ミニ書評

日本経済史におけるバブルの意味

日経ビジネス2017.05.2 No.1892『「バブル」を知る3冊』に掲載された書評です。 最近、バブルを懸念する声をしばしば聞く。確かに地価は上昇に転じ、不動産担保融資などバブル期を彷彿とさせる金融商品が盛り上がり見せている。 だが、企業も個人もバブルに…

これはバブル時代、現実に合った「風景」だ  『不発弾』(新潮社)

週刊文春 2017年 4/20 号 [雑誌]『文春図書館』に掲載された書評です。 不発弾作者: 相場英雄出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2017/02/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 東京・兜町が欲望と汗と血にまみれた「人臭い」世界だった頃、小…

『野心 郭台銘伝』 (プレジデント社)

週刊現代 2016年 11/5 号 [雑誌] 『ブックレビュー』に掲載された書評です。野心 郭台銘伝作者: 安田峰俊出版社/メーカー: プレジデント社発売日: 2016/09/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る なぜ日本企業は、この男に負けたのか。 シャ…

『命を救われた捨て犬 夢之丞 災害救助 泥まみれの一歩』 (金の星社)

WEDGEに連載中の『地域おこしのキーワード』、6月号では広島県の神石高原町で7月にオープンする自然を生かした公園「神石高原ティアガルテン」を取り上げます。自然いっぱいの高原で動物や人の命をいつくしむ事の大切さを学ぶ場にしようというのがコ…

かつての名経営者と現場社員たちが見た「消滅」の内幕−日本企業の現実を描く

「週刊現代」に掲載された書評です。大西編集委員の力作、なかなか読みごたえがあります。会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから作者: 大西康之出版社/メーカー: 日経BP社発売日: 2014/07/08メディア: Kindle版この商品を含むブログ (3件) を見る話は三洋…

〝最後のドン〟森喜朗氏が語った『日本政治のウラのウラ』に見る政界50年の「人脈」と「気配り」

安倍首相が国会答弁で、政治の師匠は2人いるとして「小泉元首相」より前に「森元首相」の名前を挙げたのは、私には意外でした。いまや安倍内閣の後見役になったとみられる森氏の証言を田原総一朗さんが引き出している本書はなかなか読みどころ満載です。是…

久保利英明著『日本改造計画』(商事法務)

日本という国は変わらないようでいて、少しずつ変わっていく国ではないでしょうか。20年前に政治家の小沢一郎氏が出した「日本改造計画」という著書はベストセラーになりましたが、振り返ってみると、そこに書かれていた国家統治の仕組み(ガバナンス)の多…

『対談 わが国会計・監査制度を牽引する 会計人魂!』(川北博/八田進二 著:同文舘出版)

会計士業界の取材を始めて20年以上になりますが、業界の知識がまったくない頃いろいろ教えていただいたひとりが川北博先生です。その弟子とも言える八田進二・青学教授が対談本を出されました。裏話もいろいろあって面白い本です。少し前ですが、会計専門誌…

『不正会計 早期発見の視点と実務対応』宇澤亜弓

ちょっと古くなりましたがFACTAに昨年掲載した書評を以下に再掲します。本の中味はまったく古くなりません。 「粉飾ハンター」が明かす実例と極意 2012年12月号 [BOOK Review] by 磯山友幸(ジャーナリスト)不正会計―早期発見の視点と実務対応作者: …

『日産 その栄光と屈辱 消された歴史 消せない過去』 著者:佐藤正明(文藝春秋)

昨年末に講談社の「週刊現代」から依頼されて執筆した書評です。 タイトル:名門企業の凋落を招いた社長の失政を、名物記者が真正面から克明な筆致で描き出す 会社に盛衰はつきものだ。そこには必ず会社の方向を決定づけた経営者がいる。「創業者」が会社を…

「陰謀史観」秦郁彦著(新潮新書) 

最近とみに「陰謀論」ばやりだ。経済書ビジネス書のコーナーではそうした陰謀論がベストセラーとして並んでいる。読めば面白いことこの上ない。そんな「陰謀史観」の変遷をたどったのが、この本だ。幕末から「欧米の陰謀」をベースにした著作が流行し、それ…

軽部謙介「沖縄経済処分」(岩波書店)

先日、私の主宰する勉強会で、旧知の軽部謙介さんに「沖縄」についてご講演いただいた。軽部さんは時事通信社の記者で、経済部畑を歩き、日銀や大蔵省(財務省)詰め、ワシントン支局、ニューヨーク総局長などを歴任。現在は編集局次長を務めている。これま…

検察 破綻した捜査モデル 村山治著(新潮新書)

村山さんは検察取材の第一人者です。半ばインサイダーと言ってもよいかもしれません。検察の内部を知り尽くした記者なのです。本書の中で「(検事が)〜と知人に語った」という下りが何カ所か出てきますが、これは恐らく、検事が村山記者に直接語ったことな…

自薦:『オリンパス症候群−自壊する「日本型」株式会社』

チームFACTA名で「オリンパス症候群」を平凡社から刊行しました。タイトルの通り、オリンパスの巨額損失隠し事件は、日本の株式会社全体にかかわる問題だという視点から書いています。FACTA編集主幹の阿部重夫さんを筆頭に、私と松浦肇の「日経脱…

溝口敦 「暴力団」(新潮新書)

先日、ジャーナリストの溝口敦さんにお会いしました。15年以上前から存じ上げていますが、いつも静かで穏やかな方です。「パチンコ 30兆円の闇」「食肉の帝王」「暴力団」と著書のタイトルを書くだけでも、溝口さんが「日本のタブー」に挑戦してきたことが分…

会計界のAKB48の真面目な提言

会計学者や会計士など48人による震災復興についての提言集。八田進二・青山学院大教授や藤沼亜起・元公認会計士協会会長らが編者になってまとめている。日頃、数字を通じて経営を見つめている人たちだけあって、説得力のある具体的な提言が多い。 また、図ら…