韓国が「反日運動」すればするほど、経済に大打撃となりかねないワケ

7月11日の現代ビジネスにアップされた拙稿です。オリジナルページ→

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65814

いま起きていること

観光やビジネスで韓国から日本を訪れる訪日客の数が目に見えて減少している。

日本政府観光局(JINTO)の推計によると5月の韓国からの訪日客は60万3400人と前年同月比5.8%減った。対前年同月でのマイナスは3カ月連続で、1月~5月の累計でも前年同期比4.7%のマイナスになった。

韓国軍による自衛隊機へのレーダー照射問題や、元徴用工裁判で賠償を命じられた日本企業の資産差し押さえなどを巡って、文在寅ムン・ジェイン)政権が韓国国民の反日感情を高めていることが背景にあるとみられる。

昨年夏ごろから訪日客が頭打ちになり、減少する月が目立っていたが、3月には5.4%減、4月には11.3%減と減少が鮮明になった。韓国経済の後退も一因であることは間違いないが、日韓関係の悪化が陰を落としている。

6月以降、日韓関係はさらに悪化している。7月に入って日本政府が打ち出した半導体材料の輸出手続きの厳格化方針に対して、韓国政府は元徴用工問題への「報復」だとして猛反発。韓国国民の一部では、日本製品不買運動や、日本訪問を忌避する動きが出始めている。

6月、7月の訪日客も大きな増加は見込めないことから、2019年は年間を通しても前年割れになる可能性が強い。

韓国からの訪日客が年間を通してマイナスになるのは東日本大震災が起きた2011年の対前年比32%減以来。2012年には年間200万人を突破、以後増加を続け、2018年には年間753万人が日本を訪れていた。

ヒトもモノも

隣国である韓国との間の人の行き来は歴史的に多く、2013年までは訪日外客数の国別でトップであり続けた。その後、中国からの観光客が激増、2014年は台湾に次ぐ2位、2015年以降は中国に次ぐ2位を占め続けている。2018年は中国の838万人に次ぐ2位だった。

2019年に入ってからも、中国からの訪日客は依然として高い伸びを示している。1~5月の累計ではトップの中国が10.8%増の365万人でトップ、韓国は2位を保っているものの、4.7%減の325万人に留まっている。

一方、日本から韓国を訪れる人の数が今後どうなるかも注目される。トラベルボイスの集計によると、2018年1年間の日本人の韓国向け出国者数は294万8500人と27.6%増え、大幅な伸びを記録した。日本から海外への出国者数全体が増加傾向にある中で、とくに韓国への出国が目立った。台湾は3.7%増の196万9200人、香港は4.7%増の128万7800人だったという。

韓流ドラマの根強い人気やKポップ歌手の日本ファンの増加などもあり、若い層を中心に韓国を訪れる人が増えていた。今後、こうした若年層などの旅行者が、反日運動などのニュースが流れることで渡航を自粛するケースがどれだけ出て来るのか、その影響が懸念される。

ヒトばかりでなく、モノへの影響も心配だ。

半導体材料の輸出手続きの厳格化などによって、今後、日本から韓国への輸出がどれだけ影響を受けるか今のところは分からない。

カネも止まる…?

JETRO日本貿易振興機構)がまとめた韓国貿易協会のデータによると、日本から韓国への2018年の輸出は546億ドルと前年に比べて0.9%減少した。一方、韓国から日本への輸入は305億ドルと13.9%増加した。韓国側からみれば、日本との貿易赤字が続いており、日本への輸出拡大を進めたいところだろう。

日本製品のボイコットなどによって日本製品の輸入が減ることは、短期的には貿易赤字の削減に効果がある可能性もある。だが、基幹素材である半導体材料の輸入などが滞れば、結果的に韓国の主力輸出品である半導体などの日本への輸出も落ち込むことになりかねない。

両国関係の悪化は、双方の経済にマイナスになるのは間違いない。日韓の貿易量は前出の統計によれば、2014年の日本向け輸出額(537億ドル)、日本からの輸入額(321億ドル)とほとんど大差がない。つまり、両国の貿易量はここ5年、停滞していると見ることもできる。やはり政治の世界の関係悪化が、経済に影を落としているとみるべきだろう。

だとすると、今回の日本側の措置に対して韓国が過剰に反応し、「敵対色」を強めた場合、2019年後半から貿易量が激減する可能性もある。もちろん日本経済への影響もあるが、輸出依存度の高い韓国経済にとって、より深刻な打撃になる公算が大きい。

ヒト・モノだけでなく、カネの動きにも影響を与えそうだ。日本企業の韓国への2018年の投資件数は、韓国産業通商資源部の集計で、13億100万ドルと前の年に比べて29.4%減少した。

元徴用工裁判で、日本企業の資産が差し押さえられたことで、日本企業が対韓投資を躊躇する可能性もある。2019年8月には差し押さえ資産が裁判所によって現金化されると報じられており、一段と日韓関係に暗雲が広がる可能性もある。

政治が事態をエスカレートさせることは、両国経済にとって何らプラスにならないということを双方の国民は痛感すべきだろう。