衝撃、新型コロナショックで世界経済が「大収縮」を迎えていた…! 輸出企業の業績悪化が明らかに

現代ビジネスに6月18日に掲載されました。ぜひご一読ください。オリジナルページ→https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73391

リーマンショック以来

新型コロナウイルスの蔓延による経済活動の停滞で、貿易量が激減している。

財務省が6月17日に発表した5月の貿易統計によると、日本から世界への輸出額は4兆1847億円と前年同月比28.3%も減少、輸入額も5兆181億円と26.2%減った。

新型コロナの感染者や死者が増え続けている米国との貿易が激減したほか、最大の貿易相手国である中国も再びマイナスに転落した。また、関係が悪化している韓国との貿易総額も大幅に減少した。

6月に入って経済活動が徐々に再開されているものの、世界での新型コロナ蔓延はまだ終息に至っていない。こうした中で、大幅に減った貿易量はそう簡単には戻らない見通しで、今後、輸出企業を中心に大幅な業績の悪化などが表面化してくることになりそうだ。

5月の輸出額と輸入額を合計した貿易総額は9兆2029億円と27.2%も減少した。月の貿易額が10兆円を割るのは、リーマンショック後の2009年11月以来だ。

貿易総額の減少は2019年5月から13カ月連続。新型コロナ前から、米中貿易戦争などの影響で、世界経済が鈍化し始めていた。そこに新型コロナが追い打ちをかけた格好になっている。

対前年同月比の減少率は、1月、3.1%のマイナスだったが、その後、影響が深刻化。2月は7.3%減、3月は8.4%減、5月は27.2%減と減少率は月を追うごとに拡大している。

対米激減

6月に入って欧米諸国で経済再開の動きが広がっているが、新型コロナの封じ込めを狙って経済活動を止めた結果、かつてない収縮が起きている。

完全な終息を待っていては経済が死んでしまう、という判断が活動再開に踏み切った実際の理由だろう。それぐらいに経済収縮が激しいことを、貿易の激減が示している。

4月で目立ったのは米国との貿易の急激な縮小だった。

全米に広がった外出禁止令などによって経済活動が停止、日本から米国への輸出額は50.6%減と半減した。また米国から日本への輸入額も27.5%減った。

輸出品目別では自動車の落ち込みが激しく、金額ベースで78.9%減となった。完成車の輸出台数が79.1%減ったほか、部品トン数も72.4%減少した。

米国市場向け完成車や部品の輸出減少が長引けば、自動車メーカーの業績に甚大な影響を与えることになる。そのほか、「一般機械」が40.9%減、「電気機器」が42.2%減と、輸出企業の経営に大打撃を与えている。

対中は4月に回復

ロックダウン(都市封鎖)が続いたEU欧州連合)との貿易の収縮も著しい。

EU向け輸出は33.8%減少。やはり自動車など「輸送用機器」が55.28%減、「一般機械」が39.0%減、「電気機器」が24.5%と大きく落ち込んだ。

今や最大の貿易相手国となった中国向け輸出は1.9%減、輸入は2.0%減と、全体としては小幅な減少に止まった。

中国の場合新型コロナの影響が最も大きかったのが2月で、貿易総額は25.0%も減少したが、3月に入ると6.4%減にまで持ち直した。さらに4月には生産活動が再開されたことで、マスクや消毒用品などの輸入が急増。貿易総額は1年ぶりに増加した。

5月は自動車など輸送用機器の輸出は16.4%減とマイナスが続いたが、半導体を中心に電気機器が8.5%増となるなど、生産活動が本格的に再開してきたことを示している。

一方、中国からの輸入は、マスク用や医療用防護服用などとみられる「織物用糸・繊維製品」が急増するなど一部の商品で増加が見られたものの、日本国内の景気落ち込みもあって総じて低調に推移している。特に魚介類や野菜類など食料品が19.0%減るなど、外食産業への「自粛」の影響が現れている。

韓国は日韓関係悪化の原因となるほど減

4月の日本国内の実質消費支出は11.1%の減少だったが、今後、日本企業の給与の減少や、失業などが広がれば、消費がさらに落ち込む可能性もある。そうなると食料品や生活雑貨など中国からの輸入がさらに落ち込む可能性もある。今後の先行きに暗雲が広がっていると見ることもできそうだ。

もうひとつ5月で注目されたのが韓国との貿易の落ち込み。日本から韓国への輸出が18.0%、韓国から日本への輸入が27.1%も減少した。

輸出と輸入を合わせた貿易総額の減少率は21.8%に達したが、これは日韓関係が悪化した2019年以降、最も大きい減少率となった。韓国は貿易依存度が極端に高い国で、輸出入の減少は韓国経済に大きな打撃を与える。

文在寅大統領がここへきて、WTO世界貿易機関)への提訴を再開するなど、改めて強硬姿勢を示し始めた背景にも、貿易の縮小に伴う経済悪化があるのかもしれない。

日本は貿易依存度が韓国から比べれば大幅に低いものの、自動車や電気など輸出が大きな割合を占める企業への影響は大きい。

こうした輸出企業のほとんどが「合理的な算定が不可能」として2021年3月期の業績見通しを明らかにしていない。株式市場などは個別企業への打撃の大きさを測りかねているが、貿易統計を見る限り、かつて経験したことがない売上高の減少に見舞われており、業績の大幅悪化は避けられない。

4-6月期決算の数字が現れてきてからその激震ぶりを目のあたりにすることになりそうだが、相当の覚悟が必要になりそうだ。