「爆買い」は2月で終わる!? 観光客増でも、客単価の減少が止まらない

1月20日に現代ビジネスにアップされた原稿です。→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47447

毎月下落が続く数字暖冬などの天候不順の影響もあり、昨年秋以降の消費減退が鮮明になっている。そうした中で、中国人観光客など訪日外国人による「爆買い」への小売店の期待は高まる一方だ。

中国人留学生のアルバイト先といえば、外食チェーンやコンビニというのが長年の定番だったが、最近は小売店の免税カウンターなどでの仕事が増えているという。店の大小を問わず、いかに中国人や台湾人、香港人などを顧客として取り込むか、熱い視線を送っていることが分かる。

だが、そもそも外国人観光客の「爆買い」はいつまで続くのか。昨年10月に本欄で「ついに『爆買い』がピークアウト!?〜中国の景気減退と、二つの数字が示す、明るくない未来」(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/45941)という記事を載せた。新聞などが訪日外国人の急増による爆買いの様子を繰り返し報じていた段階だったので、多くの読者に読まれた。

その記事で着目したのが、日本百貨店協会が毎月公表している「外国人観光客の売上高・来店動向(速報)」。百貨店71店舗で免税手続きが行われた物品の売上総額や免税手続きをした客の数、平均客単価などのデータが明らかになる。

2015年10月20日に発表した9月のデータは免税の売り上げ総額が138億6000万円と前年同月の2.8倍だった。

一見、良い数字に見えたが、前の月、8月の171億6,000万円に比べると19%もの大幅な減少だった。免税手続きをした客の数も19万2000人と8月の22万9000人から16%も減っていた。さらに、免税客の単価が下落していることが気になった。

免税売上高が過去最高を記録した2015年4月の平均客単価は8万2000円だったが、そこから毎月下落が続き、9月には7万2200円にまで下落していたのだ。

「爆買いの質」が落ちている
そこで、記事では結論としてこう書いた。

「ひょっとして外国人観光客の『爆買い』がピークアウトしたのではないだろうか」「年末商戦に入れば、高額品の売れ行きが伸び、客単価も再び上昇するかもしれない。ただ、これまでの右肩上がり一辺倒の増加傾向には、どうやら変化が生じているように見える」

結果はその通りになった。国慶節の休みがあった10月には免税売り上げは172億円に増加。客数も23万2000人となった。1月18日に日本百貨店協会が公表した12月のデータでも、免税売上高は177億6000万円、客数は23万人となり、客単価は7万7000円にまで上昇した。

1年前の年末商戦と比べると、売り上げは1.4倍。客数も9万人増えている。だが、客単価だけは8万9000円から7万7000円へと大幅に減った。明らかに「爆買い」の質が変化してきているのだ。

昨年12月の全国百貨店の売上高(店舗数調整後)は1年前に比べて0.1%の増加にとどまった。暖冬で冬物衣料が売れず「衣料品」部門が5.2%減ったことが足を引っ張った。そんな中で目だったのが「美術・宝飾・貴金属」部門の伸びの鈍化である。同部門の売上高の伸び率は2015年4月以降、2ケタの伸びが続いていたが、12月は6.3%増と大きく鈍化したのである。

年末商戦に、高級時計や宝飾品といった高額商品の売れ行きの伸びが鈍化した背景には、外国人旅行者の財布のひもが堅くなったことがあるだろう。爆買いの対象が高級ブランド品などから化粧品や医薬品など低価格品にシフトしていることを示していると言えそうだ。

それでも「爆買い」の威力は大きい。12月の百貨店売り上げでみても177億円の免税売り上げが無かったとしたら、全体でマイナスである。日本の国内消費がいかに弱いかが分かる。それだけに「爆買い」への期待は依然大きいのだ。

では、今のところ高原状態にある外国人消費は今後どうなっていくのだろうか。

カギを握るのは韓国人!?
カギを握るのはやはり訪日外国人客の行方だろう。

日本政府観光局(JNTO)の推計によると昨年12月の訪日外客数は177万3000人。1年前に比べて43.4%増えた。昨年1月以降、前年比で30%〜60%の大幅な伸びが続いている。伸び率が大きく鈍化したわけではない。

だが、国籍別にみるとまったく違った姿が見えて来る。日本にやってくる外国人の総数は高原状態なのに、中国からの訪日客数は明らかに減少しているのだ。

中国からの訪日客数の過去最高は昨年8月の59万1510人。1年前2014年8月は25万3900人だったから倍以上になった。日本国内いたるところで中国語を耳にするようになったのはこのためである。それが9月以降減り続け、12月は34万7100人になった。

夏に付けたピークが12月にかけて減少するのは毎年のパターンなのだが、昨年夏からの激減ぶりは際立っている。爆買いを支えてきた中国人が減っているのだ。

それでも訪日客全体が減らないのは、韓国からの訪問客が急速に増えていること。2015年2月以降、国別では中国からの来客数がトップで、韓国は台湾にも抜かれる月が多かったのだが、ここへ来て急増。12月に久しぶりにトップに返り咲いたのである。

では、このまま中国からの訪日客の減少傾向が続くのだろうか。

春節が「最後の勝負」
焦点は2月の春節旧正月)にどれぐらい中国から観光客がやって来るかだ。昨年8月の59万1510人という過去最高を超すようなら、まだまだ中国からの訪日ブームは続くと見ていいだろう。それを大幅に下回るようだと、ピークアウトが鮮明になってくる。

百貨店での免税売り上げも昨年4月に付けた197億5000万円という記録を抜けるかどうかが焦点だ。さらに、客単価が8万円台に戻るのかどうか。昨年、春節だった2月の客単価は8万7000円だった。

今年の春節にいずれの記録も更新することができなければ、中国人を主体とする外国人観光客の「爆買い」はピークアウトしたことになるだろう。小売業者からすれば、中国シフトを見直し、韓国や他のアジア諸国、欧米諸国から観光客などにターゲットを移すタイミングということになるかもしれない。

いずれにせよ本格的に「爆買い」が終焉する前に、日本人の消費を復活させなければ、日本経済は大打撃を被ることになりかねない。