GPIF、運用の独立性確保できるか

サンケイ新聞社の発行する日刊紙「フジサンケイ・ビジネス・アイ」に9月30日に掲載された原稿です。ネットのサンケイビズにも掲載されています、是非ご一読ください。
オリジナル→http://www.sankeibiz.jp/macro/news/140930/eca1409300500001-n2.htm


年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)改革の行方にマーケットが神経をとがらせている。GPIFをめぐる塩崎恭久厚生労働相の発言に、株式市場や為替市場が大きく反応しているのだ。9月3日の内閣改造で塩崎氏が厚労相に内定したという報道が流れただけで株価が急騰。自民党政調会長代理としてGPIF改革に熱心に取り組んできたことが材料視された。就任後も、テレビ番組での発言で為替が円高に動いたと報じられたかと思いきや、大臣会見での発言が円安の一因だとされる場面もあった。GPIF改革がどうなるかに、まさに一喜一憂しているのである。

 マーケットが注目する最大の理由は、GPIFで運用されている資金の投資先がどう変わるか。現状では6割が日本国債に投資されているが、その資金が日本の株式や外国の株・債券に向かうことになれば、マーケットへのインパクトは大きい。

 その資金配分、つまり運用ポートフォリオの行方に注目している。何せGPIFが運用する資産は6月末で127兆円余りと巨額。1%でも1兆円以上の資金移動が起きる。

 短期の利益を狙う投資家は、このポートフォリオの改革に注目している。安倍晋三内閣の周囲からは、もっと日本株を買わせろ、という声も聞こえて来る。GPIFの資金が日本株に回れば、株価上昇の大きな原因になるからだ。海外投資家でもヘッジファンドなどには、そうしたポートフォリオの行方に注目している人が多い。

 市場がもう一つ注目するGPIFの改革点は、GPIFの組織のあり方である。ガバナンス(統治機構)問題と言われるものだ。現在の独立行政法人では最終的な責任者は理事長で、しかも、その任命は政府が権限を握っている。GPIFには「運用委員会」が置かれているが、その独立性や専門性に疑問符が付いているのだ。組織体を見直して独立性の高い組織を作ろうと思えば、独法のままでは難しい。法律改正が必要になる。

 海外の投資家でも長期の運用を目指す年金基金プライベートバンク、投資会社などは、むしろ、このガバナンス改革の行方に注目している。専門性が高い独立した組織が運用方針を決めれば、いまよりも海外資産への投資が増える可能性が出てくる。巨額の資金が海外市場に流れれば、そのマーケットの価格は上がる。日本から海外へと資金が動けば、為替にも大きく影響する。さらに、海外の運用会社などからすれば、GPIFの海外資産での運用が増えれば、自分たちの大きなビジネスチャンスにもなる。

 もちろん、自らの権限が剥奪されることになる厚労省は、ガバナンス改革に消極的だ。それだけに、海外投資家からすれば、日本が変わるかどうかの試金石としてGPIFのガバナンス改革を見ている面も強い。抵抗が強い役所のトップとしてどう改革を進めるのか。塩崎厚労相の手腕が問われている。