ついに「爆買い」がピークアウト!? 〜中国の景気減退と、二つの数字が示す、明るくない未来

日本の消費を下支えする外国人観光客の「爆買い」がしぼむようだと、パッとしない日本の景気に冷や水を浴びせることになりかねません。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45941


ピーク時の百貨店売り上げは200億円だが・・・
今ひとつ元気がない日本の消費を下支えしてきた、外国人観光客による「爆買い」はいつまで続くのだろうか。

上海株式相場の大幅な下落の影響で、中国人観光客の財布のヒモが締まることはないのか。中国の国内総生産GDP)が7%を割った影響は出ないのか。

日本百貨店協会が10月20日に発表した今年9月の「外国人観光客の売上高・来店動向(速報)」によると、百貨店71店舗で免税手続きが行われた物品の売上総額は138億6,000万円と前年同月の2.8倍になった。

外国人観光客の増加が続いていることに加え、昨年10月から化粧品や食料品などに免税対象が拡大された効果が大きい。

従来はハンドバックや衣料品、家電製品などを1人1日1店舗当たり1万円超購入したものが免税対象だったが、これに加えて、化粧品や、食料品、菓子類、果物、酒などを1人1日1店舗当たり5000円超購入したものも免税対象となった。

百貨店では特に新たに免税対象になった化粧品の人気が高まり、中国や香港、台湾からの観光客による「爆買い」のターゲットになっている。

71店舗の9月の免税売り上げ138億6,000万円のうち従来の免税対象だった物品は107億7,000万円だった。つまり、免税範囲の拡大によって1ヵ月だけでも30億円以上の増収要因になったわけだ。

昨年9月に免税手続きを行った人は5万6000人あまりだったが、範囲が拡大された10月には11万6000人となった。化粧品や食料品が対象になったことで、免税で買い物をする客が急増したことが分かる。

食料品などはブランド品などに比べて低価格のため、免税手続きを行った客ひとり当たりの単価は8万4,700円から7万5,000円に低下したが、全体の免税売り上げは9月の47億8,700万円から10月の86億7,000万円に大幅に増えた。

免税範囲の拡大が、従来の免税品の購入拡大などにもつながる相乗効果があったことを伺わせる。

その後、今年に入ってから訪日外国人客自体が増加し続けた効果もあり、百貨店の免税売り上げはうなぎ上りだった。年末商戦の12月には126億6,000万円を記録、客単価も8万9,000円に達した。

春節の2月には153億6,000万円となったが、桜のシーズンで観光客が一気に増えた4月には197億5,000万円と過去最高を記録した。免税手続きを行った顧客の数も24万1000人と最高になった。前の年の4月は7万7700人だったので、一気に3倍になったわけだ。

東京の銀座や新宿の百貨店の売り場に中国人などの外国人が溢れ、「爆買い」という言葉も一気に広がった。



9月は売上げ、客単価ともに激減!
免税手続き客数が過去最高となったのは今年7月の24万4000件。例年4月に並ぶ旅行シーズンとして外国人客が多くやって来る月だ。売上高は185億2,000万円と4月には及ばなかったものの、やはり高水準となった。

一見、好調を維持しているように見える外国人観光客向けの売り上げだが、時系列でみると、9月の数字に若干の懸念材料が透けてみえる。

確かに138億6,000万円という売上高は、前年同月比では2.8倍という高い伸びに当たるのだが、前月の8月(171億6,000万円)に比べると19%の大幅減少に当たる。今年3月とほぼ同じ水準なのだ。

9月は夏みシーズンが終わって旅行者も減少する時期ではあるが、さすがに落ち込み幅が大きいように見える。実際、昨年9月は昨年8月よりも売上高はわずかながら多かったのだ。

9月の免税手続き客数も19万2000人と8月(22万9000人)と16%も減っている。ひょっとして外国人観光客の「爆買い」がピークアウトしたのではないだろうか。

もうひとつ気になる数字がある。免税手続き客ひとり当たりの売上高、つまり客単価の下落だ。売上高が最高を記録した今年4月のひとり8万2,000円から、毎月下落しているのだ。

6月には7万9,000円となり、8月には7万5,000円に低下。9月は前月の7万5,000円から一気に7万2,200円にまで下落した。昨年10月に免税範囲が拡大されて以来、最低の水準となったのだ。

秋の紅葉シーズンに向けて、訪日外客数がさらに大きく伸びれば、百貨店の免税売り上げも増加に転じる可能性はある。年末商戦に入れば、高額品の売れ行きが伸び、客単価も再び上昇するかもしれない。ただ、これまでの右肩上がり一辺倒の増加傾向には、どうやら変化が生じているように見える。

仮に「爆買い」がピークアウトしたとすると、それでなくても弱さが目立つ日本の消費に冷や水を浴びせかねない。

「爆買い」を終わらせないために
日本百貨店協会が発表した全国百貨店売上高概況によると、全国82社238店の9月の売上高は前年同月比1.8%増だった。6ヵ月連続でプラスが続いているとはいえ、7月の3.4%増、8月の2.7%増と月を追って伸びが小さくなっている。

9月は衣料品が2.8%減と6月に続いてマイナスになった。天候不順などの影響が大きいが、昨年4月の消費増税の影響がいまだに残っているとの見方も根強い。

「美術・宝飾・貴金属」の伸びが13.6%増と8月の22.8%増から急速に減速しているが、これには外国人消費の鈍化が影響しているかもしれない。

訪日外国人の「爆買い」は百貨店だけでなく、アウトレットやドラッグストア、酒量販店などに幅広く増収効果をもたらしている。それがピークアウトした場合の影響は小さくない。

「爆買い」を一気に減少させないためにも、対策を先回りで行うべきだろう。観光庁は年末の税制改正要望で、1万円超となっている既存物品の免税対象を、5000円超に引き下げることを要望している。

免税対象が拡大すれば、昨年10月と同様に波及効果が広がる可能性は十分にある。また、免税対象のさらなる拡大も検討すべきだろう。

政府は訪日外国人の拡大を政策の柱のひとつとして掲げている。「爆買い」を円安による一時的な現象に終わらせないことが、日本の消費の安定的な拡大にもつながるだけに、早期に変調の兆しを捉えて対策を打つことが重要だろう。