会計士業界に初の女性トップ

監査業界は解体的出直しが必要でしょう。初の女性会長に大いに期待したいと思います。産経新聞社が発行する日刊紙「フジサンケイビジネスアイ」のコラムに4月27日に掲載された原稿です。
オリジナルページ→
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/160427/mca1604270500002-n1.htm

 ■問題山積「空気を読まない」改革に期待
 日本公認会計士協会に1966年の特殊法人設立以来、初の女性会長が誕生する。現在副会長を務めている関根愛子氏で、今年7月の会員総会で就任。3年間にわたり会計監査の制度改革などに取り組む。

 会計士が独占する会計監査をめぐっては、昨年、東芝の巨額会計不正が発覚。業界大手の新日本監査法人金融庁から課徴金を課されるなど処分を受けた。会計監査に対する世の中の信頼が大きく揺らいでいる。

 関根氏も「監査への信頼回復」を掲げて会長に立候補。会員会計士が投票する理事選挙では最多の票を得た。この結果を受けて、森公高・現会長らで作る「推薦委員会」が最終的に関根氏を選んだ。

 監査業界は揺れに揺れている。新日本は過去にも、巨額の損失隠しが表面化したオリンパスの監査などを担当。監査法人トーマツにはグループのコンサルティング会社が東芝損失隠しを指南していたという疑惑が指摘されている。あずさ監査法人オリンパス事件に巻き込まれており、日本の3大監査法人は満身創痍(そうい)の状態。とても会長を送り出せる状況ではなかった。

 関根氏は4位のあらた監査法人の出身。世界では4大事務所の一角だが、日本では準大手の規模。初の女性でしかも業界大手の法人出身ではないという「異色」の経歴を、会長としてフルに生かせるかどうかが業界再興のカギを握る。

 最大のポイントは「空気を読まない」こと。古くからの業界のしがらみや慣行に囚(とら)われれば、大胆な改革などできない。

 大きな力を持つ大手監査法人に厳しい制度改革を迫り、体質改善させるには、批判を恐れぬ強いリーダーシップが必要だ。

 逆に、業界内の空気を読んで行動すれば、業界の利益代表になってしまう。監督官庁である金融庁の言うがままになれば、職業専門家の自主規制機関という名が廃る。独立性が命である会計監査への信頼を取り戻すことは難しい。

 会計監査は日本の資本市場の信頼の要だ。上場企業が公表する決算書などにウソがないという「証明書」に会計士がサインするわけだが、次から次へと不正が発覚するようでは、日本企業の決算書全体が信用できないということになる。

 海外の機関投資家などからすれば、何が飛び出すか分からない日本企業の株式には危なくて投資できないということになりかねない。

 実際、東芝問題で東芝や新日本の処分が決まったのが昨年末。結局、上場廃止などの厳罰は見送られた。その後、年明けから海外投資家の日本株の売り越しが続いている。その一因に、監査不信があったとしても不思議ではない。

 何度も繰り返される日本企業の会計不正を根絶するには、過去の延長にある対策では不可能だ。信頼回復への思い切った改革を女性会長に期待したい。