全国の百貨店が猛暑と災害で受けた「大打撃」の実態 9月の地震の影響はおそらくこの後だ

現代ビジネスに9月13日にアップされた原稿です。オリジナルページ→https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57500

7月の急落
猛暑に加えて、台風などの風水害や地震など、相次ぐ自然災害は、日本経済にどんな影響を与えるのか。とくに低迷している消費の行方に関心が集まっている。

日本百貨店協会が発表する全国百貨店売上高は、5月にマイナス2.0%を付けた後、6月は3.1%増と久しぶりの高い伸びを記録、消費の底入れに期待が膨らんだ。

ところが、7月は一転して6.1%減と、消費増税の反動減に次ぐ大きなマイナスとなった。8月は再びプラスになった模様だが、激しい乱高下を繰り返している。消費が改善に向かっているのかどうか、エコノミストの多くも実態をつかみあぐねている。

7月の売り上げ激減について日本百貨店協会はリリースでこう分析していた。

「上旬の西日本豪雨をはじめ、梅雨が明けて以降連日の猛暑、更には月末の台風12号の上陸など異常気象のほか、クリアランスセールの前倒しの影響や土曜日1日減などのマイナス与件から、売上・客数共に振るわず前年実績には届かなかった」

今年、大手百貨店は夏のセールを6月に繰り上げ実施した。その効果もあり、6月には衣料品が4.3%増と2015年4月以来の高い伸びを記録した。

7月にも再度セールを実施する百貨店も多かったが、「先食い」の影響で、7月の衣料品は11.1%減と壊滅状態になった。4月以降の4カ月の増減率を単純平均すると3.5%のマイナスで、百貨店の売りである衣料品は苦戦したままである。

また、1月以降、前年同月比プラスが続いていたハンドバッグなどの「身の回り品」が6.3%減と大きくマイナスになり、6月のプラス6.0%を帳消しにした。さらに、2017年4月以降プラスだった「美術・宝飾・貴金属」が16カ月ぶりにマイナスに転落した。

こうした消費の先行指標ともいえる商品類がマイナスになったことで、百貨店の販売は「変調」をきたしている可能性もある。これらの商品が8月にどれぐらい売り上げを戻すのかが注目される。

頼みの外国人も頭打ち
もうひとつ「変調」は訪日外国人の百貨店での消費動向。7月の全国百貨店での免税売り上げは272億2000万円と7月としては最高を更新したものの、6月を下回った。例年、7月は観光客が増える時期で、7月の免税売り上げは6月を大きく上回って来た。

悪天候や災害などによる一時的な影響とみることもできるが、観光客による百貨店売り上げが頭打ちになり始める予兆かもしれない。

さらに気になるのが、免税売り上げの客単価が落ち続けていること。今年2月の7万1000円から、5カ月連続で下落し、7月は6万円になった。

株価の下落などから中国経済に減速懸念が強まった2016年7月に5万2000円にまで下がったことがあるが、その後V字回復して、2017年10月には7万4000円になっていた。その客単価が再び低下し始めているのだ。

高級ブランド品や宝飾品などの売り上げが落ちて、化粧品や食料品など単価の低いものに購買ゾーンがシフトしていることが大きいとされる。中国人観光客の「爆買い」が話題になった2014年から2015年にかけては、百貨店での免税客単価は8万円を超え9万円に迫っていた。つまり、ピークの3分の2というわけだ。

9月災害の影響はさらにこの後
これまでひとり気を吐いてきた「大阪」の百貨店売り上げが一服したのも大きな変化だ。大阪地区の百貨店売上高は2016年12月以来、19カ月ぶりにマイナスになった。福岡も12カ月ぶり、札幌も6カ月ぶりのマイナスだ。外国人観光客に人気の都市での売り上げ減というのが気になるところだ。

さらに、大阪は関西空港が台風による被害で一時閉鎖されたほか、アクセス橋の損傷で、鉄道の復旧が遅れており、発着便数が元に戻るにはかなりの時間を要するとみられている。このままでは訪日観光客への影響は必至で、大阪の百貨店にとっては大打撃である。

また、北海道も胆振東部地震の影響が長引いており、北海道の観光産業への打撃は小さくない。北海道地区の百貨店売り上げにも当面影響が出ることになりそうだ。

といっても、7月の大幅な減少の主因は日本在住者の消費減少である。百貨店売上高から免税売り上げを引いた実質国内売り上げは7.3%の減と大幅なマイナスだった。6月は1.2%のプラスだったが、その前の5月は4.0%のマイナスで、国内消費は低迷し続けているというのが実態だ。

それに加えて、外国人消費に変化の兆しが出てきたり、災害によって訪日客自体の伸びが鈍化すれば、一段と消費が冷え込むことになりかねない。

2019年10月の消費増税まであと1年あまり。それまでに消費が底入れするかどうか。今後、増税を見据えた駆け込み需要がどれぐらい盛り上がってくるかも焦点だろう。

また、増税後の反動減を小さく抑えるために、政府は様々な優遇措置や消費刺激策を打ち出すと見られるが、消費に力強さを欠いたまま、さらに税率が引き上げられることになれば、日本経済が一気に失速することになりかねない。