若返る自民党に改革の予感 中堅若手議員が一大勢力に

圧勝した自民党はどんな政党になるのか、当選した議員の顔ぶれをザックリ分析してみました。結果は、これまでの自民党とかなり性格が変わるのではないか、という予感です。逆に言うと、安倍執行部がそうした党内の情勢変化を認識できないと、党内の政策のネジレが一気に表面化しそうです。ベテラン議員の処遇ばかりを考えていると、安倍氏は足元をすくわれることになるのではないか。そんな予感もあります。本日、産経新聞の「フジサンケイ・ビジネスアイ」紙1面に掲載された拙稿を、以下に再掲します。オリジナルhttp://www.sankeibiz.jp/macro/news/121220/mca1212200502005-n1.htm


 衆院選での大勝によって、まもなく政権に復帰する自民党自身の性格が、大きく変わる可能性が出てきた。当落線上にあるとみられていた30代、40代の若手候補者の多くが当選。今後、自民党内の一大勢力となるからだ。

 こうした議員には「改革志向」の人材が多く、結果的に「古い自民党」に回帰しようとする動きへの歯止め役になるとみられる。選挙戦で安倍晋三総裁が強調した「古い自民党には戻さない」という“公約”が、大勝によって図らずも実現することになりそうだ。

 野田佳彦首相は選挙戦で、自民党政権に戻れば「時計の針が逆戻りして古い政治に戻る」と強調した。確かに自民党は、かつての公共事業のバラマキを想起させる「国土強靭(きょうじん)化」などの言葉を使い、地方の選挙区では露骨に公共事業拡大を公約する候補者もいた。古い自民党へのノスタルジー、あるいは幻想を抱く層は、国民の間に今も確実に存在する。
  だが、118人に過ぎなかった党所属の衆院議員が、一気に294人に増えたことによって、党のカラーは間違いなく変わる。復活当選した元職70人のうち、33人が当選2回の議員だが、これは、前々回の郵政選挙で初当選し「小泉チルドレン」と呼ばれた人々が大半だ。

 初当選の119人のうち39歳以下が38人、40代が44人を占め、合わせると新人議員の69%に達する。自民党議員は猛烈に若返ることになる。年齢だけで見るのは早計だが、過去の経歴などからみても、新人議員の過半数は「改革派」であるといえる。

 2009年の衆院選で大敗した自民党は、選挙に強いベテラン議員などが比例で復活当選し、小泉チルドレンに代表される若手改革派はほとんどが落選した。その結果、党のカラーは大きく保守化し、旧来型の自民党政治への回帰を望む声が党内に蔓延(まんえん)した。

 おそらく、総裁選で安倍氏が選ばれることなく、谷垣禎一前総裁の執行部のカラーが引き継がれていたら、「国土強靭化」などがさらに前面に押し出されていただろう。その場合、ここまで都市部の無党派層の支持を取り込むことはできなかったに違いない。

握った圧倒的多数 敵は党内にあり

 安倍次期首相はさっそく、経済財政諮問会議の復活を決めた。小泉純一郎内閣や第1次安倍内閣の「改革」の司令塔となった組織だ。この一事をもってしても、安倍氏が経済再生に向けた改革路線に大きくかじを切るのは間違いないだろう。

 自民党内には、過去の自民党へのノスタルジーを抱き続ける議員も前職を中心にまだまだたくさんいる。今後は党内での路線争いが熾烈(しれつ)になるのは間違いない。前回の安倍政権が短命に終わった最大の理由は、後ろから弾が飛んできたことだった。第2次安倍政権が再び失敗を繰り返さないためには、中堅若手の改革派議員をキッチリ束ねることが必要だろう。

 圧倒的な多数を握った後の敵が常に党内にあることは、民主党政権を見るまでもなく明らかだ。旧来型のカネを媒介に集まる「派閥」ではなく、志を媒介にした「政策集団」を創り、束ねることができるか。安倍氏の党運営の手腕が問われる。