新型コロナ「封じ込め」失敗…日本は間も無く“大不況”に襲われる  インバウンド期待の代償は大きすぎた

 現代ビジネスに2月27日に掲載された拙稿です。是非お読みください。オリジナルページ→

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70669

武漢封鎖から1週間遅れで

新型コロナウイルスへの感染が日本国内でも広がっている。

渡航歴がなく、1次感染者との濃厚接触も確認できない人の感染が各地で報告されている。またクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から陰性だと判断されて下船した乗客の中から、帰宅後に感染が確認されるケースも相次いでおり、人から人への感染が明らかになっている。

事実上「封じ込め」は失敗に終わったとみていいだろう。

安倍晋三首相が、中国・武漢市を含む湖北省に滞在歴のある外国人に対して入国拒否を表明したのは1月31日の夕方。2月1日午前零時から実施された。武漢市当局が公共交通の遮断に乗り出し、1000万人都市の封鎖に踏み切った1月23日から1週間が経過していた。

この間、中国からは日本に大量の訪日旅行客がやってきた。JNTO(日本政府観光局)が2月19日に発表した推計によると1月の中国からの訪日客は92万4800人。前年1月に比べて22.6%も増えた。中国の新年に当たる春節旧正月)の休みが、昨年は2月だったものが今年は1月になったこともあり、大きく増加した。

湖北省からの入国拒否を日本政府が決めたのが1月31日なのは、明らかにこの春節休みが終わるのを待っていたとみられる。春節前に入国禁止などの措置を取れば、飛行機や宿泊ホテルのキャンセルが相次ぎ、経済的な損失が生じる。

決定はできるだけ先送りし、混乱を小さくするという、いつもの官僚の姿勢が、今回ははっきりと裏目に出たと言えるだろう。クルーズ船の乗客は隔離する一方で、武漢を含む中国からの入国は通常通りに受け入れるという、チグハグな対応を続けたことになる。

2月1日に湖北省滞在外国人の入国拒否に踏み切った段階では、米国やシンガポール、オーストラリアなどが中国全土からの入国を拒否していた。日本政府は1月13日になって、ようやく浙江省に滞在歴のある外国人も入国拒否の対象に加えたが、2月25日現在、それ以上、対象地域を拡大しておらず、後手後手に回っている感は否めない。

その間にも、日本での感染者は増え続けてきたのである。

高リスク国・日本に誰が行くものか

そんな日本を「高リスク国」とみなして、日本人の入国制限を始めた国も多い。2月に入って早々、太平洋の島国ミクロネシア連邦やツバル、サモアキリバスなどが日本人を含む外国人の入国を拒否した。小さな島国という隔離されたエリアにコロナウイルスが持ち込まれれば、国の壊滅に結びつきかねないという危機感がある。

こうした動きはさらに広がり、インドネシアが日本人の入国を拒否したほか、イスラエルも日本や韓国に滞在した自国民以外の外国人の入国を禁止する措置を発表した。香港も、感染者が急増している韓国人の香港入境を禁止、日本人については禁止にはしないものの、14日間隔離する方針を打ち出した。

日本が手をこまねいている間に、日本人や韓国人も、中国人と同様のリスクとみなされ、遮断され始めているのだ。

政府は2月25日になって対策の「基本方針」を発表したが、症状の軽い人に自宅療養を求めるとした程度で、大型イベントの開催可否などについては自治体の判断に委ねるなど、ここでも後手に回っている印象で、強い批判を浴びた。

一方で民間ではJリーグが試合の延期を決めたほか、感染者が出た電通は本社の全社員を自宅勤務に切り替えるなど独自の対応が広がり、経済への影響が現実のものになり始めている。

1月の訪日客は全体では1.1%減となったが、これは日本との関係が冷え込んでいる韓国からの訪日客が59.4%減と大きく落ち込んだことが主因。中国の22.6%増のほか、香港も42.2%増、台湾19.0%増、シンガポール33.2%増など、春節休暇での訪日客が大きく増えた。

もっとも2月は、昨年は春節だった反動もあるため、訪日客数は激減するとみられる。コロナウイルスへの警戒から旅行を取りやめる動きも相次いでおり、落ち込みは相当大きくなるだろう。

もはや消費は絶望的に

これによってインバウンド消費も激減、それでなくても弱い日本の消費を直撃することになりそうだ。

日本百貨店協会が発表した1月の全国百貨店売上高は前年同月比3.1%減と大きく落ち込んだ。消費増税した昨年10月以降、4カ月連続のマイナスだが、春節があったため、訪日客による免税手続きをした売上高は20.9%像と大きく増えた。1月はインバウンド消費はむしろ大きくプラスだったわけで、いかに国内消費が弱いかを示している。

2月は春節効果が無くなることに加え、新型コロナウイルス蔓延による旅行自粛が鮮明になることでの訪日客消費の激減も予想される。

2019年10−12月期のGDP国内総生産)は年率換算で6.3%減という大幅な悪化を記録、エコノミストなど専門家の間に衝撃が走った。前の3カ月と比較するため、2020年1-3月期は持ち直すという見方が支配的だが、国内消費が回復に向かうどころか、さらに縮小する気配で、2四半期連続のマイナスになる可能性もある。

政府は補正予算に加え、2020年度本予算でも景気対策費を大きく積み増しており、何とか景気の減速を食い止めようと必死だが、新型コロナ問題が早期に終息しそうにないだけに、本格的な景気減退局面入りは避けられそうにない。