SankeiBizに6月25日にアップされた「高論卓説」です。オリジナルページ→
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政府の中で規制改革の司令塔としての役割を担ってきた「規制改革推進会議」が7月で3年の任期を終える。後継組織をどうするか、政府は最終的な結論を出していない。「岩盤規制に穴を開けるドリルになる」と繰り返し述べてきた安倍晋三首相の姿勢が改めて問われることになる。
規制改革推進のための組織は、1995年の行政改革委員会規制緩和小委員会(参与・宮内義彦オリックス社長=当時)から続くが、もともと土光臨調(第2次臨時行政調査会)の流れをくんでいるといわれる。民間が政治と一体となって霞が関が握る規制や利権を突き崩してきた歴史である。
民主党政権時代にいったん姿を消したが、2013年に第2次安倍内閣が「規制改革会議(議長・岡素之住友商事元会長)」として復活させた。16年に任期満了になると後継組織として「規制改革推進会議(議長・大田弘子政策研究大学院大学教授)」が作られ、現在まで続いている。これが7月で任期満了となるのだ。
後継組織については、自民党の行政改革推進本部(本部長・塩崎恭久衆議院議員)が、「常設化」「法定化」すべきだと提言している。少なくとも「常設化」は21日に閣議決定された「骨太の方針」に検討が盛り込まれた。
規制改革推進組織としての権限強化を狙って重要会議として法律で定める「法定化」については、首相官邸が最終的にどれだけ規制改革に覚悟を決めるかにかかっている。民間人を中心とする規制改革推進組織が強力な権限を持つことに、規制権限を握る各省庁が抵抗するのは明らかだからだ。
後継組織の設置が決まっても議長や委員の人選は難航しそうだ。トップである議長には改革派の経営者が求められる、年々、規制緩和に体を張る経営者がいなくなっている。現在の規制改革推進会議でも議長を引き受ける経済人が現れず、結局、学者で元経済財政担当相の大田氏が引き受けた。
議長代理になった金丸恭文・フューチャー会長兼社長は筋金入りの改革派として知られるが、議長になると農協改革などの具体的な規制見直しに携われなくなるということで代理に落ち着いた。
今回の後継組織でも改革派の経営者探しは難航しそうだ。
理由はいくつかあるが、自社の経営に追われ、国家全体の規制改革に取り組む意欲を持つ経営者がいなくなったこと。そして、何よりも大きいのが、既得権を持つ業界団体や官僚組織を敵に回してまで、改革をやり遂げようという信念を持った人物がいなくなったことだ。霞が関を敵に回すと出身企業が損をすると率直に語る経営者もいる。
かつては民間企業の多くは政府や霞が関の世話になっているケースは少なく、規制緩和を真正面から主張できた。
最近は伝統企業ほど政府の助成金などの恩恵を被るケースが増えており、霞が関との関係を気にするようになっている。
頼みは首相のリーダーシップだが、加計学園問題での国家戦略特区制度への「攻撃」もあり、安倍首相自身の規制改革への姿勢が薄れているという見方が強い。
そんな中で、霞が関の「反改革」とも言える動きが強まっている。果たして、どんな人物が集まる後継組織ができるのか、大いに注目したい。