コンビニでネパール人のバイトが急増しているのはなぜか そろそろ日本が本気で議論すべきこと

現代ビジネスに12月13日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53819

急激な人手不足

コンビニエンスストア各社が加盟する業界団体「日本フランチャイズチェーン協会」が、外国人技能実習制度の対象として「コンビニの運営業務」を加えるよう、国に申し入れを行うという。

日本で経験を積んだ実習生に母国に帰ってコンビニ展開を担ってもらうというのが「建前」だが、深刻化するコンビニでの人手不足を解消しようというのが「本音」であることは誰でも想像がつく話だ。

最近、都市部のコンビニに外国人店員がどんどん増えているなと感じている読者も多いだろう。彼らの多くは「留学生」という資格で日本にやってきて、勉学の「余暇」に働いている「建前」になっている。

セブン・イレブン、ローソン、ファミリーマートの大手3社だけでも4万人を超える外国人が働いているとされ、すでに全店員の約5%に上っているという。

留学生が働くのは「資格外」という扱いで、週に28時間までなら働くことができる。コンビニや居酒屋は、彼らにとって最も簡単に見つかるアルバイト先だったが、最近はなかなかコンビニで働きたがる留学生が減っている。人手不足が深刻化する中で、もっと割のよい仕事がいくらでも見つかるようになったからだ。

ひと頃多かった中国人の大学留学生などはコンビニや居酒屋を敬遠し、留学生と言いながら、本音では「出稼ぎ」に来ているベトナム人やネパール人の留学生が増えている。

コンビニでバイトする日本人学生も急速に減っており、コンビニは人手を確保するのに四苦八苦している。

本来ならば、きちんと外国人労働者を雇いたいところだが、安倍晋三首相は「いわゆる移民政策は取らない」というのが基本方針で、政府も「単純労働」とみなされる分野には、外国人は受け入れない姿勢を崩さずにいる。

技能実習生という「奴隷労働」

そこで「活用」されているのが「技能実習生」制度。建設や縫製、農業など77の職種について、一定期間、日本国内で働くことを認めている。

ただし、建設技術者の実習生として日本に来た場合、他の業種などに移ることは許されない。しかも、実習なので、寮費や食費などが引かれ、最低賃金以下で働いているのが実態。

技能実習生の集団脱走などが相次いだのは、逃げて、より稼げるところへ移るのが目的だ。何せ、斡旋業者などに渡航資金を前借りしてきているケースも少なくなく、いわば「奴隷状態」で働いている実習生も少なくない。

そんな世界的にも評判がよくない技能実習制度にコンビニ業界が手を挙げるのは、他に外国人を安定的に雇う方法がないからだ。

「単純労働」とされるサービス産業の現場には、もはや日本人の若者は就職したがらず、慢性的な人手不足が続いている。

にもかかわらず、外国人は「高度人材」しか受け入れない建前になっているため、正規に雇うことができない。さらに留学生もなかなか雇えないとなると、安定的に外国人を雇えるのは「技能実習」しかない、というのが今の日本の現状なのだ。

学生アルバイトの時給は毎年最低賃金が引き上げられていることもあり、年々人件費が上がっている。東京都の最低賃金は2017年の10月から時給で958円に引き上げられた。留学生といえども、最低賃金以下で雇うのはもちろん違法だ。

一方で、技能実習生となれば、労働時間も長くできるうえ、場合によっては実質的に最低賃金以下で働かせることもできる。

コンビニの場合、コストよりも人手の確保が喫緊の課題になっているが、農業や工場の現場では「低コスト」の働き手として使われているケースが少なくない。

自らの首を絞める結果に

現在、「単純作業」と言われてきた現場を抱える様々な業種から、外国人労働者を受け入れたいという声が挙がっている。ところが政府の方針は一向に変わらない。ここへきて打ち出されている方針は、あくまで「技能実習」という便法を拡大することだ。

政府は2017年11月1日から、「介護」職を技能実習の対象に加えた。介護業界は慢性的な人手不足に悩んでおり、外国人を正規の労働者として受け入れる必要性などが叫ばれてきたが、結局、「技能実習」の対象とすることでお茶を濁した。

介護職は団塊の世代後期高齢者になる2025年には、需要が253万人に達するとする試算もある一方で、供給は215万人と見込まれており、38万人が不足するとされている。

技能実習制度でやってくる外国人は、3年の満期が来れば本国に帰るのが建前だ。深刻な人手不足で更新も可能な制度が導入されたが、働く側からみれば、将来にわたってずっと日本に住めるわけではない。短期的な労働力不足を賄うための便利な存在としてしか扱われないわけだ。

だが、母国であるアジア諸国も急速に経済発展する中で、いつまでも日本に働きにやってくる外国人を確保し続けられる保証はない。技能実習の対象職種を広げれば問題が解決出来る、という話ではなくなっている。

長期にわたって日本に住むことができず、短期的な「出稼ぎ」となれば、優秀な外国人人材がやって来なくなる、という問題もある。質の高くない外国人が増えれば、それこそ犯罪が増えたり、様々な社会問題が発生することにつながりかねないのだ。

そろそろ本気で外国人労働者の受け入れ体制を真正面から議論すべき時だろう。

政府の腰が重いのは、外国人受け入れに強く反対する勢力に、過度に反応しているためだが、実習生などを便法として使うことで、なし崩し的に質の高くない外国人がどんどん国内に入って来れば、むしろ問題を引き起こすことになりかねない。

正規で労働者として受け入れる一方で、その資格をきちんと決め、質の悪い外国人は排除することこそ、国の治安を守ることになるのではないか。