とも言ってきた。

だが、一般企業に農地を取得させたとしても、簡単に転売や他用途転換ができるわけではない。養父市の特例から始まりすでに全国展開された「農業委員会」の機能を首長が持つことができるようにする規制緩和は、農業者だけの都合で農地が他の用途に転用される事を防ぐ効果も持つ。農業委員会は従来、農家だけで構成されてきたが、企業に取得させても、首長の下の農業委員会ならば転売や多用途化をしようとしても難しくなる。

 

ちなみに農業生産法人は、農家が出資比率の一定額を持つことが要件になっており、資金調達して規模の拡大を図ることが難しい。この要件緩和を農水省は、規制改革会議の結論を待ったうえで、来年度に検討すると言っている。だが、しばしば言われるように霞が関の「検討する」は当てにならない。

実際には、農業委員会の要件緩和は、担い手となる若手農業者がいることが前提になる。新潟や北海道など農業者自らがベンチャー企業を起こすような基盤のある場所ならば機能するが、養父市の要は中山間地で高齢化や人口減少が進んでいる地域では難しい。

企業所有と農業生産法人の規模拡大の両方を緩和し、それぞれの地域にあった方法で農業の活性化に取り組むべきだろう。さもないと、日本の山間地農業は耕作放棄地の嵐となり、原野に戻っていくことになる。

自民党農水族の大反攻

農水省が反対するのはともかく、特区を推進するはずの内閣府までがなぜ既得権者に配慮するようになったのか。

実は背景には自民党農水族の猛反対がある。企業が農業経営に参入して競争が起きれば、改革志向の乏しい農協にとっては死活問題になる。改革に取り組む農協もあるが、細々とでも従来通りのやり方で農家が食べていければ良いと考える農協も少なくない。

そんな農協と自民党農水族議員、その意向に逆らえない内閣府という「政官業」の鉄のトライアングルが、菅内閣になって再び復活しているということだろう。

民間企業の経営ノウハウや資本力を農業に持ち込むことで、日本の農業を再生させたいと考え、成果を挙げてきた養父市の取り組みに、「失敗」だとレッテルを貼り、従来どおり何もしないならば、日本の農業、特に山間地農業は早晩滅びるだろう。

現場で農業の再生に取り組み、規制と闘う人たちが、諦めていなくなってしまったら、その時こそ、この国は滅びる。