関西電力の不祥事にも反省なし? 企業統治強化に背を向ける関経連

 SankeiBizに掲載の「高論卓説」に10月21日にアップされた拙稿です。オリジナルページ→https://www.sankeibiz.jp/business/news/191021/bsm1910210500008-n1.htm

 

 「独立社外取締役の選定など取締役の構成は、一律のコードを適用するのではなく、各社の裁量に委ねるべきである」

 政府が旗を振って進んでいるコーポレートガバナンス企業統治)の強化に反対する意見書を、関西経済連合会が中心になってまとめた。日付は9月26日だが、金融業界団体など関係者にそれが届けられたのは、まさにあの関西電力の不祥事が表面化したタイミングだった。(ジャーナリスト・磯山友幸

 

 関電の八木誠会長(当時)や岩根茂樹社長ら20人が、同社の原子力発電所がある福井県高浜町森山栄治元助役(故人)から、多額の金品を受け取っていた問題が発覚。税務調査を受けて会社が把握し社内処分しておきながら、取締役会には報告せず、公表もしていなかったことが報道で明らかになった。また、監査役も事実を知りながら取締役会に報告していないなど、関電のあきれたガバナンスの実態が明らかになった。

 10月2日の記者会見では、八木会長も岩根社長も金品を受け取ったことを認めながら、辞任は否定していた。大株主の大阪市監督官庁である経済産業省から批判を浴びたこともあり、9日に臨時取締役会と再度の会見を開き、八木氏は9日付で会長を辞任した。

八木氏は関経連の副会長を務めており、次期会長の有力候補とされていた。今回の不祥事で副会長も辞職した。過去に何人もの会長を送り出してきた関電は、関経連を支える有力構成メンバー。冒頭の報告書づくりにも、関電の意向が働いていたのは間違いない。

 現在進んでいるコーポレートガバナンスの強化は、独立した社外取締役を導入することで経営に外部の目を入れ、不祥事や不正をなくしていこうという考え方を基に進んでいる。これまでは上場企業が順守すべきルールとして定められている「コーポレートガバナンス・コード」で設置が求められていたが、現在、会社法でも最低1人の社外取締役設置を義務付ける方向へと動いている。関経連や関電はこうした動きに終始反対してきたのだ。

その関電で明らかになったガバナンスの不在は象徴的だ。関電にも「社外取締役」は存在するが、関経連の副会長をともに務める「お仲間」で、しかも関電が大株主の会社のトップという、どうみても「独立性」のなさである。

関電は「第三者委員会」を設置し、金品授受問題の徹底解明と再発防止策を12月下旬までにまとめるという。あきれたことにその結果が出るまで岩根社長は社長にとどまるのだという。

 なぜ、徹底調査の対象になる人物が、調査を依頼する側に居座り続けるのか。委員会の調査は会社の協力なしにはできないから、何らかの影響を与えようとしていると勘繰られても仕方ないだろう。その感覚自体がガバナンスの欠如と言ってもいい。

 第三者委員会のメンバーは法曹界の重鎮4人で、経営の専門家はいない。これで本当に再発防止策を提言できるのか。正しいコーポレートガバナンスのあり方を関電に求めることができるのか。

 今回の不祥事を秘密裏に処理しようとした役員はもとより、それを知っていた監査役も同罪だろう。早急に臨時株主総会を開いて一新すべきだろう。また、独立性が乏しい社外取締役では会長や社長になめられ、不祥事の報告すらされなかったのだとすれば、これもお辞めいただくほかない。

関経連は、関電のような不祥事が起きたことを反省し、自らが出した意見書を撤回してはどうか。関電のような公益性の高い事業の会社にこそ、取締役会の過半数社外取締役にすることを義務付けるべきではないのだろうか。