2020年の日本株、また海外投資家が「大量売り」するかもしれない  「変われない日本」をどう見るか…

現代ビジネスに1月24日に掲載された記事です。オリジナルページ→

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69990

海外投資家頼みの株価回復

日本取引所グループが発表した1月第1週(1月6日から10日)の投資部門別売買状況によると、海外投資家が458億円の売り越しとなった。わずかながらとはいえ売り越しから始まったことで、幸先良いスタートとはならなかった。

 

2019年年間の海外投資家の売買も、7953億円の売り越しだった。10月から12月は海外投資家が2兆3000億円も買い越し、日経平均株価を一時、2000円近く押し上げた。年間でも買い越しになるのではないかと期待されたが、年末にかけて買いが鈍ったことから、結局、年間では売り越しとなった。年間での売り越しは2018年に続いて2年連続である。

海外投資家はアベノミクスが始まった2013年に15兆1196億円も買い越し、それが日本株が本格反騰するきっかけになった。2014年も8526億円の買い越しだったが、2015年になって2509億円の売り越しと、売り買いトントンの状態になった。

そして、2016年には、3兆6887億円の売り越しと、まとまった売りが出た。安倍晋三首相が打ち出したアベノミクスの「3本の矢」のうち、3本目である「民間投資を喚起する成長戦略」が海外投資家の大きな期待を集めたが、規制改革などに目立った成果がでなかったことで、「やはり日本は変われないのではないか」という見方が強まった。国内でも「アベノミクスの失敗」などが言われ始めたころだ。

2017年には3年ぶりに買い越しになったとはいえ、額は7532億円とわずか。そして、2018年には5兆000億円の売り越しを海外投資家は出した。

2018年も2019年も秋口には機関投資家の買いで株価は上がったが、それも米国など海外の投資ファンドの決算対策などの要因がほとんどとみられ、長期にみれば、日本株は売られる傾向が強まっている。

この消費ではオリンピック後も

では2020年はどうなるか。東京オリンピックパラリンピックもあり、日本の景気も盛り上がるとの期待が強かった。株価は半年以上先を映しているとしばしば言われるが、海外の機関投資家はすでにオリンピック後の日本経済を見透かしているのだろうか。

2019年10月の消費増税の影響が大きく、それでなくても低迷していた消費が落ち込んでいる。1月21日に日本百貨店協会が発表した昨年12月の全国百貨店売上高は前年同月比5.0%のマイナスになった。増税前の9月には駆け込み需要で23.1%増と増えたがその反動で10月には17.5%減となり、11月も6.0%の減少と続いた。12月まで3カ月連続のマイナスになっている。

自動車販売の落ち込みも大きく、日本自動車販売協会連合会全国軽自動車協会連合会の発表によると12月の新車販売(登録車・軽自動車合計)は前年同月比11.0%減の34万4875台にとどまった。この結果、2019年年間の新車販売台数は519万5216台と1.5%減少、3年ぶりのマイナスになった。

こうした消費の減退がどこまで続くのか。オリンピックで期待されるのは海外からの訪日観光客が落とすお金だ。政府は2020年の訪日客数を4000万人と目標としてきたが、2019年は3188万人。過去最多は更新したものの、伸び率は2.2%に鈍化した。

訪日外国人が日本国内に落とした「旅行消費額」は4兆8000億円と推計されているが、前の年に比べて3000億円しか増えていない。オリンピックの観戦で訪日客の増加は予想されるものの、4000万人突破には暗雲が漂っている。

やはり「変われない国」なのか

1月20日に始まった通常国会で政府は2019年度補正予算と2020年度予算の早期成立を目指す。総額26兆円に上る巨額の景気対策が盛り込まれているが、政府がこれだけの金額を景気対策につぎ込もうとしていること自体、足元の景気の底割れを回避したいと言う焦りを示している。

大手の建設会社の現場責任者によると、都市再開発などで建設工事の受注残が大きく、オリンピックが終わってもすぐに底割れする懸念はない、と言う。

一方で、人手不足が深刻なため、足元で公共工事が増えたとしても仕事を行うことができないと悲鳴を上げる。つまり、大型の景気対策でも公共工事などの予算増額は消化されない可能性が大きく、景気への刺激効果がどれだけ上がるかが見通せない。

海外投資家が日本株投資で気にかけている大きな問題がもう1つある。近年再び語られている「日本異質論」が定着しつつあることだ。

昨年末に世間を騒がせた日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告の国外逃亡も、ゴーン被告が記者会見で日本の司法制度の国際感覚とのズレを強調したことから、日本異質論を後押しする結果になっている。

3本目の矢に対する期待もすっかり薄れ、「やはり日本は変われない国」だと言う見方が広がっている。安倍政権の改革姿勢が薄れていると見られていることが大きい。

オリンピックで消費がどこまで盛り上がるのか。オリンピック後の日本の景気がどうなっていくのか。さらに悲観論が高まるようなことがあれば、海外投資家が2020年も大量に売り越すことになりかねない。