金融危機回避へ、不良債権処理モラトリアムの出口戦略を急げ

東日本大震災の金融機関への影響はどうなっているのか。金融庁日本銀行による実態の把握は遅々として進んでいない。銀行の融資先企業が津波で流されてしまったようなケースでは、企業の実態把握さえままならない状況が続いている。銀行の不良債権処理額がいったいいくらになるのか予想がつかない事態に直面しているのだ。

金融庁がまずもっと打った手は、流動性をふんだんに供給することだった。一方で、3月末で締めなければならない2011年3月期決算については、発表を延期を認めたうえで、融資先の実態把握ができない場合には手に入る情報、つまり震災前の情報で判断してよい、という通達を出した。いわば、不良債権処理についてモラトリアムを認めたわけだ。さらに、東北最大の地方銀行である七十七銀行仙台銀行には、「金融機能強化法」に基づいた公的資金の申請の検討に着手するよう求め、両行は申請検討を発表した。

ここまでの金融庁の対応は素早かったと言えるだろう。大震災を引き金に金融不安が高まれば、取り付けなどのパニックが起きかねない。そうした金融パニックを封じ込めただけでも評価できる。

しかし、問題はこれからだ。不良債権処理のモラトリアムをいつまでも続けるわけにはいかない。金融機関に早急に不良債権を処理させ、資本不足に陥る場合には公的資本を注入しなければならない。また、津波に多くの店舗が流された中小金融機関で自力の経営再建が難しい場合には、統合なども即断即決で行わなければならないだろう。東北地方の将来の金融業界地図をどう描くかというビジョンも必要になる。いわば、不良債権処理モラトリアムからの出口戦略が早急に必要になるわけだ。

金融庁預金保険業法の改正などで整理回収機構を受け皿として活用、東北地方の金融機関が抱えた不良債権を買い取りを行うことを検討しているようだ。

阪神淡路大震災が起きたのは1995年1月。その後、日本は金融危機の時代に転げ落ちていった。東日本大震災をきっかけに再び金融危機を起こすようなことがあってはならない。

新潮社フォーサイトに「東北金融、打撃の現状と復旧策」を昨日アップしました。
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