「景気底割れ」間近か…!インバウンド消費がヤバいことになっていた  消費増税の影響大

現代ビジネスに連載されている『経済ニュースの裏側』に12月26日に掲載された拙稿です。是非ご覧ください。オリジナルページ→

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69458

増税対策も目立った効果なし

景気の「底割れ」懸念が強まっている。

10月1日からの消費増税の影響に加え、日本の消費を下支えしてきた「インバウンド消費」が変調をきたしていることから、消費の低迷が続いている。ポイント還元など政府による必死の「反動減対策」も今のところ効を奏していないようにみえる。

12月24日に日本チェーンストア協会が発表した11月の全国のスーパーの売上高は、全店ベースで前年同月比6.2%減と、10月の8.4%減に続いて大幅な減少になった。前年同月割れは7カ月連続だった。

また、店舗数調整後の既存店ベースでも、前年同月比1.4%の減少で、10月の4.1%減に続いて2カ月連続の減少になった。衣料品の落ち込みが大きいほか、食料品、住関連商品などいずれもマイナスになった。

百貨店の売り上げも厳しい。日本百貨店協会がまとめた11月の全国百貨店売上高(店舗調整後)も、11月は6.0%の減少となり、10月の17.5%減に続いて2カ月連続のマイナスを記録した。

百貨店の前年同月比の売上高は2019年7月までマイナスが続いており、消費税前の駆け込み需要は8月(2.3%増)と9月(23.1%増)だけだった。

消費増税による影響が大きい高級時計や宝石など「美術・宝飾・貴金属」部門は8月に23.8%増、9月に51.2%増となったが、反動で10月は24.3%減、11月は12.3%減と大きく落ち込んだ。ハンドバッグなど「身の回り品」などの影響も大きい。

税率が据え置かれたものが多い食料品も10月が5.1%減、11月が0.6%減とマイナスが続いており、消費の弱さを示している。

政府は消費増税の消費への影響を小さくしようと、食料品への軽減税率導入や、ポイント還元の実施に踏み切った。前述の通り、軽減税率が適用されている食料品の販売高もマイナスになるなど、消費全体の冷え込みの影響が出ている。

また、キャッシュレス決済によるポイント還元も、カードやスマホ決済を導入する店舗は確実に増加したものの、それが新規の消費を生み出しているかどうかは未知数だ。

来日外国人数は伸びても消費額減

加えて、ここに来て鮮明になっているのが、「インバウンド消費」が変調をきたしているこという。

百貨店で免税手続きをした人ののべ数は、6月以降6カ月連続でマイナスになり、11月は40万9000人と、1年前の43万3000人に比べ5.5%減った。免税による購入金額も10月は14.1%減、11月は5.6%減となった。

2カ月連続でマイナスとなったのは、免税対象が拡大された2014年10月以降、初めてのことで、増え続けていたインバウンド消費が頭打ちになってきたことを如実に示している。

背景には、日本にやってくる外国人客の数が頭打ちになってきたことがある。日本政府観光局(JINTO)の推計によると、10月の訪日外国人客数は前年同月比5.5%減、11月は0.4%減と2カ月連続でマイナスになった。

こちらも2カ月連続のマイナスは2012年3月にプラスに転じて以降、初めてのこと。中国からの来日数は増え続けているものの、日韓関係の冷え込みによって、韓国から日本にやってくる人が激減していることが響いている。

11月の中国からの訪日客は21.7%も増えたが、韓国からは65.1%減と3分の1近くに落ち込んだ。

韓国からの旅行客は日本での滞在日数も少なく、買い物など消費額も少ないことから、当初、影響は大きくないとみられていたが、さすがに減少人数が大きくなり、消費にも影響が出ている。

オリ・パラは大丈夫か

1月から11月までの訪日客の累計数は2935万人あまりと前年同期間に比べて2.8%の増加にとどまっている。2018年実績の3119万人を超えるのは確実で、7年連続過去最多を更新しそうだが、当初見込んだほどの伸びにはなりそうにない。

東京オリンピックパラリンピックでどれだけの観光客がやってくるのか、今のところ未知数だが、政府が目標としてきた2020年に外国人旅行者を4000万人にするという計画の達成はかなりハードルが高くなったと言えそうだ。

また、これまで日本経済を支えてきたインバウンド消費が、2020年に大きく伸びるのかどうかもなかなか見通せない。

政府は景気の底割れを防ぐために、事業規模26兆円にのぼる経済対策を閣議決定した。財政支出は13兆2000億円で、そのうち国と地方の歳出は9.4兆円程度を見込む。

2019年度補正予算と2020年度予算に組み込み、実質GDP国内総生産)の押し上げ効果が1.4%程度に達すると政府はソロバンをはじいている。

もっとも、冷え込んだ個人の懐を温めるには、公共工事などの財政支出では即効性が乏しいとの指摘もあり、2020年の消費がどれだけ盛り上がるかは予断を許さない。

自動車の新車販売の落ち込みなども深刻で、景気の底割れを懸念する声は日増しに強まっている。