国会活動に最も熱心な参議院議員は? 「国会議員の活動データを集積する会」がランキングを公表

先日発表した国会質問ランキングについて現代ビジネスに記事を掲載しました。ご笑覧下さい。オリジナルページ 講談社現代ビジネス→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36309

 NHKの「国会中継」が放映される「予算委員会」は、国会議員にとっては「晴れの舞台」だという。多くの人が質疑に注目するということもあるが、何をおいても全国にテレビ中継されることが大きい。質問する姿を選挙民にアピールできなくとも、テレビカメラの角度を計算して、自らの姿が映る席を確保し、存在をアピールするだけでも大いに意味がある。国会活動をアピールするうえでも強力な武器になる、というわけだ。

 にもかかわらず、テレビを見ていると、同僚議員との雑談に明け暮れる議員の姿や、居眠りをしている大臣や議員の姿を、嫌というほど見せつけられる。国会議員はいったい、国会で何をしているのか。どうやったら、国会で熱心に活動している議員と、そうでない議員を判別できるのか。

「代返」だって認められている国会議員の活動実態を「数値化」しよう

 実は、この質問に答えるのは案外難しい。国会議員の仕事は言うまでもなく、国会の会議に出席して議論を戦わせることだが、会議への出席率といったデータは集計されていない。極端な話、国会議員になって会議にもほとんど出席せず、質問もしない議員もいるのだが、それを簡単に見分ける方法がないのである。

 委員会などでは「委員差し替え」といって、当日の会議に出られない場合、若手の議員などに委員を差し替えて、出席させることがしばしばある。代理で出席の返事をする「代返」が公式に認められているのだ。そんな慣行もあって出席を取ることには意味はない、という意見もある。

 また、総理経験者など、「大物」議員になると、「懲罰委員会」のようなほとんど会議が開かれない委員会に名前だけ所属しているケースも少なくない。そもそも、国会でバリバリ質問するのは「若手議員の仕事」といったムードすらあるのだ。

 そんな国会議員の活動実態を「数値化」しようという試みが昨年秋から始まった。任意団体の「国会議員の活動データを集積する会」がそれで、私もメンバーに加わっている。昨年末の衆議院選挙の直前には衆議院議員の活動実績ランキングを公表したが、参議院議員選挙を前に、6月27日に参議院議員の活動実績ランキングが公表された。

 同会で集積しているデータは今のところ3つ。議員の「国会での質問回数」、議員の権利として政府に考え方などを質すことができる「質問主意書の提出件数」、そして「議員立法の提案件数」である。

 いずれも衆議院参議院が公式の出している「国会TV」画像や、議事録などから、人海戦術でデータをエクセルファイルに抜き出している。「衆議院TV」の場合、各議員の発言時間が表示されているため、「質問回数」に加えて「質問時間」も集計したが、「参議院TV」には時間表記がないため、回数だけになった。いずれも限られたデータだが、それすら、まとまった数値が存在していなかった。

参議院議員の任期は6年で、3年ごとに改選される。このため、全議員を比較するには直近3年分のデータに絞る必要があった。議事録などが公開されるタイミングもあり、一部は5月末までのデータになっている。

国会での質問回数ランキングは?

 まずは、国会での質問回数のランキングをみてみよう。トップは福島みずほ氏(社民)の128回。ベスト10には共産党の議員が5人、社民党議員が2人、みんなの党が2人、新党改革が1人と、少数政党が並んだ。実はこれには理由がある。少数政党は所属議員が少ないため、様々な会議をひとりの議員が掛け持ちする。さらに、少数政党には時間は短いながらも質問は割り振られるため、議員1人当たりの質問に立てるチャンスは格段に大きくなるのだ。

 ちなみに共産党の所属議員は6人で、全議員がこのランキングに入っている。一方、与党だった民主党の議員は数も多いうえ、与党ということで質問のチャンスも少ない。

 だからと言って、このランキングが無意味だ、ということにはならない。同じ政党の中で、誰が活躍しているかを知るための一助になる。例えば、与党だった民主党でも金子洋一議員は30回でランキングに入っているし、自民党でも佐藤正久議員51回で28位に入っている。佐藤議員は「議員立法発議回数」「質問主意書提出件数」のランキングにも上位に名前が入っており、国会活動を精力的にこなしていることがこのデータから見えてくる。

 もちろん、大臣や副大臣政務官といった政府の役職に就いていたり、議長や副議長、委員会の委員長になっている議員は、質問に立つことはまずない。ランキングに入っていないから、即ダメ、ということにはならない。

議員立法発議ランキングと舞台裏

議員立法の発議回数では新党改革荒井広幸議員がダントツの19回だった。これを、みんなの党小野次郎氏が13回で追う。法律案のほとんどは内閣が発議する「閣法」だが、これは専門家である官僚たちがフルにバックアップする。

 ところが議員立法の場合、法律案を作る段階では参議院事務局のスタッフが協力するものの、専門性は所管官庁の官僚に適わないケースが多い。それだけ、議員にはかなりの力量が必要なのだ。

 議員に政策スタッフを付けるべきだという議論はかねてからあり、「政策秘書」の制度が導入されたりしたが、なかなか霞が関にかなう人材を擁している議員や政党は少ない。発議回数2回までをランキングの対象としたのも、そうした手間ひまを考慮している。

国会議員の貴重な権限「質問主意書」提出ランキング

質問主意書の提出件数は公明党浜田昌良議員が99回でトップ、これを自民党佐藤正久議員が85回で追った。質問主意書は国会議員の貴重な権限とも言えるが、大臣経験者や官僚など「政府側」からはすこぶる評判が悪い。いちいち回答を用意して閣議にかけなければならないからだ。「くだらないものまで、何でも質問主意書にして出してくる議員がいる」という悪口も聞く。だが、政府が嫌がるというのは、牽制機能として効果が大きいという意味でもある。微妙な問題で政府の公式見解を引き出すのに使う議員もいる。

質問主意書については政党で縛りをかけているケースもあるようだが、一般的には議員の「意欲」次第で出すことができる。衆議院議員の中には、質問主意書を出すための作業をメインの仕事としている専属の秘書を置いている人もいるという話だ。

 ご覧いただいてお分かりの通り、この3つのランキングを組み合わせてみると、国会活動に「熱心な議員」はおぼろげながらも見えてくる。

データから見えてきた「熱心な議員」

「国会議員の活動データを集積する会」は基礎データを集積して、メディアなどに提供するところまでを目的として団体で、ランキング以外に「評価」はしないことにしている。党派や思想信条などに関係なく、基本的なデータとして客観的に示せる段階までで止めておこうという方針だ。

 ただし、「集積する会」がデータを提供した先が、様々な評価を行うことは自由としている。今回もYahoo!の「みんなの政治」や東京プレスクラブに情報を提供した。東京プレスクラブはランキングなどをベースに独自に議員を評価し、全参議院議員を対象に三ツ星で格付けしている。ちなみに星3つは11人、星2つは34人、星1つは105人だった。委員会別の質問回数などのデータも加えた『国会議員三ツ星データブック』が電子書籍として発刊された。

 もちろん、質問回数が多ければよいというわけではないだろうという反論も多くある。中味が問題だ、というわけだ。しかし、中味の評価となると、一定の専門知識を持った人たちに評価してもらうことが重要になる。これを担う組織を別途、設立する方向で準備中だ。政府・国会の政策活動の監視を目的とした特定非営利活動法人NPO)とする予定で、「国会議員の質問力評価」などを行い、近く公表していく。