新潮社フォーサイトに7月25日に掲載された拙稿です。ぜひご一読ください。オリジナルページ→
https://www.fsight.jp/articles/-/49931?st
ヤマト運輸が「クロネコメール便」に参入した1997年から四半世紀、ヤマトと“官業”日本郵便との競争関係についに幕が降ろされる。今後は日本郵便の市場独占が進んで行くことだろう。岸田内閣の「反・新自由主義」は、結局は新自由主義批判を唱える人々の最大の敵、既得権層の利益を守ることになるのではないのか。
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「官業」に斬り込んできたヤマトグループが、長年の宿敵だった日本郵政グループと協業に踏み切った。ヤマト運輸が取り扱ってきた「クロネコDM便」のサービスを2024年1月31日に終了、日本郵便の「ゆうメール」に事実上集約する。2月からヤマト運輸でのサービスは「クロネコゆうメール」として引き受け、日本郵便の配送網で届けることになるという。さらに、ヤマトの「ネコポス」のサービスも順次終了して、「クロネコゆうパケット」として日本郵便の配達網で届けるという。
ヤマトのあげた「白旗」
「クロネコDM便」と「ネコポス」は2015年に廃止に追い込まれた「クロネコメール便」の後継サービスだった。メール便は、受け取りの印鑑が不要で個人宅のポストに配達されるサービスで、法人のカタログやパンフレットの配送で大きなシェアを獲得していた。郵便の定形外料金と遜色ない価格になっていたことから、日本郵便の大きな脅威となっていた。
これに当時、横槍を入れたのが総務省だった。メール便に手紙などの「信書」を同梱する郵便法違反が相次いでいると指摘されたのだ。郵便法では原則として日本郵便以外の業者が信書送達事業を行ってはならないとしている。手紙などをメール便に入れた場合、ヤマトだけでなく、委託した客も罪に問われる可能性があるとされたのだ。3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられるおそれがある、というのである。「さすがにうちが罰せられるならともかく、お客様まで処罰の対象だと言われたら、サービスを諦めざるを得ませんでした」と当時の幹部は回顧する。
その日本郵便との闘いの象徴とも言えたメール便の後継を日本郵政に委託するというのだから、完全に「白旗」をあげたと見ることもできるだろう。突然のサービス移管発表の裏に何があったのかはまだ分からないが、ヤマトからすれば、手紙などの郵便事業と戦うことを諦めたということだろう。
今後、“郵便”事業は日本郵便による独占の色彩が強まっていくことになる。もともと郵便が独占していた宅配事業にヤマトが参入、様々なサービスで利便性を高めてきた。軽量な書類などの配送分野は宅配便に比べれば価格が低く、利益を取るのが難しい事業だった。郵便の利用量自体が大きく減る中で、日本郵便と競争してまで維持する魅力に乏しいとヤマトは判断したのだろう。……
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