ついにきた! 中国人「爆買い」終了の兆候 この一大事をどう乗り切るか? データで見るとはっきり分かる

現代ビジネスに5月25日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48738

人気商品に変化が…

訪日外国人観光客による多額の消費、いわゆる「爆買い」の一服が鮮明になった。日本百貨店協会が5月20日発表した4月の外国人観光客の売上高が前年同月比でマイナスになったのだ。

アベノミクスが始まった2013年1月以来、39カ月ぶりである。本欄でも、「ついに「爆買い」がピークアウト!?」(2015年10月21日http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/45941)、「『爆買い』は2月で終わる!?」 http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/47447)と折に触れて注目してきたが、遂にその時がやってきたわけだ。

4月に全国84の百貨店店舗で免税手続きをして購入された商品の総売上高は179億9000万円と前年同月比9.3%減少した。2013年1月の段階では、免税売り上げが19億4040万円に過ぎず、全体への影響はわずかだったため、外国人の国内消費に注目する人はほとんどいなかった。

それが、今では全国百貨店総売上高の4%近くを占めるようになり、百貨店の業績ばかりか、日本の消費動向を大きく左右するようになっている。それだけに「爆買い」のピークアウトは、日本経済にとって一大事なのである。

爆買い一服の理由は明らかだ。中国人観光客による高級品の購入が激減しているのだ。

百貨店協会の発表では、「外国人観光客に人気のあった商品」として上位5分野を発表している。これまで1位の常連は「ハイエンドブランド」だったが、4月になって異変が起きた。

「婦人服飾雑貨」が1位に浮上、2位は「化粧品」、3位は「婦人服」、4位は「食品」、5位は「家庭用品」となり、「ハイエンドブランド」が姿を消したのである。これまで売れ筋だった高級ブランドもののバッグや時計・宝飾品などがめっきり売れなくなり、どちらかというと庶民的なモノが売れ筋になったのである。

このまま終焉するのか?

中国人観光客が日本で「ハイエンドブランド」を買い漁ってきたのは、中国国内よりも日本で買う方が価格が安かったからだ。円安で人民元が強くなる一方、日本国内での販売価格は円高期から一気に値上げできない状態が続いたため、日本国内の輸入品はまさに「常時バーゲンセール状態」になったのである。

世界の高級ブランド品を買うなら日本が一番安いという状況が長く続いたわけだ。それが、円安が続いたことで、輸入品の価格改定が進み、値段がジワジワと上昇。そこへ円安が一服する状況になったため、中国人観光客にとって魅力のある価格ではなくなっているのだ。

また、中国の景気減速で、高級品を買う力に陰りが出ているという指摘もある。中国人観光客の総数自体は増えているが、その分、日本に来る観光客に占める富裕層の割合は減り、庶民の割合が高まっているという。こうした「客層」の変化によって免税売り上げが落ちているというのだ。

実際、1人当たりの購買単価が大きく落ち込んでいる。

免税対象が化粧品などにも広がった2014年10月以降で、購買単価がピークだったのは、2014年12月の8万9000円。それが昨年6月以降、7万円台となり、今年3月には初めて7万円を割って6万8000円を付けた。4月も3月と同じ6万8000円だった。ひとりあたりの購買金額はピークの4分の3になったのである。

では、このまま、「爆買い」は終焉してしまうのだろうか。

今までのような高額商品を爆発的な勢いで買い漁る動きは沈静化するかもしれない。上海あたりで再び不動産投機熱が強まれば、その余波で爆買い第二弾が盛り上がる可能性もないではない。

だが、訪日外国人に日本の消費を安定的に下支えしてもらうには、従来のような爆買い一辺倒でなく、日本の良いものを買う「正常」な姿に変化してもらう方が好ましい。

というのも、百貨店で免税手続きをする人は減っていない。4月の免税購買客数は約26万人と1年前の4月に比べて7.8%も増えているのだ。最も観光客が多い時期だった昨年7月は24万4000人だったが、中華圏の新年である春節だった2月には25万人に増加。4月はそれを上回ったのである。確実に免税手続きをする客の層は広がっているのである。

リピーターのニーズを掴めるか

ちなみに日本政府観光局(JNTO)の推計によると4月の訪日外客数208万2000人。3月に続いて200万人を超え、単月としては過去最高を記録した。日本にやってくる外国人はまだまだ増え続けているのだ。

輸入高級品を中心に大量に買う「爆買い」から、日本の良い物を買って帰る「正常な日本買い」へ。百貨店など小売店もターゲットを移していく時期に来ているのではないか。日本にやってくる外国人観光客も初めての人よりも、複数回来ている人が徐々に増えてきた。

ファンが定期的に日本を訪れて、日本ならではの産物を買って帰る。輸入した高級ブランド品を再輸出するよりも、日本経済への貢献度が大きいのは明らかだ。

人気が、ハイエンドブランドから食料品などに移行し始めているのも、日本ブームが定着し始めている表れとみることもできるだろう。そうした外国人リピーターのニーズをつかみ取ることができれば、訪日外国人の国内消費はまだまだ増えていく可能性がありそうだ。