ブータン・ブームの陰に「成長しなくていい」症候群

 昨年3月、ブータン王国を取材で訪れました。ブータンが標榜するGNH(国民総幸福)について取材するためです。帰国後、何本か原稿を書き、ネット検索でもヒットするようで、何件か講演依頼をいただき、お話するチャンスがありました。GDPではない幸せの指標というところに、多くの日本人が惹かれているのは間違いありません。しかし、ブータンのGNHも成長を否定しているのではありません。日本にはむしろ、持続的、安定的な成長がないことが問題だと思うのですが、いかがでしょうか。新潮社フォーサイトに書いた最近のブータン論です。


 昨年11月、ブータン王国ジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王と、10月に結婚したばかりのジェツン・ペマ王妃国賓として日本を訪れた。日本の着物に似た民族衣装に身を包んだ国王は皇居での歓迎式典や国会での演説のほか、慶應義塾大学での演説などを精力的にこなした。国交樹立以来25年に及ぶ日本の協力に感謝すると共に、東日本大震災で傷ついた日本を励まし、日本の復興に祈りを捧げた国王の実直で虚勢を張らない謙虚な姿勢に、多くの日本人が共感を覚え、国中で大きな話題となった。ブータンヒマラヤ山脈の南側に位置する。九州とほぼ同じ面積の国土に、東京都練馬区並みの70万人が住む。仏教国で、正式な国名は「ドゥック・ユル(雷竜の国)」で、国旗にもこの竜が描かれている。…

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