中国「減速」成長率わずか0.4%!日本経済を襲うその深刻な余波 「100円ショップ」商品まで影響

現代ビジネスに7月17日に掲載された拙稿です。ぜひご一読ください。オリジナルページ→

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/97577

ゼロコロナ政策に沈む中国の成長

中国の景気減速が鮮明になってきた。中国国家統計局が7月15日に発表した2022年4~6月期の国内総生産GDP)は、物価の変動を調整した実質で前年同期比0.4%の増加にとどまった。1~3月期は4.8%増で、5%を下回った事で大きな話題になったが、今回はそれを大きく下回るほとんど横ばいの数字に失速した。

中国は2020年初に武漢をロックダウン(都市封鎖)するなど、新型コロナウイルスの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策を徹底。欧米諸国に比べていち早く景気回復軌道に乗っていた。新型コロナの封じ込めに成功したかに見えたが、今年に入って大都市上海で流行が拡大。これに対して政府は厳しい都市封鎖を行ったことから、経済が一気に大打撃を被った格好だ。

中でも都市封鎖をした上海市の影響が大きく、同市の実質国内総生産は13.7%のマイナス。行動規制を強めた北京市も2.9%の減少となった。

中国政府は2022年の成長率目標を「5.5%前後」に設定しているが、今回、大幅な減速となったことで、その達成は厳しくなったとの見方が広がっている。

中国国内でも厳しい「ゼロコロナ」政策への反発は強いものの、秋の中国共産党大会で、総書記(国家主席)の3期目続投を目指しているとされる習近平政権は、それまでは何としても国内秩序を平穏に保ちたい意向と見られ、「ゼロコロナ」を放棄する姿勢はまったく見せていない。

今後も、新型コロナの感染が広がるようだと、都市封鎖などによって中国経済が大打撃を受ける可能性もある。米国とともに世界経済を牽引してきた中国の失速は、日本をはじめとする世界に大きな影響を及ぼすことは間違いない。

深い傷、回復まで相当な時間

上海の都市封鎖解除で企業の生産活動など回復しつつあるが、大きく落ち込んだ消費はなかなか戻る気配が見えない。中国国内の小売売上高は5月は6.7%減と、3ヵ月連続で前年割れの状態が続いている。ゼロコロナ政策によって閉店に追い込まれた飲食店なども多く、5月の飲食店収入は21%も減ったという。

飲食店の閉鎖や小売店の経営悪化によって、若年層を中心に失業率が急上昇していることも大きな問題になりつつある。失業率は4月には6.1%と過去2番目の高さにまで上昇、5月は5.9%に低下したが、16歳から24歳の若年層に限ると失業率は4月の18.2%から5月には18.4%に上昇。これが消費をさらに冷え込ませる要因になっている。

こうした中国経済の減速が、日本経済にも大きく影を落としている。財務省の貿易統計によると、中国向け輸出額は4月、5月と2ヵ月連続でマイナスになった。都市封鎖で中国国内の生産活動や消費が落ち込んだことが大きく響いた。今後、輸出産業向けの原材料などは生産活動の回復と共に増加すると見られるが、中国の国内消費に関連する産業向けの輸出が早期に回復するかどうかは不透明だ。

さらに今後、深刻化しそうなのが、中国からの輸入。日本にとって中国は最大の輸入相手国になって久しい。これまでは安価な家庭用品などの大半を中国に依存してきたが、こうした商品が順調に日本に入ってくるかどうかが懸念される。

ひとつは中国国内の生産能力がきちんと戻って、輸出数量が回復するかどうか。上海の都市封鎖では、日本国内に在庫が少なかった製造用部品などが一気に品不足となり、最終製品の製造に大きな影響が出た。今後、こうした原材料の確保が課題になる。

輸入、買い負け

もうひとつは、価格の問題。この間、為替の円安が大幅に進んだことで、「買い負ける」ケースが増えている。生活用品などでは、中国企業と日本企業との間では円建てで契約が結ばれているケースが多い。このため、円安が進んだことで、日本に輸出するよりも欧米諸国に輸出する方が採算が良くなり、日本に売っても儲からない事態が進行している。価格競争になった場合、欧米各国に買われてしまい、日本企業が思った値段で買えなくなるわけだ。

欧米諸国ではインフレが続いており、商品価格への転嫁がしやすいこともあり、中国からの輸入価格も大きく上昇している。これに対して日本は国内価格への転嫁がまだまだ難しいことから、輸入価格を引き上げられない、というジレンマに落ちいている。

端的な例が「100円ショップ」。低価格が売りの商品のほとんどは中国で製造されているが、従来の価格では仕入れられなくなっている商品が急増。これまでのような封入数量を減らすことで100円を維持することも難しくなった。

為替はすでに1ドル=140円に迫っており、今後も円安傾向は収まらないと見られている。そんな中で、日本が輸入で依存してきた中国からの安いモノが入ってこなくなれば、日本ではモノ不足に陥り、いよいよ本格的な物価上昇が始まることになりかねない。

中国経済の急減速によって、中国に依存してきた日本経済の脆弱性が改めて認識されることになりそうだ。