公開企業 “創業者”の振る舞いわきまえて 磯山友幸

3月26日にフジサンケイビジネスアイに掲載された原稿です。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/150326/bsg1503260500003-n1.htm

父と娘が経営権をめぐって争っている大塚家具。その雌雄を決することになる株主総会があす27日に開かれる。双方が株主の支持を得るべく委任状争奪戦を繰り広げている。

 娘の大塚久美子社長側が取締役会を押さえ、会社側提案として父である大塚勝久会長らを排除する取締役候補案を提出。一方の勝久氏は、久美子社長らを排除した対案を株主提案として出している。

 勝久氏は創業者で、いまも発行済み株式数の18%余りを持つ筆頭株主。2%弱を持つ妻の大塚千代子氏も会長側で、2割の「基礎票」を持つことから、当初は株主総会でも優勢ではないかとみられていた。

 一方の社長側は、10%強を持つ米投資ファンドや国内金融機関などの機関投資家の支持を固めたとみられ、両者はほぼ拮抗(きっこう)している。総会当日までどちらが勝っても不思議ではない状態が続くものとみられる。

 残るは取引先などの法人株主や、個人株主がどちらを支持するか。会長は会見や新聞・雑誌のインタビューなどで「悪い子供をつくった」「娘はまだ反抗期」と、父娘の争いだという印象を前面に打ち出している。

 これに対して社長は上場企業としてのガバナンス体制のあり方や経営戦略を冷静な語り口で訴えている。会長側が「情」に訴える戦略を取っている一方で、社長側は「理」を説く戦法に出ているといってよいだろう。

 社長側の道理は機関投資家など「プロ筋」には理解されやすいに違いない。一方で、会長側の訴えで情にほだされる古くからの取引先や個人株主も少なくないだろう。

 「株主総会で判断を仰ぐ」「大株主さんは判断を間違えない」と、会長は当初、株主総会の結論に従う姿勢を見せていたが、その後の発言は大きく変化している。

 「負けるとは思っていないが、一度や二度で終わる気はない」。新聞のインタビューではこう答え、久美子社長側が総会を制した場合には、大株主として総会のたびに株主提案を出す姿勢を鮮明にしているのだ。あくまでも自身が社長に復帰するまでは、筆頭株主として、経営陣を揺さぶり続けるというわけだ。

 また、別のインタビューでは「(総会の)27日以降も創業者だから来るなと言われても出勤する。創業者はいていいことになっている」とも発言。仮に総会で久美子社長体制が固まって自らは取締役ではなくなっても、すんなり引退したりはしない意向を示している。

 創業者が会社は自分のものだと思う気持ちは理解できる。個人商店ならば、死ぬまで創業社長として君臨するのもいいだろう。だが、大塚家具はれっきとした株式公開企業である。公開によって私物化できなくなる代わりに、保有株式が生んだ膨大な含み益を、創業者は手に入れることができたはずだ。

 株主総会でどちらが勝つにせよ、株式公開企業としてあまりにも恥ずかしい騒動を公然と繰り広げるのだけは勘弁してもらいたいものである。