久保利英明著『日本改造計画』(商事法務)

 日本という国は変わらないようでいて、少しずつ変わっていく国ではないでしょうか。20年前に政治家の小沢一郎氏が出した「日本改造計画」という著書はベストセラーになりましたが、振り返ってみると、そこに書かれていた国家統治の仕組み(ガバナンス)の多くが実現しています。20年を経て、このほど、同じ「日本改造計画」という本が出ました。著者は弁護士の久保利英明さんです。サブタイトルに「ガバナンスの視点から」とありますが、政治の話ではありません。企業や国家組織を巡るガバナンスのあり方を変えることで、日本が大きく変わると主張しているのです。

 私が久保利さんを始めて取材したのは四半世紀前、久保利さんがまだ40代の頃でした。当時から日本の企業統治、コーポレート・ガバナンスのあり方に苦言を呈し、改革を訴えてきたこの問題の第一人者です。アベノミクスの成長戦略づくりの議論の過程で、民間議員からコーポレート・ガバナンスを強化すべきだという意見が出されました。民主党政権下の会社法改正論議でも「社外取締役の義務付け」がテーマになりましたが、ご承知の通り、経団連などの大反対によって見送りになりました。ところがです。義務付けに強く反対していた守旧派とみられてきた日立製作所トヨタ自動車が遂にガバナンス改革に動き出しています。トヨタは今度の株主総会社外取締役を迎えます。少しずつ変わっていく、といったのはこのためです。

 ただし、何もしないで変わるわけではありません。問題の本質を抉り、改革案を主張し続ける人がいなければ変わらないのではないでしょうか。そういう意味で、第一人者の久保利さんがまとめた『日本改造計画−ガバナンスの視点から』(商事法務)は必読の書と言えるでしょう。

日本改造計画 ―ガバナンスの視点から

日本改造計画 ―ガバナンスの視点から