今年の株主総会、いよいよ 「モノ言う株主」が大暴れしそうなワケ  サン電子では前社長ら4人が解任

現代ビジネスに4月10日に掲載された拙稿です。オリジナルページ→

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71724

香港のアクティピスト提案、通る

4月8日に開かれたサン電子の臨時株主総会で、大株主が提案していた株主提案が可決され、前社長の山口正則氏ら取締役4人が解任された。

香港のモノ言う株主(アクティビスト)として知られるオアシス・マネジメント・カンパニー・リミテッド(以下、オアシス)の要求で開かれた臨時総会で、株主提案はすべて可決され、取締役9人(うち3人は監査等委員)中5人が大株主が提案した取締役となり、過半を握ることとなった。

臨時総会での議案は4件。1号議案は会社側提案で、ソニー出身の辻野晃一郎氏を選任する議案だったが否決された。

2号議案は会社と株主が共に提案する形となった2人の取締役の選任で、これは可決。3号議案は株主提案で、前社長の山口氏、専務の山岸栄氏、取締役の山本泰氏、社外取締役の入部直之氏の取締役解任が議題とされ、これも可決された。

さらに4号議案も株主提案で、英国出身1人とイスラエル出身2人の外国人3人の取締役選任案で、これも可決された。争点にならなかった監査等委員3取締役を除くと、木村好己社長以外は入れ替わることになった。

山口前社長は71歳。2008年に代表取締役となり、2013年から2019年6月までは代表取締役社長(CEO)だった人物だ。

「株主提案可決は画期的」

解任理由について大株主側は、在任期間中に業績を大幅悪化させ、2019年3月には約10億円の最終赤字に転落させたことなどを指摘。「山口氏のCEOとしての経営は、損失を生じさせたことに留まらず、国内事業における新たな成長分野の開拓を怠ったという意味においても、当社に相応しくないことが明らかです」と指弾していた。

有価証券報告書によると、2019年3月末現在では、「外国法人等(個人除く)」が発行済株式数の25.4%を占めていたものの、筆頭株主の東海エンジニアリングが18.9%を保有、その他、金融機関が8.4%、個人投資家が39%となっており、オアシスだけで過半数を制しているわけではなかったことから、総会での議決の行方が注目されていた。

株主提案が通ったことについて、オアシスが早速コメントを出し、時事通信が報じていた。

「株主提案が可決される画期的なものでした」としたうえで、「サン電子の少数株主はコーポレートガバナンス企業価値を守り抜くべく一致団結したこと、そして、『より良いサン電子』のために立ち上がったことを示しています」と述べた。

今回は機関投資家保有株数がそれほど多くなかったが、それでも「日本のスチュワードシップ・コードに則って責任ある投票をしていただけた」点をオアシスは強調していた。

背を押される機関投資家

金融機関や生命保険会社など機関投資家は、かつては「モノ言わぬ」安定株主として、会社側の提案には無条件で賛成してきたが、機関投資家のあるべき姿を示すスチュワードシップ・コードが日本でも2014年に制定され、保険契約者など資金の出し手の利益を最大化することが求められ、株主にとって最良と考えられる投票行動を取るようになった。

このため、業績悪化を招いている社長などの取締役再任に反対するケースが激増。海外アクティビストなどファンドが出す株主提案が可決するケースが急増している。

最近では、レナウンが3月26日に開いた定時株主総会で、北畑稔会長と神保圭幸社長の取締役再任議案について筆頭株主の中国・山東如意科技集団が反対。取締役10人のうち、北畑氏と神保氏を除く8人は再任されるという異例の事態となった。

2人が再任拒否されたのは業績悪化が原因とされる。北畑氏は2019年まで社長を務めてきたが、業績悪化もあり、神保氏に社長職を譲っていた。神保氏はわずか1年で社長の座を退くこととなった。

新社長には急遽、取締役上席執行役員だった毛利憲司氏が就任。会長職に山東如意の邱亜夫(チウ・ヤーフ)董事長が就任した。再任拒否された神保氏は相談役、北畑氏は顧問となった。

4月23日には注目の積水ハウス

今年はこれからも、経営トップをすげ替える株主提案が相次ぐ見通しだ。4月23日には積水ハウスが定時株主総会を予定しているが、すでに前会長の和田勇氏が、現経営陣に対抗する取締役選任議案を株主提案として提出している。

2017年に発覚した地面師事件で積水ハウスは55億円にのぼる損害を被ったが、その責任者だった阿部俊則現会長(事件当時・社長)や稲垣士郎副会長(事件当時・副社長)らを解任に追い込みたい考え。

総会での議決権行使の行方が注目されているが、株主提案に対して、海外投資家や日本の機関投資家がなどが賛成票(会社側提案への反対票)を投じるかどうかが焦点になっている。

日本企業の株主総会は6月がピーク。業績悪化や不祥事など、相変わらず日本企業の不祥事は続いており、株主提案が数多く出される見通しだ。例年以上に目が離せない株主総会シーズンになりそうだ。