予想以上の大打撃…新型コロナ禍で「日本経済」だけが「一人負け」していた…!  どうしてこうなった…

現代ビジネスに5月21日に掲載された拙稿です。ぜひご一読ください。オリジナルページ→

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/83331

リーマンショック時より悪化

いつか見た光景である。リーマンショックがあった時、当時の麻生太郎首相は、日本の金融機関は打撃を受けておらず、日本経済への金融危機の影響は軽微だ、と当初述べていた。ところが、その後、輸出比率の高い製造業が大打撃を被り実体経済への影響は、主要国の中でも大きくなった。

リーマンショックがあった2008年度の国内総生産GDP)成長率は、前年度比3.6%減と戦後最大の落ち込みを記録した。

新型コロナウイルスの蔓延で世界各国の経済が大打撃を受けている今回も、まったく同じことが起きつつある。新型コロナ感染者は主要国の中でも圧倒的に少なく、2020年秋頃までは「日本モデル」を賞賛する声もあるほど、影響は軽微とする見方があった。

ところが、このほど明らかになった2020年度のGDPは、前年度比4.6%減と、リーマンショック時を超え、戦後最悪を更新してしまったのだ。

しかも、中国がいち早くプラス成長に戻したほか、米国や欧州の主要国も経済活動の再開に舵を切っている中で、日本経済は予想以上に大打撃を被り、しかも立ち直れない可能性が出てきている。

日本の四半期ごとのGDP(年率換算)を観ると、新型コロナで1回目の緊急事態宣言を出した2020年4~6月期は28.6%減という未曾有のマイナスを記録したが、その反動もあって7~9月期は22.9%増、10~12月期も11.6%増を記録した。そのままプラス基調が続けば、年度の減少率もリーマンショック時に達することはなかったに違いない。

その間に米国は

ところが、2021年1~3月期が再び5.1%のマイナスに転落してしまったことから、景気回復が腰砕けになっている。もちろん、年明けから2回目となる緊急事態宣言が出され、2か月以上にわたって飲食店などへの営業時間短縮などの要請が続いたことが経済への大打撃となって数字に現れたわけである。

結局4月に入って3回目の緊急事態宣言を出さざるを得なくなり、しかも、2回目よりも厳しく、百貨店など大型商業施設にも休業要請が出された。また、当初予定の5月11日で宣言解除に至らず、月末まで延長されたこともあり、エコノミストの中には2021年4~6月期もマイナス成長になるのでは、という見方が出始めている。

一方、最大の死者を出した米国は、経済成長が加速している。2021年1~3月期のGDP(速報値)は6.4%増となった。ニューヨークでのロックダウン(都市封鎖)もあって米国の2020年4~6月期は31.4%減と日本よりも影響は深刻だった。

その後、7~9月期は33.4%増を記録、10~12月期も4.3%増となった。今年1~3月期のGDP実額をインフレ率を加味して年率換算すると19兆1000億ドルとなるといい、新型コロナが蔓延する前のピークである19兆3000億ドル弱に、迫っている。確実に回復しているのだ。

日本の1~3月期のGDP実額は134兆6345億円で、新型コロナ前のピーク141兆9330億円(2017年10~12月期)にも、新型コロナ直前の139兆6618億円(2019年10~12月期)にも及ばない。中でも民間最終消費支出は7%近く下回った水準にとどまっている。

封じ込め失敗の連続

米国などに比べて経済への影響が長引いているのは、ひとえに新型コロナの封じ込めに失敗したからにほかならない。

感染が収束しない段階で始めた「GoToトラベル」にブレーキをかけるタイミングが明らかに遅れ、年末にかけて感染者の急増を招いた。

この間、水際対策も緩く、技能実習生や留学生など外国人が数万人単位で入国していた。日本経済を支える外国人労働者を入れなければ経済が回らないという事情はあったにせよ、感染が再拡大した段階で早急に入国を止めるべきだったが、1月に緊急事態宣言を出した後も、水際対策は強化されないまま放置されていた。

2回目の緊急事態宣言で行なった対策が「不十分」だったこと、解除が早すぎたことが、その後の感染爆発を引き起こした。経済への影響を考えるあまり、ブレーキの踏み方が不十分だったのだ。欧米のようなロックダウンをするわけでもなく、大規模商業施設の営業やイベント開催も条件付きとはいえ認めていた。

政府が「飲食時の飛沫感染」を強調したために、飲食を伴わなければ外出しても大丈夫だろうという意識が広がり、1回目の緊急事態宣言時に比べて「人流」は減らなかった。中途半端なブレーキが、国民の危機感を緩めてしまったと言えるだろう。

その反省から3回目の緊急事態宣言では、1回目に近い営業休止要請や飲食店での酒類提供停止などに踏み込んだが、結局5月11日に解除できず、ズルズルと対応を続けることになった。人流も減らず、感染者も高止まりする事態に直面している。

さらに、インドでの変異型ウイルスの急拡大が伝わる中で、インドからの帰国日本人、帰国外国人の受け入れを4月末まで止めず、批判を受けて厳格化した後も自主的な隔離の日数が多く、追跡調査も十分にできない失態を続けている。インド変異株の蔓延がまさに懸念されている。

ワクチン接種でさらに遅れる

今後も、日本経済だけが回復が遅れる可能性も出てきた。ワクチン摂取の遅れである。

米国ではすでに1回目以上のワクチン接種を受けた人が国民の4割に達したが、日本は2.4%にとどまり、OECD経済協力開発機構)加盟37カ国中最下位と報じられている。

米国では接種者にマスクなしでの外食を認めるなど、経済活動を本格的に再開している。

一方、日本の接種率2.4%の対象者は医療従事者と高齢者。菅義偉首相は7月末までに高齢者接種を終わらせるよう指示を出し、自衛隊を投入した大規模接種会場を設置するなど、接種を急いでいるが、3600万人の高齢者はもとより、480万人の医療従事者ですら接種が終わるメドが立っていない。つまり、経済活動に従事するビジネスマンなどにワクチンが行き渡るのがいつになるのか。

ワクチンが確保できたとして、国民の大半に打ち終わるのにどれぐらいの時間がかかるのかは明らかになっていない。

つまり、その間は経済活動をフルアクセルで再開することはできず、真っ先に立ち直った中国経済や、ここへきて力強く回復する米国経済に大きく水を開けられることになりそうだ。

もっとも、軽微だと胸を張っていた日本が、もっとも経済回復に時間がかかるというのは何とも皮肉である。