支持率ほぼゼロ…国民民主党は代表選で生まれ変われるか 対照的な二人の対決

現代ビジネスに8月24日にアップされた原稿です。オリジナルページ→https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57172

解党の危機を乗り越えられるか
国民民主党の代表選挙が8月22日告示され、玉木雄一郎共同代表と津村啓介内閣府政務官が立候補した。投開票日である9月4日に向けて選挙戦が始まった。

国民民主党は2018年5月に、希望の党民進党の再結集を狙って発足したが、両党合わせて107人いた衆議院議員参議院議員107人のうち、6割しか参加しなかった。その結果、立憲民主党の63人に及ばず、目指していた野党第1党の座を逃した。

NHK世論調査では、発足した5月の政党支持率は1.1%で、4月時点の希望の党(0.3%)と民進党(1.4%)を合わせた支持率を下回った。その後もジリジリと支持率を下げ、8月の国民民主党の支持率は0.4%と、ほぼゼロと言って良いところまで落ち込んでいる。

起死回生を狙った統合・新党結成だったが、完全に空振りに終わり、政党としての影響力をほぼ失っている。

そんな中で行われる代表選は、立候補した両氏が国民民主党の存在意義を訴える貴重な場になる。新代表が求心力を失えば、結党から4カ月で解党の危機に直面することになりかねない。

まだ序盤戦とはいえ両候補の戦い方は対照的だ。

玉木氏は「必ず、政権を取る。これが国民民主党を結党した意義」だとし、11分野43項目の政策を掲げる。現職の代表らしく、党としての未来戦略を描くオーソドックスな手法と言える。

一方の津村氏は来年の参議院議員選挙を念頭に、野党共闘を行って候補者を一本化すべきだと訴え、共産党との共闘にも踏み込む姿勢を見せた。政策というよりも戦い方の戦術の焦点を当てた代表選を戦う意向のようだ。

確かに、政権交代に向けた政策論議をすることは重要だ。選挙の顔である代表がどんな政策を打ち出すかを知っておくことは、党員や党所属の議員に取っても重要である。安倍晋三首相が進めるアベノミクスなどに対抗して政権交代を果たすには、柱になる政策が必要なのは言うまでもない。

選挙ではまず独自候補を立てる努力をするのが先決だというのが玉木氏の考えのようだ。

政権交代よりもまず目先の選挙
だが一方で、支持率が1%にも満たない政党が、政権を取ると言ってみたところで実現性がどれだけあるのか、という疑問も生じる。

来年の参議院選挙をどう戦うのかという戦術、つまり野党共闘のあり方を前面に打ち出すのも、あながち的外れではない。いや、というよりも、現職の国会議員、特に来年任期満了を迎える参議院議員にとっては選挙で勝ち残れるかどうかは最大の関心事である。

多くの国民民主党議員が選挙に不安を抱いているのは間違いない。

衆議院の場合、小選挙区で戦って自民党に勝てないとすれば、善戦して比例復活を狙うことになる。だが、野党第2党では、比例復活の目は乏しい。本音では古巣で一緒だった立憲民主党の議員と激突することだけは避けたい、と考えている。

選挙が弱い議員には、タイミングを見て立憲民主党に鞍替えしようと考えている議員もいる。政策で立憲民主党と対立することを国民民主党として掲げてしまうと、選挙区での候補者調整が難しくなり、ガチンコで勝負することになりかねない。

代表選は所属国会議員62人が各2ポイント、国政選挙候補予定者18人が各1ポイントを持つほか、750人余りいる地方議員が合計71ポイント、7万人余りの党員・サポーターが同じく71ポイントを持ち、得票数で比例配分する。

合計284ポイントを争うわけだが、国会議員はもとより地方議員も次の参議院議員選挙衆議院選挙をどう戦うか、野党共闘はどうなるかが最大の関心事と言っても良い。

一方、一般の党員やサポーターからすれば、国民民主党がどんな政党を目指すのかを明示してもらわなければ、応援のしようがないということになるだろう。つまり、長期的な党の盛衰を考えれば、政策を訴えることが重要だが、目先の選挙対策を考えると他党との連携をどうするかが焦点ということになる。

アベノミクスに対抗できるか
では、現代表でもある玉木氏が掲げる政策はどんなものか。アベノミクスを向こうに回して戦えるだけの「説得力」があるのか。特に安倍首相が成果だと強調する「経済」分野で太刀打ちできる政策を掲げているのか。

真っ先に掲げているのが「生活の安心をつくる」として月7万円の最低保障年金と、給付付き税額控除の導入を掲げている。給付付き税額控除には「日本版ベーシック・インカム」という名称が付けられている。

ベーシック・インカムはどんな人にも一定の所得を保障するというもので、低所得者への再分配を増やす政策と言える。

社会主義色の強いヨーロッパの野党などが長年主張しているが、先進国で導入されている例はない。働かずに所得を得る「タダ乗り」が発生して労働モラルが落ちるという反対意見も根強い。

希望の党小池百合子代表の下で「ユリノミクス」と名付けた経済政策を掲げた際にも柱としてベーシック・インカムが盛り込まれていた。

「金融・財政の新しい規律をつくる」として、アベノミクスが進めてきた「マイナス金利は即座に廃止し、異次元緩和の弊害を除去」と明言しているところも目を引く。

また、「『2030年代原発ゼロ』に向けたスケジュールを具体化」としている。旧民主党が政権末期に掲げた『2030年代原発ゼロ』という脱原発の方向性を踏襲している。さらに「日米FTAは認めない」といった文言も含まれる。

多くの国民がアベノミクスの効果を感じる一方で、森友学園加計学園を巡る首相の答弁や財務省の公文書改ざんなどに不信感を抱いている。

一方で、野党がこうした問題にただ批判を繰り返すだけで、政権の受け皿となるには不十分な野党しか存在しないことにも苛立っている。

玉木氏が、愚直に政策を前面に打ち出したのは、そうした国民の期待に応える野党を創り上げることを狙っているとみられるが、大半の所属議員が目先の選挙の戦い方に関心を抱く中で、どこまで支持を集められるか。9月4日の臨時党大会が注目される。