「主要国でカジノがないのは日本だけ。観光立国へカジノ解禁法案提出へ」田村謙治・衆議院議員に聞く

私はギャンブルはやりませんが、日本にカジノがあってもいいのではないか、と考えています。禁止していることで、海外のカジノに出かけて大負けする御仁が後をたちませんし、アングラ化して暴力団の資金源になっているとも聞きます。どうせならきちんと管理されたカジノを設置すべきだというのが1つの理由です。日本では観光立国の目玉という位置づけですが、私は別の意味もあるのではないかと考えています。金融業が栄えているところには必ずカジノがあるのは偶然ではないでしょう。私がかつて赴任していてスイスも大議論の末2000年代初めに解禁しました。ヒト・モノ・カネを集めるツールとしてカジノは意味があると言うことです。講談社の現代ビジネスに原稿をアップしました。編集部のご厚意で以下に再掲します。
オリジナルページには資料も掲載しています。是非ご覧下さい。→ http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32146


 子会社などから巨額の資金を借り入れて私的に流用したとして特別背任に問われている大王製紙の前会長。その借入金総額は165億円(起訴対象額は55億3000万円)に達し、マカオのカジノに100億円以上をつぎ込んだとされる。どうせなら日本国内で使ってくれれば景気浮揚にも役立ったのに、と思っていたら、ようやく日本にもカジノを作ろうという機運が盛り上がり、国会での議論が始まろうとしているのだそうだ。

 カジノによって、日本のリゾート地に外国人を誘致し、国庫納付で厳しい国の財政の一助にもしようという思惑という。根強い反対論もあるが、今後の議論や法案の行方はどうなるのか。民主党の総合型リゾート・カジノ検討ワーキングチームの座長を務める田村謙治衆議院議員に聞いた。

 ---いまなぜ、カジノなのでしょうか。

田村 世界の主要国でカジノを禁止しているのは日本ぐらいなもなんです。アジアでも観光の1つの目玉としてカジノを設置する動きが加速しています。日本は、国際的な「ハブ」を作ることに出遅れました。港湾でも空港でも、他のアジア諸国に後れをとった。ヒト・モノ・カネが集まる観光ハブを目指す意味でも、カジノのような集客力、収益力のあるものを日本も持たなければ、アジアの他の国々と競争するうえでマイナスになってしまいます。条件を同じにするという意味でも、カジノ解禁は必要だと思います。

 ---観光の拠点となる「総合型リゾート」の一環としてカジノ解禁を位置づけているようですね。

田村 私は民主党政策調査会の内閣部門会議の座長をしていますが、その中に昨年11月に「総合型リゾート・カジノ検討ワーキングチーム」を作り、座長をお引き受けしました。日本では国際会議場や展示場と併設する形でカジノを認める方向です。こうした会議場などは多額の設備投資が必要ですが、カジノの収益で短期に回収できるメリットは大きい。基本的に設置も運営も民間に任せることを考えていますので、収益性の確保は重要です。

 ---シンガポールベイエリア開発の中核施設として巨大なカジノを作りました。

田村 シンガポールはカジノによって観光客を大きく増やしました。2010年の第1四半期から第3四半期までの数字が手元にありますが、外国人観光客が前年同期比20.2%も増えていますね。マカオのほか韓国も力を入れていますし、台湾やベトナムなども前向きだと聞いています。

 ---観光客が集まることで経済的にプラスになるということですね。

田村 観光によって地域経済が活性化し、雇用も生まれます。さらに税収には間違いなくプラスだと思います。単なる事業税だけでなく、収入の何割といった形で国庫納付を課すこともできます。事業の赤字黒字は関係ありませんから、安定的な収入になります。

 ---カジノ解禁には根強い反対があるようですが。

田村 ともかく博打は良くないと、最初から反対という人たちもいます。子どもの教育上良くないといった議論ですね。しかし、これだけ全国いたるところにパチンコホールは広がっています。カジノを全国どこにでも作れるようにしようと言っている人は誰もいません。地域を限定して解禁しようとしているんです。

 ---何ヵ所ぐらいできるようにするのですか。

田村 現在、特定複合観光施設(IR)推進法案というのを準備していますが、この法律の段階では詳細は決めません。法律では公布後3ヵ月以内に内閣に「IR区域整備推進本部」というのを設置することになっていて、2年以内にこの本部で具体的な内容を詰め「IR実施法案」を国会に出します。ワーキングチームの議論の初期段階には全国に8ヵ所という意見もありましたが、これは東京、大阪、沖縄に加えて全国主要5ヵ所というイメージだったと思います。この点も含めて、推進本部が決めていきます。

 ---他に反対論はないのですか。

田村 一部にパチンコの客がカジノに食われるという主張もありましたが、ごく限られた地域ということで、パチンコ業界も反対していません。

 ---具体的な規制方法はどうするのですか。

田村 これも推進本部で決めていきます。実施法のイメージとしては「カジノ管理委員会」を国家行政組織法に基づく「3条委員会」などの形で設置し、カジノ事業者への許認可や監視・監督を行います。カジノが公に認められることになれば、闇カジノに対する抑制効果もあるのではないでしょうか。ですから、警察にも目立った反対論はないようで、原則、静観しているということでしょう。

 ---IR推進法案は今国会に提出するのですか。

田村 カジノ解禁はもともと自民党政権時代から議論があって、自民党にも政調の中に「カジノ・エンターテイメント検討小委員会」があります。また、2010年4月には超党派で「国際観光産業振興議員連盟(IR議連)」ができました。民主党は現在の前原誠司政調会長が推進派で、党内の議論はまとまると思います。自民党執行部も推進派が多く、公明党などの他の野党が強硬に反対しなければ、今国会に提出できると思います。



田村謙治(たむら・けんじ)氏
1968年生まれ。東京大学法学部卒。1991年大蔵省(現財務省)入省。1993年ミシガン大学大学院に留学。2002年財務省を退官し山村健衆議院議員政策秘書に。2003年の総選挙に出馬、落選したが、2004年11月に繰り上げ当選。2009年9月政権交代内閣府大臣政務官(金融庁など担当)に就任。2010年9月民主党総括副幹事長を経て、2011年1月から民主党政策調査会副会長。静岡県選出、当選3回。