円安のメリット、国内観光にも 外国人旅行ブーム到来か

3月末に桜を観にふらっと京都に行ってきました。仕事の合間の休養のつもりでしたが、結局、記事に使ってしまいました。貧乏性はダメですね。産経新聞が発行するフジサンケイビジネスアイの1面コラムに掲載された拙稿を以下に再掲します。ご一読お願いします。オリジナルページ→http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130417/biz13041710050006-n1.htm


 桜が満開の京都は観光客であふれていた。そんな中で目立ったのが和服姿の若い女性たち。あちらこちらで記念撮影をしていた。よくよく話し言葉を聞いていると日本語ではない。韓国語や中国語。日本の文化を自ら体験できるのが、観光の目玉になっているらしい。(フジサンケイビジネスアイ

 日本を訪れる外国人観光客が急増している。日本政府観光局の統計によると、2月の訪日外国人は前年同月比33.1%増の73万人。2月としては初めて70万人の大台に乗せたという。香港や韓国、マレーシア、シンガポールなどからの旅行客が急増しているのだ。この傾向は3月以降さらに鮮明になっているもようだ。

 きっかけは大幅な円安である。円が弱くなり、自国通貨が強くなったことで、外国での日本旅行の価格がガクンと割安になったのだ。

 円安というと自動車など製造業のメリットが強調されがち。だが、大企業やその下請けの中小企業となると、メリットが実際の業績に現れるには時間がかかる。まして社員の給料が増えるには1年近いタイムラグがあるとみていい。ところが輸出と同じ効果がある観光の場合、景気に対する即効性が著しい。旅館や土産物店などの売り上げが増え、人手不足を補うために雇用が生まれるのだ。

 バブルの崩壊とデフレによって、地方の観光地は大きく衰退した。経済力をつけたアジアからの旅行者は増えたが、円高もあってなかなかもうからない。国内旅行者を引き止めるためにビックリするような価格破壊商品が生まれた。これでは宿屋の取り分がないのではないかと旅行者が心配してしまうほどだ。

 だがこの円安で、日本各地で外国人旅行ブームが巻き起こりそうな気配だ。価格だけで勝負する時代は早晩終わるに違いない。

 政府は2006年12月に「観光立国推進基本法」を制定。観光に力を入れる方針を示した。まさに第1次安倍内閣の時である。当時、羽田空港を本格的な国際空港に転換することなどを決めている。アジアの成長を取り込む仕掛けを埋め込んでいたわけだ。安倍首相がこれからも観光立国に向け、矢継ぎ早に手を打つであろうことは想像に難くない。

 いま安倍首相は自民党幹部に、地方経済の再生策を具体化するよう指示を出している。すでに首相自らが打ち出した「強い農業の再生」とともに、地方で大きな潜在力を持つのは観光産業の復活・育成だ。

 円高の時に海外旅行に出かけた人ならお分かりの通り、経済のグローバル化の恩恵で、世界の主要な観光地は人であふれかえっている。西欧諸都市など文化の蓄積のあるところは、それが経済的資産になり、収入をもたらしている。日本文化に惹(ひ)かれる外国人は多い。日本文化が味わえる特色ある旅行に人気が集まるに違いない。どうやってブームを取り込むか。これから地方の知恵比べが始まる。(ジャーナリスト 磯山友幸