米国の包囲網に「敗北」寸前の「スイス金融界」

米国はスイス金融を叩き潰すつもりではないか、2002年にチューリヒに赴任して以降、繰り返しそんな感想を抱きます。スイス金融の「最大の特長」でもあった守秘義務を放棄させるために、これでもか、といわんばかりの圧力を繰り返しかけているのです。逮捕されたワイル氏にはスイス駐在時代、インタビューをしたことがあります。当時はまだ外国人の脱税資金が堂々とスイスの大銀行に預けられていた時代でした。フォーサイトに記事を掲載しました。


 今年10月19日、イタリアのボローニャで妻と休暇を楽しんでいたひとりのスイス人銀行家が突然、イタリア警察に逮捕された。ラウル・ワイル氏(54)。スイスの銀行最大手であるUBSで、スイス国外の富裕層を主な顧客とする国際プライベート・バンキング部門のトップを務めた人物だ。今年春にはスイスの中堅プライベートバンクのCEO(最高経営責任者)に就任したばかりだった。 ワイル氏は米国から「逃亡犯」と認定されており、それは本人も認識していたとみられる。だが、米国が国際刑事警察機構ICPO)を通じて国際手配しており、まさか隣国で逮捕されるとは思ってもいなかったに違いない。ホテルに実名でチェックインしたため、警察当局に情報が行き、逮捕につながったとみられる。ワイル氏はその後、保釈も認められず、1カ月以上にわたってイタリアの拘置所に収監されたうえ、米国に移送、裁判を受けることとなった。 ワイル氏は、殺人や強盗といった凶悪な罪を犯したわけではない。スイスと米国の間で続いてきた“戦争”の生け贄になった と言ったらよいだろうか。 UBSは、米国人富裕層を国際プライベート・バンキング部門の上顧客としてきた。その中には米国内で申告し…
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