国会議員の質問力を多角的に評価するNPO法人「政策監視会議(万年野党)」の取り組み

国会議員の質問力評価という本邦初?の試みを政策監視会議(万年野党)が実施しました。果たして、質問力の高い議員は誰か。万年野党のフェースブックページなどにデータがあります。是非ご覧ください。
オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36384


 前回のこのコラムで、「国会議員の活動データを集積する会」がまとめた全参議院議員の国会での質問回数などのランキングを紹介した。質問回数が多ければよいというものではない、という批判を多くいただいたが、その通りだろう。

 実は「政策監視会議(万年野党)」という別の団体が、国会議員の質問力、つまり質問の中味について評価し、ランキングする取り組みを始め、その結果が7月3日に公表された。今回はその取り組みについて紹介したい。

政権監視を専門とする「万年野党」

 同会はジャーナリストの田原総一朗さんを会長に、永田町や霞が関の政策活動を監視しようというもの。特定非営利活動法人NPO法人)としての認定を目指して組織化を進めている。政権監視を専門とするという意味合いから「万年野党」という名称にする方針だ。

 同会が初めて行った国会議員の「質問力評価」の方法は3通り。全国会議員にアンケート用紙を配布し、同僚の国会議員の質問に点数を付けさせた。初回ということもあって回答した議員は31人と少ないが、名前の挙がった議員は251人にのぼった。同僚議員の質問について「テーマ設定」「調査・下準備」「成果・実現」のそれぞれについて5点満点で評価、合計15点満点でランキングしている。

 2つ目の調査では、霞が関の省庁の職員、つまり官僚たちに自由に国会議員の質問力を評価させている。絶対匿名を条件に協力者を募ったが、さすがに協力する官僚は少なく、7人による評価にとどまっている。これも同じく15点満点で採点している。

 3つ目の評価方法は、国会議員自身に自薦の質問を出してもらい、それを国会TVのビデオ画像から10分間のサンプルとして抽出するというもの。政策専門家7人が実際にそれを見たうえで評価を下している。

「集積する会」ランキングとの相違点と共通点

 初めの同僚議員評価のランキングは評価者数がひとりでは、同じ党の先輩や仲の良い同僚に高評価を与えたものが目立つので、同僚議員2人以上から評価された議員131人に限ってランキングしている。

 同僚評価で最も高い点数だったのが前原誠司衆院議員(民主党)。理路整然とした語り口に定評がある。次いで山井和則衆院議員、後藤佑一衆院議員と民主党議員が続いた。4位に入ったのが西田昌司参院議員。いわゆる爆弾質問系、糾弾調の質問が持ち味の自民党議員だ。

 党派別にみると、みんなの党では6位に中西健治参院議員が入り、同率7位には公明党江田康幸衆院議員、日本維新の会小沢鋭仁衆院議員、共産党大門実紀史参院議員、生活の党の森ゆうこ参院議員が肩を並べた。

 ちなみに「国会議員の活動データを集積する会」の国会質問回数では大門氏(6位の93回)、中西氏(10位の80回)の2人がベスト10に入っていた。質問回数が多いだけでなく、質問内容についての同僚議員の評価も高いということだろう。

 2つ目の調査である官僚によるランキングは、トップに6議員が並んだ。衆院ではの柿沢未途(みんな)、後藤佑一(民主)、松本剛明(民主)、義家弘介(自民)の各議員、参院では鈴木寛(民主)、世耕弘成(自民)の両議員だ。

 いずれも政策通として知られる議員であり、官僚たちが仕事上の付き合いで議員の質問力を熟知していることの表れだろう。ちなみに柿沢議員は「集積する会」が昨年末にまとめた衆議院議員の質問回数ランキングでトップだった。

 3つ目の調査は、実際に質問の様子を評価者がビデオ視聴して点数を付けるというもの。トップには自民党柴山昌彦衆院議員と共産党山下芳生参院議員が並んだ。

 柴山議員が自薦したのは、独立取締役の導入を巡る会社法改正についての質問。オリンパスによる巨額の損失隠し事件など企業の不祥事が社会問題になっていた折の質問だったこともあり、「テーマ設定」について高い評価を得た。評者からは「独立取締役など、専門的な重要課題について、制度面まで斬り込んだ質問」「データ等を用い詰めた質疑」という評価が付いた。

 山下議員の質問はいわゆるブラック企業について。共産党ならではの実態調査をベースにした質問だった。評者からは「明確な問題意識と十分な実態調査結果」といった点や、「具体的な提言を行っている」点が評価されていた。

民主党では大西健介衆院議員の質問が3位、みんなの党では大熊利昭衆院議員の質問が4位に入った。維新では村上正俊衆院議員が8位、公明では國重徹衆院議員が15位、みどりの風谷岡郁子参院議員も15位だった。

国会議員の活動実態を国民の目に

 おそらく前例のない調査で、評価結果も一定の傾向を示したが、今後の課題はサンプル数を増やすことだろう。国会議員の自薦質問にしても42議員にとどまっており、全体からみれば5%強にすぎない。もっとも自薦議員の数が増え、仮に720人余りいる全議員の質問をチェックするとなると、評価者の負担が極端に大きくなる。評価の仕方も今後の課題と言うことだろう。

「万年野党」は秋のNPO認可を目指して体制固めを急ぐ方針だ。今後も議員の国会質問などを評価する活動を行っていく。会長の田原総一朗氏のほか、アドバイザリーボードに、宮内義彦オリックス会長、草刈隆郎日本郵船元会長、竹中平蔵慶應義塾大学教授、高橋洋一嘉悦大学教授、橘川幸夫・デジタルメディア研究所所長らを迎え、様々な国会議員評価の仕組みを開発していく。

 国会議員の仕事は国会での活動であるにもかかわらず、その国会活動の実態が国民の目にはなかなか見えず、その適正な評価もされていない。この実態に風穴を空ける活動ができるのかどうか、今後の行方に注目していただきたい。