続く国民新党への「金融」丸投げ

政権交代以降、日本の金融に関する政策は、選挙で1%余りの支持率しか得ていない小政党が握り続けています。国民新党のことです。郵政民営化への「逆行」を主張してきた国民新党と連立を組むに当たって「郵政改革担当大臣」を国民新党に渡すのは分からないわけでもありません。しかし本来、郵政担当は総務大臣。わざわぜ金融大臣を任せる必要はないのです。政権を握る民主党の責任は大きいと言わざるを得ません。
産経新聞社が発行するフジサンケイ・ビジネスアイの1面コラムに掲載した記事を再掲します。
オリジナルページ→http://www.sankeibiz.jp/macro/news/120614/mca1206140502009-n1.htm 


 内閣改造自見庄三郎・郵政改革金融担当相がようやく交代した。金融にはまったく素人の自見氏には「いい加減に交代してほしい」という声が資本市場関係者の間に満ちていた。後任の松下忠洋氏は経済産業副大臣を長く務めるなど自見氏よりは経済に通じているとされるが、金融知識については未知数だ。

 松下氏も国民新党の所属である。政権交代以降、一貫して民主党はこのポストを国民新党に委ねてきた。同党が郵政改革を握ることが連立を組む条件だとはいえ金融にからむ政策全てを「丸投げ」しているのだ。

 もともと民主党国民新党では金融をめぐる政策は正反対だった。郵政にしても官業が民業を圧迫しないように郵便貯金を圧縮する、というのが民主党の政策だった。2005年のマニフェストには郵貯の預け入れ限度額を現行の1000万円から700万円、さらには500万円に引き下げるとある。もちろん国民新党は預け入れ限度額の拡大を掲げてきた政党だ。

 昨年春に自見金融相が突然、「政治決断だ」として国際会計基準IFRSの事実上の受け入れ先送りを表明したのも、民主党の基本方針とはまったく違った。民主党政府は2010年末に「国を開く」という方針を掲げ新成長戦略を閣議決定した。それは今でも生きている。その際の金融庁の政策方針では「国際会計基準を中心とした国際的な会計基準の収れんに積極的に対応」すると書かれていた。

 政権交代した衆議院議員選挙での国民新党の得票率は比例で1.73%、小選挙区で1.04%に過ぎなかった。国民の支持を得たとは到底言えない小政党が掲げる政策が、なぜ金融関連分野で次々と実行に移されていくのか。国民新党が主導してきた改正郵政民営化法も成立した。これ以上、金融ポストを国民新党に任せ続ける必要はないはずだが、丸投げは続く。

 民主党は意図的とも思えるほどに、金融に関心を示さない。日本にはモノ作り企業があればよく、金融産業など不要だ、と言わんばかりだ。党内には外資系証券会社などに勤務した経験を持つ若手議員も多いが、彼らはほとんど政権中枢で活躍の場を与えられていない。

 5月末の日経平均株価終値は8459円だった。5年前は1万7875円だったので、半値以下である。ニューヨーク・ダウはリーマン・ショックどん底から大きく戻し、今は9割の水準だ。日本の株価は世界的に見ても「異常値」と言えるほど低水準にある。これは資本市場に対する政策が無策だからに他ならない。金融を無視した結果、日本人はほとんど日本株を買わない市場となり、売買高は細ったままだ。かつて世界三大市場といわれた面影はない。

 経済を再成長路線に乗せるには、世界からヒト・モノ・カネを集める政策が不可欠だ。そのカネ、つまり金融を丸投げし続ける民主党政府の責任は重い。(ジャーナリスト 磯山友幸