12月10日の内閣人事局の発表を受けたマスコミの報道は「公務員ボーナス平均69万円」「12万円増」といった見出しでした。これを計算すれば簡単に出るのですが、昨年冬に比べて何と21%も増えています。21%増というと批判を浴びるからでしょうか。しかも69万円というのは、給与ボーナスが大きく増える管理職は除いた数字です。支給日の朝にフジサンケイビジネスアイの1面コラムに掲載された拙稿です。是非お読みください。サンケイビズ→http://www.sankeibiz.jp/macro/news/141210/mca1412100500003-n1.htm
公務員の年末ボーナスが10日に支給される。今年は前年に比べて大幅に増額され2桁増になるという。
理由は、期待以上の成果を上げたからでも、国の財政が劇的に改善したからでもない。4月から消費税率の引き上げに成功したから「大入り袋」が配られるというわけでは、もちろんない。2012年度、13年度と2年間にわたって実施されていた減額措置が今年度から終了した結果、「元の水準」に戻るためだ。
減額措置は、東日本大震災で復興特別税を導入したのがきっかけだった。復興のための財源を捻出するためとして、所得税や法人税に税率が上乗せされた。民間に増税を求めるには、政府も身を切る姿勢を示すことが重要だとして、給与カットを決めたのである。給与が平均7.8%減額され、ボーナスも約10%減った。
法人税の上乗せは前倒しで廃止されたが、所得税への上乗せは25年間ということになっており、今も続く。だが、公務員の給与カットを決めた法律は「2年間の時限措置」で、今年度から廃止された。元に戻るだけで、給与は8.4%増、ボーナスは11%増ということになる。8月の人事院勧告では、月給を0.27%、賞与を0.15カ月分引き上げるよう求めており、さらにベースが上がったから、ボーナスの伸びは大きくなる。
給与の減額措置を決めたのは、「我が国の厳しい財政状況及び東日本大震災に対処する必要性に鑑み」ということだった。だが、日本の財政が厳しさを脱したわけでも、復興が完了したわけでもない。財政は基礎的財政収支(プライマリーバランス)すら黒字化できず、毎年、単年度赤字を垂れ流している。
霞が関では「特別措置が終わったのだから、元に戻るのは当然」という反応が多いが、民間の感覚から大きくズレている。赤字会社が赤字から脱却できない段階で、ボーナスを大幅に増やすことなど、民間ではまず考えられないだろう。
財務官僚は、財政赤字がこのまま続けば「ギリシャ化する」と言う。
国の借金が1000兆円を超え、GDP(国内総生産)の2倍になったと危機をあおり、税率の引き上げが不可欠だとする。だが、どんなに増税しても、大盤振る舞いして使ってしまえば、借金は減らない。
財政赤字が進んでもボーナスが増えるのであれば、公務員は誰も借金を減らそうとはしない。財政破綻に直面したギリシャは、勤労者の25%が公務員だったという。だから緊縮財政に反対する大デモが起きた。国に依存し、ぶら下がることばかり考える人が増えれば、財政再建などできない。
日本では民間より待遇の良い公務員を志望する若い学生が増えている。民間よりも、巨額な赤字を抱える国や地方自治体の方が安定的に見えるのだろうか。これこそ、ギリシャ化の本質ではないか。(ジャーナリスト 磯山友幸)