世論調査で「支持政党なし」55%に急増!! 「脱政党選挙」で「国政進出」を狙う大阪維新の策やいかに

7月6日金曜日の夕方、首相官邸前に行ってきました。毎週金曜日に行われている「反原発デモ」の実状を知りたいと思ったからです。ほとんどメディアでは報道されてこなかったデモですが、前の週は霞が関から官邸に上がっていく道路が人波で埋まっている様子がネット上に動画で流れていました。政治家や大手メディアの記者は、「どうせ左翼に先導されている」「物見遊山の参加者が多い」と高をくくっていますが、ネットでの呼び掛けに応じて集まってきている人の多くは、政治活動に関係のない若者や子連れの主婦などだということが見て取れました。政治への不信が徐々に募っている感じがしました。6日のデモは警察の封じ込め作戦によって歩道上に細長くデモが引き伸ばされたため、多くの参加者は官邸を見ることすらできなかったのではないでしょうか。官邸前に横一列に並んだ機動隊員の姿は異様でした。警備の仕方を見ていると、警察の本気度といいますか、危機感が伝わってきます。世論調査では支持政党なしが55%に達しました。政治不信は以前にもありましたが、ちょっとムードが違うような気がしています。

現代ビジネスに書いた記事を編集部のご好意で以下に転送します。
オリジナルページ→ http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32928


「従来の政界の絵というものが変わるんです」---。

 民主党の衆参国会議員50人の辞表をまとめて執行部に提出した後、山岡謙次・前国家公安委員長はテレビ番組に出演してこう語った。言わんとするところがなかなか伝わって来なかったが、「政党中心ではなくなるということですね」というキャスターの問いに頷いてみせた。しかし、離党して新党を旗揚げしようという段階で、「政党中心ではない」とはどういう事か。

 このタイミングで小沢一郎元代表に同調して50人もの議員が離党した背景には、間違いなく選挙がある。野田佳彦首相が自民党公明党との3党協議で消費税増税法案を衆院通過に持ち込めたのは、選挙時期についての裏合意がある、という見方が永田町では一般的だ。国会の会期を当初想定よりも長い9月8日まで延長したことで、会期後半で首相が解散することを内々に自公両党に示唆したのではないか、というのだ。

 実際、ついつい情報を口にする事で知られる自民党執行部からは、さっそく「9月9日大安が投票日」という話が漏れ、週刊誌に見出しが躍った。離党した面々は今秋の総選挙を想定したのだろう。「増税の前にやる事がある」というキャッチフレーズの下、消費増税反対で選挙戦を勝ち抜こうというのだ。

 同調して離党した議員の多くは、政権交代をもたらした前回の総選挙で初当選した議員や、来夏に参議院議員の任期を迎える議員が占める。「何のために政権交代したのか分からない」という国民の声が多い中で、マニフェスト(政権公約)をことごとく反故にしてきた民主党に残って選挙を戦っても落選は必至だという思いが滲む。そこは「小沢新党」として求心力を得るというよりも、ともかく「非民主党」となることを優先しているようにすら見える。

大阪維新、国政進出はほぼ既定路線
 朝日新聞が6月26、27日に実施した世論調査によると、野田内閣の支持率は27%と、6月4、5日の調査結果から横ばいだった。消費増税という「決断」に一定の評価をする層がいる、と見ることも可能だ。ところが政党支持率民主党が18%から17%に低下、自民党も17%から15%に下がっているのだ。両党の支持率を合わせても全体の3分の1に届かない。逆に「支持政党なし」は45%から55%に急増した。民主党にも自民党にも支持は集まっていないのである。

 だからと言って、いわゆる「第3極」ができているわけでもない。同じ調査ではみんなの党の支持率も落ちているのだ。もはや政党は信用できないといったムードが蔓延していると言っていいだろう。

 そんな中で、動向が注目されているのが橋下徹大阪市長と彼が率いる「大阪維新の会」だ。いったんは国政進出に消極的な姿勢を見せたが、6月28日に大阪市内のホテルで開いた政治資金パーティーでは、「国を変えるラストチャンス。皆さんの応援があれば、必ずや日本を新しい方向に導いていける自信がある」と挨拶した。メディアが「国政進出に意欲」と報じたのは言うまでもない。

 大阪維新の本音はどこにあるのか。何人かの政策ブレーンに聞いてみると、国政進出はほぼ既定路線というニュアンスだ。

 当初は、大阪都構想を実現するための「地方自治法改正案」が国会を通るのなら、国政に出て行く必要は無いという意見もあった。現在でも法案は国会に上程されたままだが、「霞が関はそうやすやすと権限を手放さない。霞が関の言いなりである野田内閣では法案は通せない」という見方が維新の会の内部で強まっている、というのだ。地方自治法を改正するという姿勢を示す民主党自民党とは現段階では敵対しないものの、いつでも選挙で戦える準備はする、ということのようだ。

 実際、大阪維新の会が立ち上げた政治塾では、すでに塾生888人を選抜。このほかに、維新の会幹事長の松井一郎大阪府知事を委員長とした総選挙候補者の選考に向けた「公募委員会」の立ち上げも準備している。すべての小選挙区に候補者を立てる勢いだが、地域政党である「大阪維新の会」が国政政党となって全面的な選挙戦を戦うのか、というと、それは微妙だ。

 というのも小選挙区の選挙は「顔の見える」選挙で、候補者個人への支持票が欠かせない。にわか仕立ての候補者が、「風」だけを頼りにしてもなかなか当選できないのだ。

他党議員を巻き込んだ会派づくりが不可欠
 そこで維新の会のブレーンのひとりが言うのが「刺客型選挙」だ。地方自治法の改正など維新の会が掲げる政策に賛成かどうかで支持を決める。政党ではなく、個人ベースで連携相手を決めるというのである。維新の会の方針に反する候補者のいる選挙区に絞り込んで独自候補を送り込むというのだ。

 維新の会として候補者個人を支持するとなれば、民主党から離党した小沢グループであろうが、自民党内の改革派であろうが、民主党の現職であろうが、みんなの党であろうが、すべてと連携することが可能だというのだ。

 一票でも多くの票を取った候補者ひとりだけが当選するという小選挙区制の場合、立候補する議員が所属政党を離脱することは並大抵ではない。党の組織票なしに相手政党の候補に勝つことは至難だからだ。消費増税法案賛成という執行部の決定に、内心反対の議員は、民主党内にも自民党内にも少なからずいる。しかし、執行部に反旗を翻して除名されれば、次の選挙には勝てない、という恐怖心が先に立つのだ。

 民主党員の中には維新の会への鞍替えを考えている候補もいる。だが、自分の政党に所属したまま、維新の会が支持に回ったり、対立する候補者を立てないとなれば、選挙で勝てる可能性がぐんと高まる。維新の会からすれば、真正面からぶつかって戦うよりも、風を得ている自らの力を誇示することで仲間に取り込むことができれば、話は早いというわけだ。

 もっとも現在の民主党自民党の党運営では、法案に対する賛否は、議員個人の信念ではなく、党の方針に基づいて投票されるのが普通だ。いわゆる「党議拘束」である。仮に、「政党ではなく個人を選ぶ」という選挙が行われたとしても、党議拘束が解除されなければ、議員は個人としては自由に動けない。

 維新の会の独自候補者だけで衆議院過半数を得ることは難しいだろう。そうなると、支持をした他党所属の議員を巻き込んだ会派づくりが不可欠になる。それをきっかけに政界再編が起きる、というのが改革派議員の読みだ。

 政党への不信感が極まったこの段階での選挙となって、有権者はいったいどんな判断を下すことになるのだろうか。