「ビッグモーター」「ジャニーズ」は「超金利政策」のあだ花 問われる銀行と取引先の責任

新潮社フォーサイトに9月12日に掲載された拙稿です。ぜひご一読ください。オリジナルページ→

https://www.fsight.jp/articles/-/50054?st

 ジャニーズ事務所がようやく記者会見を開いた。会見まで姿を現さずにいた藤島ジュリー景子社長が出席し、自分は知らなかったという姿勢を崩さないまま、その場で社長退任を発表。今後の責任追及の矢面には新社長を立たせるのだろう。だが、自身は社長を辞めても会社の株式は100%保有し続ける。「経営を刷新する」とは言うものの、オーナーであるという厳然たる事実に変わりはない。

 この構図、1カ月半前に記者会見を開いたビッグモーターと瓜二つである。兼重宏行氏は社長を辞めたものの、持株会社を通じ、副社長だった長男と共に株式を100%保有している。経営を刷新するにも、株主がウンと言わなければ取締役ひとり選べない。オーナーとしての地位は何ら変わっていない。

 ビッグモーターはグループで6000人の従業員を抱え、売上高は7000億円に達するとされる。ジャニーズ・グループも芸能界で圧倒的な存在で、売上高などはまったく公表していないが、1000億円規模だと見られている。ともに社会的に大きな影響力を持つ「大企業」にもかかわらず、株式を上場しておらず、実態は「個人会社」の域を出ない経営スタイルをとってきた。

 会見では両社ともに「ガバナンスの欠如」が指摘され、経営側もそれを認めていた。なぜ、これだけ社会的に大きな存在になりながら、圧倒的なワンマン経営が許され、ガバナンスの欠如が放置されてきたのだろうか。

なぜか話題にならない銀行の「貸し手責任」

 結論から言えば、2013年以降、政府が推し進めた「超低金利政策」がビッグモーターとジャニーズ事務所という異形の存在を放置し、ガバナンス不全を許してきたと言っていい。いわば超低金利政策の「あだ花」だったと言えるのではないか。

 どういう意味か。

 通常、これだけの企業規模になると、数百億円から数千億円にのぼる運転資金が必要になり、それを個人ひとりでは用意できない。資産家が集まって出資すれば株主は複数になるし、通常は資金調達するために株式上場を考える。上場すれば、幅広く資金を集めることができるが、当然、議決権は分散する。オーナー企業で過半数を一族で握ったとしても、少数株主と呼ばれる第三者が株主になる。当然、株主総会を開かねばならず、そこでの説明責任が問われる。つまり、ガバナンスが働くわけだ。いわゆる「資本の規律」である。

 上場しない場合は、……

 

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