【高論卓説】東証は上場廃止基準見直しを 裁量余地大きく 明確なルール不可欠

産経新聞社が発行する日刊紙「フジサンケイビジネスアイ」のコラムに8月3日に掲載された原稿です。オリジナルページ→http://www.sankeibiz.jp/business/news/170803/bsg1708030500002-n1.htm

 経営危機に直面している東芝の株式をめぐって、東京証券取引所上場廃止を決断できずにいる。東証にはれっきとした「上場廃止基準」が存在しており、東芝はそのいくつかに抵触している。

 まず最初が「有価証券報告書(有報)に虚偽記載を行った場合」。2015年に不正会計が発覚し、同年末には金融庁から「虚偽記載があった」と認定され、課徴金をかけられた。

 本来ならば、この一事をもって上場廃止になるはずだが、東証上場廃止規定にはこうある。「虚偽記載を行った場合であって、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認めるとき」。つまり、東証は、同じ粉飾決算でも、上場させ続ければ「秩序維持が困難」だとは判断しなかったわけだ。

 ただし、粉飾決算を起こさないような社内体制が整っているかをチェックするため、「特設注意市場銘柄」に指定した。通常は1年たって会社が報告書を出すと解除されるが、東芝の場合、別の不祥事が発覚し、さらに半年延期された。その期限が今年3月14日で切れたが、その時点で東芝が提出した報告書を、東証は審査している最中だ。内部体制が整っていないとなれば、上場廃止になる。

 もう一つが有報の「提出遅延」。東証の基準では、監査報告書の「法定提出期限の経過後1カ月以内に提出しない場合」、上場廃止になるとしている。東芝金融庁の許可を得て今月10日までに提出するとしている。