Take your books Let’s go out (フリー淡路ブックNo3特集記事)

神田神保町では11月4日まで恒例の「古本祭り」が行われています。連日大勢の人で賑わっています。連休には新刊書のブックフェアも併せて行われるようで、3連休はお天気さえ良ければすごい人出でしょう。お手伝いしている神田の町おこしのフリーペーパー。現在配布されている3号は古本とニューウェブの出版を取り上げました。

古書の魅力と好奇心溢れるブックタウン

「いつまでやっても知らない本の方が多いですよ。何せ奈良時代のものまで扱うお店があるわけですから。知っている事の方が少ないということを思い知らされるんです」
神田古書店連盟会長(東京古書組合神田支部長)で、けやき書店店主の佐古田亮介さんは古書店の魅力をこう語る。110年以上の歴史を誇る一誠堂書店に18歳で入社。32歳の時に独立して店を構えた。古書に魅せられて40年になる。
けやき書店では、明治以降の日本近代文学の初版本やサイン本を中心に、作家の色紙や原稿、書簡などを専門に扱う。特に無頼派と呼ばれる太宰治や阪口安吾織田作之助壇一雄といった作家のものが得意だ。
「本離れ」「出版不況」と言われて等しいが、神保町には異変が起きていた。神田古書店連盟には160店あまりが加盟しているが、ここ数年、その数が増えているというのだ。「近郊の古書店が神保町に移転してくるケースも多い」と佐古田さん。古書のブランド町のブランド力に引き寄せられているのだ。全国に古書店は2200ほどあるというから、その7%が神保町に集まっているということになる。
そんな町の最大のイベントが今年で54回目を迎える「神田古本まつり」。10月26日から11月4日まで「青空堀り出し市」などが靖国通りの歩道上の仮設書棚や店頭で開かれる。全国から古書ファンが集まってくる。11月2日〜4日には、東京の出版社が店を出す「神保町ブックフェスティバル」も開かれる。本好きにはたまらない季節がやってくる。

「おもしろいものを生意気に発信していく」
学生が自然体と熱意で開拓した話題のマガジン

 けやき書店の佐古田さんが修行した神保町の古書店の老舗「一誠堂書店」で人気モデルの二階堂ふみさんの写真撮影が行われていた。「古いものと新しいものが入り乱れている神保町の雰囲気の中で、本好きの二階堂さんを自然体で表現したかった」と『Nmagazine(
エヌ・マガジン)』編集長の島崎賢史郎くん。地元、明治大学の4年生で、昨年末に新しいコンセプトのファッション誌としてエヌ・マガジンを創刊した。
 創刊0号では表紙のモデルに水原希子さんを登場させ、HIRO KIMURA氏、腰塚光晃氏といった第一線で活躍する写真家の作品で構成した。学生が本格的なファッション誌を出したということで大きな話題になった。協力したくれた特定の書店だけが販売したが、それでも7000部を完売した。その2号目を今年10月の発売を目標に制作しているのだ。
 島崎くんがエヌ・マガジンを創刊した動機は、出版社でアルバイトをしていた時に遡る。プロの編集者たちが決められた仕事をただ「こなしている」ように感じたことだった。「カタログのようなファッション誌ではなく、もっと作品としての美しさに焦点をあてたクリエーターの発信の場が創れるのではないか」。熱意だけでフォトグラファーやスタイリスト、アートディレクターなどを口説き落とし、アルバイトで貯めた200万円をつぎ込んで雑誌づくりを進めた。
 「創刊号は大学生が作ったということで話題になっただけで、内容が評価されている訳ではない。過大評価です」と島崎くん。いよいよ「第1号」として本気度が試される。
 エヌ・マガジンは最も新しい“最先端の本”と言ってもいいだろう。島崎くんのような一見無謀な取り組みが沸々と湧き起って来るのも、新旧の書籍文化が息づく神田ならではだ。