円安効果剥落すれば頭打ちの可能性も

訪日外国人による消費増が話題ですが、これはいつまでも続くとみていてよいのでしょうか。フジサンケイビジネスアイに掲載された記事です。http://www.sankeibiz.jp/macro/news/150219/mca1502190500005-n1.htm

本格的な春の観光シーズンがやってくる。桜花絢爛(けんらん)、日本を代表する風景を一目見ようと世界中から観光客が押しかける。アベノミクスによる円安も手伝って、この時期に日本を訪れる外国人客の数は今年も過去最高を記録しそう。主要な観光地の旅館・ホテルはすでに満室のところが多い。

 日本政府観光局(JNTO)の集計によると、昨年1年間の訪日外国人客数は1341万人と前の年に比べて29%も増え、過去最高だった。前年に初めて1000万人を超えたばかりだから、ものすごいペースである。

 外国人客が日本国内で落とすおカネもバカにならない。昨年は初めて2兆円を突破した。旅行者の大きなお目当ては買い物。大都市の百貨店やアウトレットなどで多くの外国人客を目にするケースが増えた。

 旅行者による消費は経済の末端に恩恵が届きやすい。輸出産業がもうかっても、それが従業員の給与や下請けからの購買代金の上昇に結び付くにはかなりの時間がかかる。それに比べて旅行者は全国各地に足を運び、零細な飲食店やお土産物店などにおカネを落とす。外国人客の急増による消費増はアベノミクスで最大の効果と言えるだろう。地方創生でも観光客をどう取り込むかというのが大きな柱になっている。

 政府は訪日外国人客を2020年までに2000万人、2030年には3000万人にする方針を立てている。2020年には東京オリンピックも開かれるので、目標達成は一見簡単そうだが、本当に今のペースでの増加が続くのか。

 現在の訪日客の急増は円安効果が圧倒的に大きい。台湾や中国本土から来る人が大きく増えているが、現地通貨が相対的に強くなり、旅行代金が大幅に安くなった。加えて、日本国内で買う高級ブランド品や身の回り品、化粧品などの価格が、自国で買うよりも低価格になっているという。

 これには理由がある。輸入高級ブランド品の場合、円高期に仕入れたものが円安になっても価格改定されずに売られていたり、値上げが円安に追い付いていないケースが少なくない。日本製品の場合、長期のデフレによって低価格化が進んでおり、円安になっても値上げされていない。円高から一気に円安に振れた経済の急激な変化に対応できず、結果として、日本がアジアの大バーゲンセール会場になっているのだ。

 だが、この状況は長続きしない。円安が定着し、輸入品の国内価格は急速に上昇している。原材料費の上昇で、日本の価格破壊も収束気味だ。今後も円安が進まない限り、セールは早晩、閉幕する。低価格だけを目的にやってくる外国人客が頭打ちになる可能性は十分にあるのだ。

 問題は、そうなっても日本にやって来てくれる外国人を、どうやって増やすかだ。日本の本当の良さ、素晴らしさを磨く努力が不可欠だろう。そしてそれをどう外国人に理解させ、魅力を感じてもらうか。

 フランスには1年間で8000万人の外国人が訪れるという。ブームに沸いている今のうちにやっておくべき事は多い。