You want to know the truth. Talk to strangers at the bar(フリー淡路ブックNo4特集記事)

「山の上」に隠れる老舗バーでオリジナルカクテルを

 1954年(昭和29年)の創業以来60年、変わらぬ雰囲気を保ち続けているのが神田駿河台の高台に立つ「山の上ホテル」のレセプション奥にある「バーノンノン」。わずか9席のカウンターには多くの文化人が座り、お気に入りのウィスキーやカクテルを傾けてきた。「その一番端には三島由紀夫さんがよく座っていたそうです」

 カウンターの中でシェイカーをふるバーテンダーで主任の平田基之さんは語る。入社して12年になるベテランとはいえ、もちろん三島に実際に会ったわけではない。「いらっしゃるお客様から逆に教えていただくんです」と笑う。変わらないムードは従業員だけでなく、常連の客たちと共に守られてきたのだ。

 ゆるやかにカーブする木製のカウンターは、体重をかけた肘を自然に支え何とも心地よい。照明はほの暗く、まさに男の隠れ家といった空気感が漂う。「お客様の表情の変化を常に見ているように心掛けている」という平田さんのサービスにも無駄がない。
 
 長く愛されてきたのはオリジナルカクテルの「ザ・ヒルトップ」。ウォッカベースで、ドイツ製のリンゴのリキュールなどが加わる。口当たりのよいカクテルだ。「ドクター・ヴォーリズリバイバル」というオリジナルカクテルも人気。1937年(昭和12年)に山の上ホテルの建物を建てたアメリカ人建築家を記念したもの。バーボン・ウィスキーがベースだ。
 
 週末の夜などは地元の常連客がふらっと立ち寄り、思い思いの時間を過ごす。伝統的なバーはやはり男を惹きつける魅力に溢れている。

お気に入りのワインを気軽に「角打ち」スタイルで

 「女性がひとりで気軽に入れるお店を作りたいと思ったんです」と笑うのは1932年(昭和7年)創業の神田の酒店「小西」常務の三澤一水さん。昨年10月17日に「角打ち 神田小西」をオープンさせた。角打ちとは酒屋の片隅のカウンターで升酒などを出す立ち飲みのこと。いわば和風バーである。だが、新たに開いた店は日本酒ではなくワイン。グラスワインを片手に炭火焼などの小皿料理を楽しむ立ち飲みスタイルだ。黒板に書かれた10種類ほどのワインは全てグラスで頼める。
 
 照明は明るく、入口から店内が見通せて死角がない。女性ひとりでも安心して入れる「女性目線」の店づくりの結果だ。

 証明が明るいのは、グラスをかざしてワインの色を飲む人への配慮でもある。女性の”酒飲み”は研究熱心な人が多い。「お客様は楽しみ方を知っています」と語る店長の北山太一朗さんが、丁寧にワイン選びや相性の良い料理の相談に乗っている。

 この日、北山店長が選んだワインは、イスラエル産の赤ワイン「ヤルデン」と、フレッシュ仔羊もも肉のスパイス焼。羊肉にこだわるシェフ長谷川卓也さんの珠玉の逸品だ。華やかな「ヤルデン」との相性は抜群で女性にもお奨めだ。
 
 丸テーブルを囲む3~4人のグループ向けに新サービスを始める。隣の酒屋「小西」で小売りしているワインを購入。抜栓料1000円で持ち込めるというものだ。こだわりの女性にとことん楽しんでもらいたい。そんな新しい業態が生まれてくるのも、神田ならではだろう。